ネットワーク構築は会社で社員がPCや複合機を使って業務をするうえで、必ず必要な業務です。しかし一度作り上げると、増員や増床、テレワークの新規導入などの環境変化がない限り見直しをすることは少ないと言えます。そのため企業の情報システム部門に勤務していても、ネットワーク構築は経験する機会の少ない業務とも言えます。
そのためまず、未経験でネットワーク構築の仕事を担当することになった方向けに、打合せや資料読み込みに最低限必要になる基礎知識がわかる記事を作成しました。この記事を読んで初めての業務でもちょっと気を楽にして取り組んでいただければ幸いです。
1. ネットワーク構築とは
ネットワーク構築は普段関わりがなかったので難しそう…と感じるかもしれません。でも、難しく考える必要はありません!簡単に言うと、会社の中でみんながストレスなく情報共有をしたり、インターネットを快適に使ったりできるように、通信環境を整えたりすることなんです。これは、家族みんなが家でスマホやPCを使うために、Wi-Fiを設置するのと同じようなイメージです。会社だとPCや複合機などを繋いで便利に使えるようにすることが、ネットワーク構築と言えます。
スムーズな情報共有は、業務効率アップに繋がり、会社の成長を支える大切な要素です。また、単にPCで業務に使うデータを通信できるようにするだけでなく、セキュリティ対策や将来的な拡張性も考慮が必要です。
1-1.有線と無線のどちらを使うか
通信方式の選択は、移動手段として電車と車を選ぶ時の考え方に似ています。有線は電車のように決まったレール(LANケーブル)の上を確実に走り、安定した通信が可能です。無線は車のように自由に移動できますが、天候(電波環境)の影響を受けやすく、時々通信が不安定になることがあります。サーバーや複合機など固定して使うものは有線、移動して使うノートPCなどは無線、というように使い分けるのが一般的です。
1-2.複数の拠点間で通信をする
ここはわかりやすく言うと、物理的に離れている本店と支店間をつなぐ専用の通信経路を設けることです。これは複数の建物をつなぐ専用の地下通路みたいなものです。本店と支店の通信は、一般のインターネットを使わず、専用の回線でつなげることで、安全かつ高速な通信が可能です。例えば、支店にいる社員が本店のシステムを使用する際、まるで同じ建物にいるかのようにスムーズに作業ができます。
1-3.リモートアクセスを利用する
自宅や外出先から会社のシステムに安全にアクセスする方法です。リモートアクセスは、正規の社員証を持っている人だけが使える「PCの裏口」のようなものです。インターネットを使って会社のシステムにリモートアクセスしますが、暗号化やパスワード認証など、複数の鍵を使って安全性を確保します。最近はテレワークやモバイルワークが増える中で、特に重要な機能となっています。
1-4.インターネットを利用する
会社で使うインターネット回線は、一般回線と違い、法人向けの回線は「高速道路」のように速くて安定した通信が可能です。社員数や使用目的に応じて、適切な回線速度を選択することも忘れてはいけません。また、ファイアウォールという装置で不正アクセスを防ぎます。これは、マンションのオートロックや警備員のように、許可された通信だけを通す仕組みです
2.ネットワーク構築の基礎知識
ここでは構築に必要な装置や技術について、簡単に説明します。これらの装置や技術を理解することで構築の全体像を把握することができます。まるで、家の建築に必要な材料や道具を知るように、ネットワークの構築で必要なものを理解していきましょう
2-1.LANケーブル
データを運ぶ配管のようなものです。実は水道管と同じように、太さ(規格)によって流せる量(通信速度)が変わります。カテゴリー5e、6、6Aなど様々な規格があり、数字が大きいほど高速通信が可能です。また、ケーブルの長さにも制限があり、100メートルを超えると信号が弱くなってしまうため、その場合は中継するための機材が必要です。
2-2.スイッチ
データの交通整理をする装置です。会社ではたくさんのPCや複合機がつながっています。スイッチは宅配会社の仕分け機のように、送られてきたデータを正しい宛先(PC・プリンターなど)に届ける役割があります。スイッチは何台のPCをつなぐことができるか(ポート数)や、通信速度によって機種を選びます。重要な装置なので、故障に備えて予備を用意することもあります。
2-3.ルーター
社内と外部のインターネットをつなぐ玄関口の装置です。マンションの管理人室のように、出入りする通信を管理・監視します。不正アクセスやウイルスを防ぐファイアウォール機能も持っています。また、社内のプライベートIPアドレスと、インターネット上で使用するグローバルIPアドレスの変換も行います。
2-4.無線LAN
ケーブルを使わずにデータをやり取りする方式です。家庭のWi-Fiと同じ仕組みですが、会社では多くの人が同時に使用するため、より高性能なアクセスポイントを使用することも多いです。電波の届く範囲や、同時に接続できる台数を考慮して、アクセスポイントの設置場所や台数を決めます。
2-5.有線LAN
