グループホームでは夜勤専従の職員の方もいらっしゃるかと思いますが、夜勤にまつわるシフト管理や勤怠実績の集計、夜間割増給与の計算など様々な手間がかかっており、どうにか効率化できないものかと考えている勤怠管理者や責任者の方も多いのではないでしょうか。
一口にシフト管理といっても夜間の人員配置基準を満たしたり、職員間の公平性を考慮したりなど、気も使いながら手間をかけて行っていると思います。また勤怠管理の集計もその後の給与計算に繋がっていくため細かく正確に勤務時間を集計する必要があります。夜勤の勤務は日をまたぐ上、深夜割増賃金の計算もあるため、所定労働時間を満たしているかの確認も含めこちらも手間がかかるものです。これらの手間は介護施設向けの勤怠管理システムを導入することで自動化、効率化していくことができます。この記事では、グループホームにおける夜勤体制と管理上の重要事項を振り返りつつ、夜勤専従シフトが抱える管理リスク、勤怠管理システム導入によるリスク解消と効率化の具体策などをご案内しています。この記事を読んでぜひシフト作成や勤怠管理の手間削減や勤怠に関するリスク解消に向けて勤怠管理システムの選定に進んでみてください。
1. グループホームにおける夜勤体制と管理上重要なこと
第1章は、日々管理されている夜勤専従シフトの根幹にある「人員配置と賃金計算の複雑性」を再確認するためや勤怠性やその管理上重要なことを振り返ります。
1-1.グループホームの特性が生む「夜間人員体制」の特殊性
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の基本構造は、その後の管理業務の難易度を決定づけています。1. 法令上のユニット構造の再確認グループホームの支援単位である「ユニット」は、5人以上9人以下の入居者からなり、それぞれが専用の共有スペース(居間、台所など)を持つ生活空間です。このユニット構造が、夜間管理における最も重要なルールを生み出しています。
| 管理上の基準 | 詳細 |
| 夜間配置基準 | 1ユニットごとに介護職員を1人以上配置すること。(宿直勤務は不可 |
夜勤専従職員の運用は、まさにこの「1ユニット1人」の基準を確実に、かつ効率的にクリアするための戦略です。しかし、この基準はシフトが確定した後も、急な欠勤やトラブル対応による労働時間の変動によって常に破綻のリスクに晒されます。
1-2.夜勤専従シフトがもたらす「管理メリット」と「管理リスク」
夜勤専従という働き方は、施設側にとっての大きなメリットと引き換えに、管理部門に特有の複雑なリスクをもたらします。
1. 施設運営上のメリット(再確認)
夜勤専従を採用する最大の利点は、人件費の効率的なコントロールと夜間人員配置の安定化です。少ない出勤回数で多くの夜間時間をカバーできるため、日勤職員の夜勤負担を減らし、職員の採用競争力を高める効果もあります。
2. 管理上のリスク(焦点となる論点)
管理部門の皆様にとって、夜勤専従は以下の二つの論点で大きな手間とリスクを発生させます。
① 人員配置基準リスク: 1回の勤務時間が長いため、シフト変更が発生した場合、たった一人の穴が「ユニットごとの夜間配置基準割れ」という重大な法令違反に直結します。
② 複雑な賃金計算リスク: 長時間勤務かつ深夜帯にわたる特性上、通常の深夜手当(25%)に加え、変形労働時間制の総枠を超えた際の時間外労働(残業)が深夜帯に及ぶと、50%割増の判定が必要となり、手動での計算が極めて煩雑になり、賃金未払いのリスクを高めます。
2. 夜勤専従シフトが抱える二大管理リスクと「夜間の人員体制」
本章では、グループホームの管理プロフェッショナルが避けて通れない、夜勤専従シフトが生み出す「人員配置基準の死守」と「複雑な賃金計算」という二大管理リスクについて深掘りします。
2-1. 監査の要点:夜間人員配置基準と夜間の体制
夜勤専従のシフトを運用する上で、最も重大な管理リスクは法令遵守(コンプライアンス)です。
1. 夜間配置基準の原則とリスク
