人事評価システムを中小企業に導入すると、目標策定や評価業務を効率化できることはもちろんのこと、人事制度の透明性を向上させ、ひいては社員の評価の納得感も高めることにつなげることもできます。ここではエクセルで目標や評価の管理を行っている中小企業の人事担当者の方や経営者の方に向けて、人事評価システムで解決できる課題や、導入メリット・デメリットをご案内いたします。ぜひこの記事を読んで人事評価システムの導入に向けたシステム選定に進んでみてください。
1.人事評価システムとは
ここでは人事評価システムとはどういったものか、中小企業向けにはなぜクラウド型の人事評価システムの導入をおすすめするかなどをご案内します。
1-1.そもそも人事評価システムとは
人事評価システムとは、社員個人の目標や評価を行うシステムのことです。社員が目標を作成・入力し、上司が後日評価を入力することができるようになっています。人事評価システムには目標申請書であったり評価書のテンプレートが用意されており、社員が定量的な目標や定性的な目標を入力したり、上司が評価を入力することも手軽にできるようになっています。目標や評価を人事評価システムで記録し見える化していくことで人事制度の透明性を上げていくことにもつなげられます。
1-2.中小企業向けの人事評価システムとは
人事評価システムには、大規模企業向けのカスタマイズ可能な専用サーバーで稼働するシステムから中小・中堅企業で専門的なITの知識が無くても簡単に導入できるクラウド型のシステムまで幅広く存在します。
中小・中堅企業にも導入しやすいように評価制度が無くても評価シートの作成支援が付いていたり、人事評価に絞った機能だけを搭載した比較的低価格のものがあったり、システム導入と共に人事制度そのものを学べたり、といったサービスが付いた中小企業向けの人事評価システムも用意されています。
人事システムや評価制度がきちんと整備できていない中小企業も多いかと思いますが、このように人事評価システムの導入によって制度の整備を補完できるようにもなっています。
1-3.中小企業向けの人事評価システムはクラウド型がおすすめ
中小企業向けの人事評価システムを選ぶ際はクラウド型のシステムがおすすめです。クラウド型というと、ちょっとわかりずらいかもしれませんが、WEB上で利用契約を行うと、クロームやエッジといったインターネットを見るブラウザ上で、ITの専門的な設定なしにすぐにシステムが利用できるサービスです。そのためクラウド型を選べば、サーバーを購入したり、ソフトをインストールしたりという専門的なITの知識が無くても導入を進めることができます。
1-4.中小企業向け人事評価システムは「人事評価機能のみ版」と「人事労務システムとの連携版」の2タイプある
中小企業向けの人事評価システムには、「人事評価機能のみ版」と「勤怠管理システムとの連携版」の2タイプがあります。ここでご紹介している人事評価システムはすべてクラウド型のシステムです。
「人事評価機能のみ版」は、人事評価のみに機能を絞ったシステムです。専門性を高めており比較的様々な機能やサービスが搭載されています。代表的なシステムにはMIRAIC、MINAGINE人事評価システム、人事評価ナビゲーター、ヒョーカクラウドなどがあります。
「人事労務システムとの連携版」とは、人事労務の様々な業務を管理できる人事労務システムのその中に人事評価機能が付いたものです。人事労務システムには入退社、勤怠、給与、人事、評価、異動、スキル管理、採用、社会保険、年末調整など、様々な機能が搭載されています。すべての機能を契約せずに自社で必要な利用したい機能だけ導入している企業も多いようです。代表的なシステムにはjinjer、SmartHR、オフィスステーション、One人事、KAONAVIなどがあります。自社に人事労務システムが導入されていれば、社員情報の二度打ちの手間も削減できるため導入をおすすめいたします。
2.導入で解決できる課題
ここでは人事評価システムを導入して解決できる課題をご案内します。
2-1.エクセルでの人事評価からシステム化による効率化実現
これまでエクセルで人事評価シートへの目標や評価の入力を行っていた場合は、人事評価システム導入するとシステム上で効率的に目標や評価の入力を行うことができます。社員、評価者の双方がシステムへ入力するため、エクセルと比べて入力の手間を減らしたり、入力が終わっていない社員や評価が途中で止まってしまっている評価者の確認も速やかに行うことができます。また二次評価者の設定も可能で一次評価者の評価入力が終わったら二次評価者へ通知が送られて、二次評価者の評価入力を促すこともできます。
また、評価の入力時期は、賞与支給や昇給昇格の会議前に短い時間でまとまった数の評価を行わなくてはならない場合でも、エクセルファイルを扱う手間を無くして人事評価にかかる手間や時間を削減することができます。
2-2.過去の人事評価データも一貫して管理し続けられる
人事評価システムを運用し続けると、社員の評価を継続的に管理していくことができます。例えば人事制度の昇給や降給、昇格や降格といった位置づけに対しても、人事評価システム上で過去の評価結果を持ち続けることができるため、評価結果に基づき明確に昇給や降給、昇格や降格を行うことができます。
2-3.システム化が評価の透明化の一助にもなる
評価者が行う評価の基準などを人事評価システムに登録することができるため、別々の評価者が社内の共通の基準を見ながら評価業務を行うことができます。
この点でもシステムの導入で評価の透明化を進めることができ社員の評価に対する納得感も高めていくことができます。
2-4.異動シミュレーションも可能
人事評価システム上で蓄積された社員のデータを見ながら、異動や人員配置のシミュレーションを行うこともできます。異動シミュレーションについては、人事労務システム上で人事評価機能を利用している場合は使うことも可能です。具体的には、評価のデータに加えて、社員個人の勤続年数や年齢、スキルなどをのデータを人事労務システム上から取り出して、新しいチーム作りのシミュレーションに使うこともできます。人事管理システムを導入している場合はこういった異動シミュレーションも可能になってきます。
