ここでは会計ソフトを中小企業に導入するとどのようなことができ、メリットとデメリットはどのようなものがあるかご案内しています。小規模で事業を行っているためエクセルを使っていたり、税理士事務所に代行してもらっているなど、自社で会計ソフトを導入していない中小企業もまだまだあるかと思います。本記事では会計ソフトのコストに対する考え方や選び方も掲載しています。会計ソフトを未導入の中小企業担当者の方や経営者の方は、手間やコストの削減していくため本記事で会計ソフトの選び方を参考にしてぜひ具体的なソフトの検討や比較を進め、自社に会計ソフトを導入してみてください。
1.会計ソフトとは
ここではそもそも会計ソフトとはどのようなものかや、会計ソフトにはクラウド型とパッケージ型の2種類があることをご案内いたします。
1-1.そもそも会計ソフトとはどんなものか
会計ソフトは、中小企業の経理や財務会計の業務を効率化する強力なツールです。日々発生する売上や経費や収支を正確に記録して、データを集計して自動で決算書の作成までできるものです。
エクセルなどを使い手作業で経理業務を行っている場合は、時間がかかってしまったり簿記の知識がないと正確な帳簿作成が難しいという課題があります。例えば、計算ミスや転記ミスが起こりやすかったり、件数増に比例してミスが増える、経理業務に多くの時間を費やしてしまう、などの手作業がゆえの悩みが発生します。
これらの課題を会計ソフトを導入することで解消していくことができます。取引の入力から仕訳、集計、帳簿作成、決算書作成まで自動化でき、集計や帳票作成などのミスを最小限に抑えて業務を効率化することが可能です。
1-2.クラウド型ソフトとパッケージ型ソフトの違い
会計ソフトには「クラウド型」と「インストール型」の2種類があります。
クラウド型会計ソフトは、インターネット上に会計ソフトがあってエッジやクロームなどのブラウザや専用アプリを使って利用します。インターネットを利用して会計ソフトを使うため、インターネットがつながれば、オフィスでも自宅でも外出先でも場所を選ばず会計ソフトを利用できます。その反面インターネットがつながらなくなるとクラウド型は会計ソフトは利用できなくなってしまいます。クラウド型は利用料が月額や年額制のため最初の投資は少ない金額で始めることができます。
インストール型会計ソフトは、会計ソフトをパソコンにインストールして利用します。インストールされたパソコンでだけ、会計ソフトを利用することができます。会計ソフトの動きはソフトを購入した時点の会計ルールとなるため制度が、会計の制度が改正された場合は手動で設定変更をするなど対応が必要になります。インストール型は、一度購入すればそれ以降は費用はかからないため、クラウド型への移行をせずに長期で使う場合はクラウド型よりも会計ソフトの費用負担を安価にすることもできます。
2.会計ソフトでできること
ここでは代表的な会計ソフトを導入してできることをご案内します。
2-1.日々の会計処理の省力化
伝票作成や帳簿付けの基となる入金、出金、振替伝票をシステムで簡単に作成することができます。また、様々なお金の動きに対して自動で仕訳することも可能です。現在の会計ソフトの一部にはAIで勘定科目の判別を行い自動仕分けするものもあります。仕訳の自動化により、簿記の知識が少なくても正確な処理を行うことも可能です。これらの伝票のデータは、現金出納帳や総勘定元帳などへ自動での転記され手作業による転記ミスは解消できます。
2-2.入金・支払・資金管理が容易になり、経営状況の見える化ができる
日々の入出金に加えて、請求書も会計ソフトから作成することができます。支払予定の請求書の内容も会計ソフトへ入れることで、売掛金・買掛金の正確な把握が可能となります。資金管理の面でも、現在の資金状況を把握したり将来の資金繰り予測ができるようになります。キャッシュフローの可視化をすることができ資金ショートのリスクも回避することも可能です。
2-3.固定資産の管理もできる
会計ソフト内に固定資産台帳を作成することができ固定資産を登録しておくことで、減価償却費を計算して、貸借対照表へ反映することもできます。減価償却は法定耐用年数に基づいて管理することができ、正確な償却スケジュールで減価償却費を算出することができます。
