介護施設でシフトを作成する際に人員配置基準を満たしているかどうか、毎月手間も気も使いながら業務にあたっている責任者や勤怠管理者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。またシフトだけでなく勤怠についてもエクセルや紙を利用しているため手作業で毎月集計を行っており、こちらの業務にも手間がかかっている、そんな状況にもおかれている方もいらっしゃるかと思います。この記事では、介護施設向けの勤怠管理システムを導入することでこれらの手間を効率化できることをご案内しています。このほかにも基本に立ち返り手作業によるシフト作成で生じる人員配置基準や勤怠管理に関する課題や、システム化でどのような改善を行っていけるかも掲載しています。この記事を読んでぜひ勤怠管理システムの選定に進んでみてください。
1. 手作業によるシフト作成が抱える人員配置基準に関する課題
ここでは手作業によるシフト作成が抱える人員配置基準に関する課題についてご案内いたします。
1-1.シフト作成時に人員配置基準のミスが起こる要因
介護施設におけるシフト作成が難しい最大の理由は、単に職員の勤務時間を割り振るだけでなく、介護保険法で定められた人員配置基準を満たすという、重要なルールをクリアしなければならない点にあります。このチェックを手作業で行っていると日毎・時間帯ごとに細かく確認しなければならないため、ほころびが起こってミスにつながることがあります。この基準は、利用者が安全で質の高いサービスを受けられるように設定された事業運営の根幹とも言えるものです。
1-2.時間帯別、職種別、サービスごとの「配置要件」の複雑性
とても重要な人員配置基準ではありますが、一口に人員配置基準と言ってもその内容は非常に複雑です。ここでは人員配置基に関わる事項をご案内いたします。
●時間帯による変動
利用者の入居・利用状況に応じて、必要とされる職員数が細かく変動します。
●職種による制約
介護職員だけでなく、看護職員、機能訓練指導員など、職種ごとに配置が義務付けられている場合があります。
●サービスごとの違い
入所型、通所型など、サービス形態によって基準が異なります。
これらの複数の要件を、日々の利用者数の増減や職員の急な欠勤、希望休などを考慮しながら、すべて手計算やExcelの関数、目視で正確に満たし続けることは、非常に高い集中力と時間を要する作業です。
1-3.目視とExcelによるチェックで発生してしまう確認漏れ
多くの施設で利用されているExcelや紙での管理では、勤務表の完成後に、担当者が一つひとつ基準を満たしているかを確認する作業が必要です。
ここにも課題があり、 基準の知識を持った特定の職員に業務が集中し、その方が不在の場合にチェック機能が弱くなる確認作業の属人化という点もあります。また、ヒューマンエラーが起こる可能性もあり、 エクセルで何百というセルや行をチェックする中で、利用者数の変動に合わせた人員数の計算ミスや必要な資格を持った職員の配置漏れといった、小さな見落としが発生する可能性も常に抱えています。このほかにも法令改正があった際もExcelシートの計算式や紙のチェックリストの更新が遅れるリスクもあり、やっている担当者頼みという状況が課題を生じさせる要因になっています。
1-4.人員配置基準に関する小さな間違いが事業にもたらす影響
そもそもは人員配置基準の小さな確認漏れや計算ミスだったかもしれませんが、それは単に勤務表の作り直しで済まない場合があります。人員配置基準を満たせない状態が発覚した場合、行政からの指導や、場合によっては介護報酬の減算といった事態につながる可能性があります。これらは、施設の安定した運営に直接影響を及ぼす問題となってしまいます。手作業による複雑なシフト作成は、現場責任者の方々に、毎月「今回は大丈夫だろうか」という精神的な負担と、コンプライアンス上の懸念を常に背負わせていると言えるでしょう。
次章では、これと並行して現場の時間を奪っている、「勤怠」管理の非効率性について解説していきます。
2. 介護施設の勤怠管理を非効率性にしてしまう要因
ここでは介護施設の勤怠管理を非効率性にしてしまう要因についてご案内いたします。
2-1. 紙やExcelによる勤怠管理が消費する貴重な時間