3.人事評価システムの機能
ここでは人事評価システムの代表的な機能をご案内します。
3-1.評価シートのテンプレート機能
人事評価システムの利用を開始するにはまずシステム上に人事評価シートを準備する必要がありますが、この際に人事評価システムが用意しているテンプレートを利用することができます。
人事評価システムによりテンプレートは異なりますが、成果評価、行動評価、能力評価を組み合わせて評価シートを作成できる基本的なものから、MBOと言われる個人や組織目標を管理できるテンプレート、OKRと言われる組織や企業が目指す大目標に対する進捗を追うテンプレートなどもあります。
これらのテンプレートはそのまま使うのではなく自社に併せて修正することもできます。
3-2.入力の進捗確認機能
人事評価は決まった期間内に行わなくてはなりません。そのため評価シート入力の進捗状況管理機能を活用するとスケジュール通りに評価を終わらせることも可能です。
例えば、期初に行う社員による目標入力や評価者による承認はもちろんのこと、評価期間における社員の自己評価や評価者による評価入力が終わっているかを一覧表で確認することができます。締切前であっても現時点での対応者数も確人できるため、その対応実数を見た上で社内へ期日までの対応を促す発信も簡単に行うことができます。エクセル管理ではやりずら買ったことですが人事評価システムの導入により目標や評価の対応状況についての進捗も追うことも手軽にできるようになっています。
3-3.一次評価者のほか二次評価者の設定機能
目標の申請を行う社員ごとに、一次評価者のほか二次評価者も登録することができます。例えば社員の上に課長と部長がいる場合は、社員の評価はまず一次評価者に設定された課長が行い、課長の評価が終わると二次評価者の部長が評価する、といった使い方が可能です。
もちろん課長に対しては一次評価者を部長に設定して二次評価者は役員とすることも可能です。またそこまで大きな組織ではなければ、社員の一次評価者は所属長として、二次評価者を社長とすることも可能です。
3-4.360度評価機能
360度評価とは、本人の評価を上司だけが行うのではなく、上司に加えて、部下、同僚、本人の自己評価をあわせて評価する方法です。360度評価機能についても搭載されている人事管理システムもあり、自社に制度を取り入れることもできます。
4.メリット
ここでは人事評価システムを導入することのメリットをご案内します。
4-1.評価時間の短縮をはじめとした評価業務の効率化
人事評価システムを導入することで、一定期間に集中しがちな評価業務にかかる時間を削減することができます。エクセルのフォームで行っていた場合は、エクセル回収や集計など、評価者にかかる評価以外の負担もありましたが、システムの利用により専用の評価入力画面から行うことができるようになります。
4-2.公正な人事評価につなげることができる
人事評価システムを導入することで、一次評価者のほかに二次評価者も設定することができるため、偏りのある評価が行われた場合でも評価を修正する作用を働かせることも可能です。
こういった人事評価体制を取っていることは社員にとっても人事評価システムへの理解をより深められたり、より信頼して向き合える効果もあると言えます。
4-3.離職者数の低下につなげることもできる
退職理由の中には評価が正当と感じられないというものも、昔から存在しています。人事評価システムはシステム上で、人事評価ルールに則って目標の申告や評価を行いそれらを記録していくため、透明度の高い人事制度の運用を行えるメリットがあります。そのため評価が正当でないという考えに対しても、人事評価システムの導入と運用で対策を打つこともできます。
5.デメリット
ここでは人事評価システムを導入した場合のデメリットをご案内します。
5-1.コストがかかる
この点が一番人事評価システムを導入する際の障壁になりがちなことですが、やはりコストがかかることが一番のデメリットになると言えます。ここではコストがかかることについてどう考えればいいか導入に向けたヒントをお示ししたいと思います。
これまでエクセルで人事評価を行っていた場合は、人事評価システムの導入によって全く新しい経費がかかってきます。そのため、新しく増えるコストに対してメリットを明確化することで導入への理解も進みやすくすることができます。
まず、一番重要な人事評価システム導入のメリットは、評価者の時間短縮・業務効率化と人事評価の透明性を向上できることです。人事評価業務や制度というのは賞与算定や昇格・昇給につながるため比較的評価者だったり会社に寄って考えがちな面もありますが、評価される社員に対してもシステムの導入によって、評価が見える化し評価に対する納得感もこれまでよりも向上させる効果があります。
このほかにも、人事異動のシミュレーションが可能になったり、360度評価の導入も導入が可能になります。人事管理システムを導入して様々な機能を活用すれば、システムによる人事制度の運用で社内により良い活力をもたらすことも可能です。
6.主な人事管理システムのご案内
ここでは主な人事管理システムをいくつかご案内します。
区分 | システム名 | 提供元 |
人事評価機能のみ版 | MIRAIC | 株式会社みらいの人事 |
MINAGINE人事評価システム | 株式会社ミナジン | |
人事評価ナビゲーター | 株式会社日本経営 | |
ヒョーカクラウド | 株式会社シーグリーン | |
人事労務システムとの連携版 |
jinjer | jinjer株式会社 |
SmartHR | 株式会社SmartHR | |
オフィスステーション | 株式会社エフアンドエム | |
One人事 | One人事株式会社 | |
KAONAVI | 株式会社カオナビ |
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