2-4.決算書の自動作成もできる
会計ソフトは入力された伝票や固定資産等の情報に基づいて、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書を自動で作成することができます。また、消費税申告に必要なデータについても、売上にかかる消費税から仕入れで支払った消費税を差し引いて計算することができます。
2-5.クラウド型会計ソフトを使った税理士事務所との連携
クラウド型の会計ソフトであれば税理士事務所と会計データを共有できるものもあります。顧問の税理士とリアルタイムの会計データを見ながらアドバイスを受けることも可能です。実際に行うには税理士事務所と同じ会計ソフトを利用する必要があるため顧問の税理士事務所に会計ソフトの連携ができるか事前に確認することが必要です。インストール型の会計ソフトを導入すると税理士に相談する場合は会計データはメールで送るなどの対応が必要です。
3.会計ソフトを導入するメリット
ここでは会計ソフトを導入することで得られるメリットをご案内します。
3-1.経理業務を効率化できる
会計ソフトを導入する際の大きなメリットの1つに、経理業務を効率化できることがあります。日々の入出金や固定資産、請求書を会計ソフトで管理することで、帳簿や決算書を自動作成できます。会計ソフトには効率化に向けて様々な機能を用意しており、銀行の口座データを取り込んで仕訳まで自動でできる機能や、スキャンした領収書データを取り込んで仕訳する機能もあります。
3-2.経営に必要なデータもタイムリーに抽出できる
会計ソフトを導入して経理担当者の負荷や業務時間を短縮する効果は、経営に必要なデータ抽出もタイムリーでできることも意味します。月次決算の情報やキャッシュフローの情報もいち早く確認することができ、会計データを使って経営判断のスピードを速めることができます。
3-3.経理業務の属人化をしづらくできる
これは経理や総務系業務をシステム化する際、全般的に言える事ですが、システム導入によって業務が俗人化しづらくなる効果もあります。経理ならではの仕訳や集計といったものは、正しく行うためには一定の知識が必要です。会計ソフトを導入すればこういった伝票作成や集計など日々の実務的な業務は自動化することができ、一定の業務は属人化を避けることもできます。
3-4.人的なミスを削減できる
伝票の入力補助機能や自動計算、自動仕訳といった機能があるため、会計ソフトを利用することで人的な入力ミスを大幅に削減することができます。またアクセスログも確認できる会計ソフトもあり間違えた入力をした場合の原因追及であったり、改ざんについても抑止効果があります。
3-5.クラウド型の会計ソフトなら場所を選ばない
クラウド型会計ソフトを導入すると場所を選ばず会計ソフトを利用できるため、出先からでも自宅からでも手軽に業務を行うことができます。
もう1点クラウド型のメリットとしては、会計データのバックアップが自動で行われるためデータが消失するというリスクを極限まで低減することができます。インストール型の会計ソフトを利用すると手動でバックアップをしていない場合パソコンが壊れてしまう会計データが復元できない場合もあります。インストール型を利用する場合はUSBメモリーなどに会計データを定期的に保存することをおすすめします。
4.会計ソフトを導入する際のデメリット
ここでは会計ソフトを導入する際のデメリットをご案内します。
4-1.会計ソフトのコストがかかること
会計ソフトは、クラウド型でもインストール型でも導入する場合コストが発生します。小規模で事業を行っている場合はこれまで会計業務をシステムを使わずエクセルでやっていたり、税理士事務所へ代行依頼をしていて、果たして自社に会計ソフトを導入してコスト等が見合うか疑問に思われることもあるかもしれません。しかし、この点は会計ソフト導入によって削減できる時間、人件費、ミスによるやり直しのリスクを考えれば、十分にコストに見合うメリットがあるとも言えます。複数の会計ソフトを比較してなるべくコストの安いものを検討することも導入に向けた対応方法の1つとも言えます。