グループホームの夜間の人員体制は、「1ユニットごとに介護職員を1人以上」配置するという厳格な基準によって成り立っています。この基準は、単なる推奨ではなく、運営基準そのものです。
| リスクの根源 | 詳細 |
| 絶対的基準 | 「1人」の配置が求められるため、急な欠勤やトラブル対応によるシフトのわずかなズレが、即座に「基準割れ」という重大な法令違反に直結します。 |
| 夜間の特殊性 | 夜間は日中と比べて職員の数が極端に少なく、特に3ユニットを2人で担当するなどの緩和措置を利用している場合、一人の職員が複数のユニットを巡回する負荷の増大と、その間特定のユニットが無配置になるリスクが高まります。 |
| 監査での確認 | 監査では、シフトの予定だけでなく、打刻記録に基づいた実績として、夜間帯の基準が継続的に守られていたかが厳しくチェックされます。手動管理では、この「実績の証明」が大きな負担となります。 |
2. ユニット数と夜間体制の連動
夜勤専従者を何名配置するかは、施設のユニット数に完全に連動します。この体制を確実に維持し、かつ職員の負担が過重にならないよう管理することが、夜勤シフト管理の最優先事項となります。
2-2.複雑すぎる賃金計算:手動管理では防げない「二重の割増」リスク
夜勤専従シフトは、「労働時間」と「深夜時間帯」が交錯するため、賃金計算が極めて複雑になり、これが給与計算ミスの温床となります。
1. 発生する二重の割増賃金
夜勤専従職員の賃金計算では、以下の2種類の割増賃金を正確に判別し、適用する必要があります。
| 割増の種類 | 判定ルール | 割増率 |
| ① 深夜労働割増 | 労働時間のうち、 午後10時~午前5時の時間帯。 |
25% |
| ② 時間外労働割増 | 1ヶ月の変形労働時間制の 総枠を超えた残業時間。 |
25% |
最も複雑なのは、時間外労働が深夜帯(22時~5時)に及んだ場合です。この場合、「時間外」と「深夜」の割増が重複し、基礎賃金に対して合計50%(25%+25%)を上乗せする必要があります。但し実際のところ残業を深夜帯に行うケースはそう多いわけではありません。深夜帯も含めシフト時間帯は、変形労働時間制の所定労働時間内で勤務することが主なためです。
2. 手動管理の限界点
管理者や給与担当者は、職員ごとの1ヶ月の総労働時間を確定させた後、日々の打刻実績を遡り、「どの時間が所定内か」「どの時間が残業か」「その残業が深夜にかかっているか」をすべて手計算で仕分けなければなりません。
この煩雑な作業は、計算ミスを誘発するだけでなく、賃金未払いという労働基準法違反のリスクを深刻化させます。
2-3.従来の管理手法が限界を迎える瞬間
紙やエクセルに頼る従来の勤怠管理手法では、この二大リスクを同時に、かつ効率的に管理することは不可能です。
| 従来の管理手法の限界 | リスクの深刻度 |
| 暦日またぎの集計ミス | 勤務時間が午前0時をまたぐため、出勤日と退勤日が異なる打刻を正確に集計する手間が大きく、計算ミスが発生しやすい。 |
| 仮眠時間の控除漏れ | 労働基準法上の「休憩時間」ではない仮眠時間(待機時間)の扱いを間違えたり、控除処理を誤ったりすることで、過大な賃金支払いや労働時間管理の不正確さを招く。 |
| 基準チェックの遅延 | シフト作成後や打刻集計後に、初めて「夜間配置基準を満たしているか」を目視で確認するため、基準割れが発見された時には手遅れ(実績として法令違反)になっている可能性がある。 |
結果として、管理者や給与担当者の貴重な時間は、リスク回避のための集計作業に費やされ、利用者ケアの質の向上や職員育成といった本来の業務に割くべき時間が奪われてしまうのです。
3.勤怠管理システム導入によるリスク解消と効率化の具体策
第2章で明らかになったように、夜勤専従シフトの管理は、「法令遵守」と「計算の正確性」という二重の課題を抱えています。これらの課題は、介護業界特有の複雑なルールに対応した勤怠管理システムを導入することで、劇的に解消が可能です。