介護施設では、職員の多様な働き方を正確に記録し、適切に給与計算に反映させることが求められます。しかし、紙のタイムカードや出勤簿、あるいは職員が自己申告したExcelデータに基づいた手作業の勤怠管理は、手作業を発生させてしまうため現場責任者や事務担当者の時間を使ってしまう要因になっています。
●データの転記作業
タイムカードや紙の出勤簿から、すべての出退勤時刻をExcelなどに手作業で入力・転記する作業が必要です。この転記作業自体が時間と労力を消費し、入力ミス(ヒューマンエラー)の原因となります。
●複雑な集計
介護施設では、早出、遅出、夜勤、変形労働時間制など、複雑な勤務体系が組み合わされています。手作業で、通常労働時間、法定時間外労働(残業)、深夜労働などを区分して正確に計算し分ける作業は、月末月初の繁忙期に事務作業の大きな負担となります。
●休憩時間の確認
職員が休憩時間を適切に取得しているか、また未取得の場合の処理など、細かな労働時間ルールを手作業でチェック・調整する手間も発生します。
2-2.複雑な承認プロセスと、現場と事務部門間の連携負荷
勤怠管理は、集計だけでなく、その後の確認・承認プロセスにも時間がかかります。大きい事業所だと組織も大きいためこういった確認や承認プロセスなどを行っていくことにも工数がかさんでしまいます。
●職員からの問い合わせ対応
自分の勤務時間や残業時間の計算に間違いがないか、職員から個別に確認を求められることがあります。手作業のデータでは、履歴を遡って確認するのにも時間を要します。
●責任者による確認と承認
現場の責任者は、集計されたデータを目視で確認し、残業申請が適正か、打刻漏れがないかなどをチェックして承認しなければなりません。この作業も多忙な業務の合間を縫って行うため、滞留しがちです。
●データ連携の遅延
集計・承認済みの勤怠データを、給与計算ソフトへ連携させる際も、手入力やCSVデータの加工が必要になることが多く、ミスがないか再度の確認が発生し、処理の遅延につながります。
2-3.手作業による勤怠管理による「正確な記録」の難しさ
手作業による勤怠管理のもう一つの大きな課題は、「客観的な記録」が難しい点です。職員の労働時間把握の曖昧さが残ってしまう課題とも言えますが、極論はサービス残業が隠れて存在する可能性を孕んでいる課題とも言えます。
●打刻の曖昧さ
紙の出勤簿では、職員自身が手書きで時刻を記入するため、実態と異なる時間が記録されたり、打刻(記入)の修正が煩雑になったりすることがあります。
●サービス残業のリスク
現場が忙しいあまり、所定の時間外に業務を行ったにもかかわらず、その時間が正確に記録・集計されない、いわゆる「サービス残業」が潜在的に発生しやすい環境になってしまいます。
3.勤怠管理システムの導入で勤怠とシフトを一挙に効率化
ここでは勤怠管理システムの導入で勤怠とシフトを一挙に効率化についてご案内いたします。
3-1.Point 1:人員配置基準の自動チェック機能で安心のシフト作成
システムを利用すれば最も複雑で神経を使う人員配置基準のチェックについてもシステムが瞬時に、かつ確実に行います。しかもシフト作成後に人の入れ替えがあってもシステムが再度チェックを行います。
システムがシフト作成と同時にエラーをリアルタイムで警告。
多くのシステムには、介護施設特有の人員配置基準をあらかじめ設定する機能があります。
●リアルタイム判定
シフトを作成・編集するたびに、システムが自動でその時点の基準充足状況をチェックします。「この時間帯は介護職員が一人不足しています」「看護職員の配置要件が満たされていません」といったエラーを、作成中に即座に警告します。
●基準遵守をサポート
手作業では見落としがちだった、早出・遅出・夜勤の割り振りにおける複雑な計算もシステムが処理するため、意図せず人員配置基準から外れてしまうリスクを大幅に低減できます。
法令遵守をサポートし、誰でも基準を満たした勤務表を作成可能に。
特定のベテラン職員の属人化していたシフト作成業務から解放されます。
●知識の平準化
基準の知識に自信がない方でも、システムのガイドに従って作成するだけで、法令遵守に配慮した勤務表が完成します。
●公平な勤務表