4-2.社内に財務会計の知識を持つ人が不要とはならない
会計ソフトは、計算や帳票、決算書の作成は自動で行うことができますが、打った伝票のデータが間違えなく打たれているか、自動で行われている仕訳も設定やAIによる処理で間違いがないかなど、会計ソフトが出力する帳票や決算書のチェックは行う必要があります。そのため、一定の経理会計の知識のある人が社内には必要で、ソフトの操作方法だけ知っていても会計ソフトを運用はできないというデメリットもあります。ここは、会計ソフトの効果を会計処理を自動化して経理担当の業務時間を大幅に削減できることや手早く経営指標を見れることが会計ソフト導入の目的と考えるべきとも言えます。
5.会計ソフトの選び方
ここでは会計ソフトを導入する際の代表的な選び方をご案内します。
5-1.導入目的をリストアップする
会計ソフトを選ぶ前に、導入目的をリストアップすることをおすすめします。ここでリストアップした視点や観点が、先々会計ソフトを比較する際の情報収集に活きてきます。
- 単純な会計・経理業務の効率化が目的なのか
- リアルタイムの財務状況分析を重視するのか
- 資金繰り管理を強化したいのか
- 複数の担当者が簡単に操作できることが重要なのか
5-2.クラウド型とインストール型のどちらがより良いか判断する
小規模な企業や、どこでも経理業務や会計ソフトのデータを見たい場合はクラウド型が向いています。一方、インターネットが例え使えない場合でも経理業務を必ず継続した場合や会計の制度改正によるソフトの設定変更も自社で行えそうな場合は、インストール型が適している場合もあります。自社の事情にあわせて最適な方を選びましょう。
クラウド型会計ソフトのメリット
- インストール不要で導入が簡単
- 場所を選ばずどこでも作業可能(在宅勤務対応)
- 自動アップデートされシステムは常に最新の会計制度に対応する
- サーバー管理が不要
- 初期コストが低い
- 月額または年額の定額料金
- 税制改正への対応が自動
インストール型(デスクトップ型)会計ソフトのメリット
- インターネット環境に依存せず安定した動作
- 一般的に処理速度が速い
- 取引数が多い企業に向いている
- セキュリティ対策を自社でカスタマイズ可能
- 長期的に見るとコスト削減の可能性
- 初期費用は高めだが月額コストは不要
5-3.必要な機能を洗い出す
会計ソフトの基本的な機能に加え、自社で必要となりそうな機能を洗い出しましょう。特にクラウド型では追加で必要な機能を使うためには追加料金がかかる場合もあります。そのため必要となる追加機能はあらかじめ想定しておくことをおすすめします。
一般的な追加機能
- 銀行口座やクレジットカードの取引データの自動取込み機能
- 電子帳簿保存法に対応した帳簿や証憑の保存機能
- 多数の請求書発行、一括作成、自動送信機能
- 給与計算・明細発行・年末調整機能
- 交通費・経費の申請・承認・精算機能
- 確定申告書の自動作成機能
- 高度な財務分析機能
5-4.会計ソフトのサポート体制
自社で経理担当が会計ソフトをうまく使っていくためには、サポートも大切なポイントです。以下のようなことをサポートについては確認されることをお勧めします。
チェックすべきサポート内容
- 問い合わせ方法(電話、メール、チャット)
- サポート対応時間(平日のみか、夜間・週末対応があるか)
- 導入時のサポート内容(データ移行サポートなど)
- 動画などオンライン操作マニュアルやFAQの充実
6.代表的な中小企業におすすめの会計ソフト
ここではいくつかの代表的な中小企業向けの会計ソフトをご紹介します。
区分 | ソフト名 | 提供者名 |
クラウド型 | freee | フリー株式会社 |
マネーフォワード | 株式会社マネーフォワード | |
弥生会計Next | 弥生株式会社 | |
ClearWorks会計ワークス | 株式会社スマイルワークス | |
インストール型 | 弥生会計25 | 弥生株式会社 |
会計らくだ25 | 株式会社BSLシステム研究所 |
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