3-1.シフト管理機能で夜間人員配置基準をクリア
勤怠管理システムの導入効果は、単なる打刻集計の自動化に留まりません。最も大きなメリットは、シフト作成と同時に法令遵守を保証する機能が組み込まれている点です。
1. 人員配置基準のリアルタイムチェック
介護施設向けに設計された勤怠管理システムでは、ユニット数や夜間配置基準(1ユニット1人)などのルールをあらかじめ設定できます。
シフト作成時のアラート: シフト表上で夜勤職員の配置が基準を下回った場合、システムがその場ですぐにアラートを発報します。これにより、管理者はシフト確定前に基準割れを防ぐことが可能になります。
実績チェック機能: 職員の打刻実績に基づき、実際に夜間帯の配置が基準を満たしていたかを自動で検証・記録します。手動での目視確認が不要となるため、監査時に必要な「基準充足の証明」が容易かつ確実に行えます。
2. 介護施設向け勤怠管理システムのシフト管理機能の真価
夜勤専従のシフト管理におけるシステムの真価は、「夜の人員配置基準もクリアできること」にあります。
自動調整と最適化の支援: システムは、職員の希望休や夜勤回数の上限、そして夜間人員基準といった複数の制約条件を考慮しながら、公平かつ合法的なシフト作成をサポートします。
緊急時の対応力向上: 突発的な欠勤が発生した場合でも、システム上で即座に人員不足が可視化されるため、管理者は迅速かつ適切な代行者を見つけ、基準割れのリスクを最小限に抑えることができます。
3-2.複雑な割増賃金計算の自動処理による「正確性の保証」
システムの導入は、給与計算担当者の月末の「悪夢」とも言える複雑な割増賃金計算から解放します。
1. 割増賃金ルールの完全自動適用
勤怠管理システムは、登録された労働条件と打刻実績に基づき、以下の複雑な計算をすべて自動で行います。
深夜手当の自動適用: 午後10時~午前5時の労働時間(休憩時間を除く)を自動判別し、25%の深夜割増を正確に適用します。
二重割増の自動判定: 変形労働時間制の総枠を超えた時間が深夜帯に及んだ場合(深夜残業)、システムがこれを正確に識別し、合計50%の割増を自動で適用します。この高度な自動計算機能により、計算ミスは原理的に根絶されます。
2. 勤務時間と賃金計算の透明化
システムは、暦日をまたぐ夜勤勤務や、休憩・仮眠時間を正確に控除して実労働時間を算出します。これにより、給与計算の根拠が明確になり、職員からの賃金に関する問い合わせにも客観的なデータをもって迅速に対応できます。
3-3 職員の定着にも貢献する勤務管理の透明化
正確な勤怠管理は、職員の信頼獲得と定着に不可欠な要素です。
過重労働の防止: 変形労働時間制における月間の総労働時間や、1日の連続勤務時間などをシステムが常に監視。超過しそうな職員がいれば事前にアラートを出すため、法令違反となる過重労働を未然に防止できます。
公平性の確保: どの職員にも正確に割増賃金が支払われ、労働時間が適正に管理されることで、職員の不満や不信感が解消され、職場への信頼感が高まります。これは、人手不足が深刻な介護業界において、職員の定着率向上に直結する重要な要素です。
4.グループホーム向け勤怠管理システムのご案内
ここではグループホーム向け勤怠管理システムをご案内いたします。
| システム名 | 夜間配置基準のチェック | 深夜・残業割増自動計算 |
| CAERU勤怠 介護 | 介護ルールに特化し作成時に確認 | 複雑な労働時間計算も完全自動 |
| シンクロシフト | シフト専門機能で基準充足を支援 | 変形労働時間制に基づき完全自動 |
| ケアズコネクト | 介護記録と連携し作成時に確認 | 現場の記録と紐づき完全自動 |
| カイポケ(Kaipoke) | 請求と連動し作成時に確認可能 | 給与計算と一貫した完全自動計算 |


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