職員の希望休や有給取得状況、連勤・連休制限などの細かなルールもシステムが考慮するため、公平性が高いシフト作成をサポートし、職員満足度向上にも貢献します。
3-2.Point 2:勤怠集計の完全自動化で月末月初の事務作業を大幅削減
出退勤を勤怠管理システムで記録することで煩雑な集計作業は不要になります。打刻から計算までをシステムが処理をするため事務処理の手間を大幅に減らすことができます。このほか有給などの各種の勤怠申請についても勤怠管理システム上で申請、承認を効率的に行えるようになります。
●正確な打刻
ICカード、スマートフォン、タブレットなど、様々な方法で正確な出退勤時刻を記録します。これにより、紙への手書きや転記の手間とミスがなくなります。
●自動集計・区分
打刻データはシステムに自動で取り込まれ、設定された労働時間ルールに基づき、「所定労働時間」「時間外労働(残業)」「深夜労働」「休憩時間」などを自動的に区分・計算します。
●給与ソフトへの連携
集計済みのデータは、多くの場合、利用している給与計算ソフトに連携可能なCSV形式などで出力できます。これにより、給与計算部門での再入力やデータ加工の手間が大幅に減り、月末月初の事務処理がスムーズになります。
責任者の承認作業も隙間時間で完結。
現場責任者の方の確認・承認プロセスも効率化します。
●エラー自動表示
打刻漏れや長時間労働の疑いがあるデータは、システムが自動でハイライト表示するため、膨大なデータを目視で確認する手間がなくなります。
●リモート承認
PCだけでなくスマートフォンやタブレットから、場所を選ばずに勤怠データの確認と承認が行えます。これにより、多忙な業務の合間や移動時間などの「隙間時間」を活用して、事務作業を片付けることが可能になります。
4.勤怠管理システム導入による運用の改善効果
ここでは勤怠管理システム導入による運用の改善効果についてご案内いたします。
4-1.シフト管理の効率化が、現場責任者の時間を利用者ケアや職員育成へ
これまでシフト作成や勤怠集計、確認作業に費やしていた膨大な時間が削減されることで、現場責任者は本来最も注力すべきコア業務に集中できるようになります。職員が事務作業に追われる時間が減ることで、本来の利用者様一人ひとりに向き合う時間や、より良いケアプランを検討する時間に充てることができケアの質の向上へつなげていくことができます。
このほかにも、 勤怠管理は管理職が行っていることも多いため職員からの勤怠に関する問い合わせ対応などが減ることで育成のための時間や、個別の相談・面談の時間を確保しやすくなるとも言えます。
4-2.正確な勤怠管理による公平な労働環境の提供
システムで客観的で正確な勤怠管理を行っていくことは、職員の働く環境そのものを改善することと言うこともできます。サービス残業を無くしたり、シフトも自動作成を利用することで公平性が確保できたり、有給の残数もリアルタイムで確認することができるようになります。
●サービス残業の防止
打刻データに基づく自動計算は、職員の実際の労働時間を正確に記録し、未払いの残業代が発生するリスクを防ぎます。これは、法令を遵守する上で非常に重要であると同時に、職員の労働意欲と施設への信頼感を高めます。
●公平性の確保
システムが公平なルールに基づいてシフトを作成・管理することで、特定の職員に負担が集中したり、不公平なシフト割り当てが行われたりする可能性が減ります。働きやすさの実感は、離職率の改善にも寄与します。
●有給管理の円滑化
有給休暇の残日数や取得義務などもシステム上で一元管理されるため、職員は自分の残日数を確認しやすくなり、計画的な有給消化が促進されます。
5. 介護施設向けの勤怠・シフトの管理システム
ここでは介護施設向けの勤怠・シフトの管理システムについてご案内いたします。
| サービス名 | 勤怠管理機能 | 人員配置基準チェック |
| HRM369 共に! | あり | 強い |
| ジョブズマイスター for 介護福祉 | あり | あり |
| カイポケ (Kaipoke) | あり | あり |
| カナミック | あり | あり |
| ワイズマン (Wiseman) | あり | 強い |


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