LANケーブルを使ってデータをやり取りする方式です。無線に比べて安定性が高く、通信速度も速いため、サーバーやデスクトップPCなど、固定して使うものに用います。オフィスの床下に配線工事が必要ですが、将来の増設にも対応できるよう、余裕を持った設計が大切です。
2-6.社外アクセス
VPNという技術を使って、会社のノートPCを持って外出先や自宅にいてもインターネットを経由しながらでも安全に社内システムを使える仕組みです。これは、一般道の中に作った自分の会社専用トンネルのようなものです。通信するデータを暗号化し、認証をかけることで、社外からでも安全に社内システムを利用できます。
3.どんな時にネットワーク構築がいるか
以下に代表的な5つのケースを用意しました。どれも業務効率の改善やセキュリティの強化に繋がる可能性があります。家に例えると家族構成が変わったりするとリフォームが必要になるように、会社も社員数が増えたりオフィスを移転したり、タイミングに応じてネットワークを見直すことが重要です。
3-1.オフィス移転や増床の時
新しいオフィスではLANケーブルの配線や通信装置の設置が必須です。引っ越しに例えると、新居に電気や水道を引くようなものです。また、回線の移設や新規契約も必要です。工事には時間がかかるため、移転の2~3ヶ月以上前から準備を始めるのが一般的です。使っているPCの台数が多いほど早めに検討することをお勧めします。また既存の装置を移設するか、新規に購入するかの検討も必要です。
3-2.新たにWi-Fi環境の整備が必要な時
スマートフォンやタブレットの業務利用が増え、自由に移動しながら仕事ができる環境が求められる時です。会議室でノートPCを使いたい、お客様用のWi-Fiを用意したいなど、会社でのWi-Fi利用には様々なニーズがあります。電波の届く範囲や、同時接続数を考慮して適切な装置を選定します。セキュリティ面では、業務用と来客用のネットワークを分けるなどの工夫も必要です。
3-3.新しいフロアに通信環境を整える必要がある
会社の成長に伴って増床する際の環境整備です。既存のフロアとのつなげ方、必要な通信速度、利用する社員数などを考慮して設計します。フロア間の接続には専用の配線が必要で、ビルの構造上の制約もあるため、建物管理会社との調整も重要になります。
3-4.テレワーク導入の検討
在宅勤務を可能にするために、社外から安全に社内システムにアクセスできる環境が必要になります。これは、自宅から会社の机の上にある書類を安全に取り出せるようにするようなものです。VPN接続の導入や、クラウドサービスの利用、セキュリティポリシーの見直しなど、様々な準備が必要です。また、社員が使用するPCやタブレットの選定も重要です。
3-5.クラウドサービスへの移行
社内のサーバーをクラウドに移行する際、安定した通信環境が必要になります。例えると、自宅の物置にあった荷物を、ちょっと遠く離れた安全な貸し倉庫に預けるようなものです。会社からクラウドのサーバーへデータのアップロードやダウンロードが頻繁に発生するため、十分な通信速度の確保が重要です。クラウドへ業務継続に必要なデータをアップする場合などは、必要に応じてインターネット回線が止まった時の代替手段(バックアップインターネット回線)の検討も必要です。
4.会社でネットワーク構築するときの流れ
会社でネットワーク構築を行う際の流れは、以下のようになります。これらのステップを踏むことで、スムーズなネットワーク構築が可能です。まるで、家を建てる時に、設計図を作成し、材料を調達し、建築工事を行うように、ネットワーク構築も計画的に進めることが重要です。
4-1.現状を調査し問題点を洗い出す
家の改装工事と同じように、まず現状の問題点を整理します。通信が遅い場所はないか、必要な機能は足りているか、セキュリティは十分かなどをチェックします。また、将来の拡張性も考慮して、社員数の増加や新しいシステムの導入予定なども確認します。ネットワークの構築は専門性が高いのでこの段階から専門業者に相談するのがスムーズに進める秘訣です。
4-2.ネットワークの方針、企画、接続形態を決め、構築の設計を作る
建築の設計図のように、新しいネットワークの設計図を作ります。具体的には各部署の配置とLANケーブルの経路、必要な通信速度と機器の仕様 、Wi-Fiの設置場所とカバー範囲 、セキュリティ対策の方法、概算の費用 などを決めていきます。いろいろやることがありますが、この設計が後々の運用を左右するため、慎重に検討する必要があります。
4-3.運用管理に関するマニュアルを作る
構築したネットワークを安全かつ円滑に運用するために、運用管理に関するマニュアルを作成します。例えば、パスワードの管理方法や、トラブル発生時の対応方法などを記載します。運用管理マニュアルを作成することで、ネットワークの管理者が不在の場合でも、スムーズな運用が可能です。また、定期的なセキュリティチェックや、バックアップ作業などもマニュアルに記載しておくと良いでしょう。
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