ERPの導入で中小企業の業務を効率化!1つのシステムを全部門で使って業務

情シス

社内では営業部門では業務にエクセルを使い、経理部門では経理システムを利用し、人事労務部門では紙とエクセルで勤怠管理をしている、現在でもそんな中小企業も多いのではないでしょうか。そのため中小企業経営者の中には売上の集計にも時間がかかったり、営業と経理の連携がうまくいかず請求書の発行漏れがあったり、社員の労働管理も翌月にならないと見えてこないなど、様々な課題や不満を抱えている場合もあるのではないでしょうか。
ここではそんな中小企業経営者の方に向けて、ERPを導入して社内業務を1つのシステムで行っていくことで各課題を解決する方法をご案内いたします。この記事を読んで、ERPが課題解決方法の1つであることを理解して、ERPの検討に向けまず自社の課題抽出に取り掛かってみてください。

1.中小企業向けERPとは

ここでは、そもそもERPとは何かや、ERPを検討していくためには自社の課題整理が必要など、ERPを検討する際にまず最初に知っていただきたいことをご案内しています。

1-1.そもそもERPとは何か

ERPとは社内のすべての業務を行うことができるシステムです。1つのシステムに、営業や在庫、請求・支払い、人事・給与など、会社内で必要な機能がさまざま搭載されています。
社内業務を1つのシステムで行うと、多くの手間を減らすことができます。例えば「2度打ち」を無くすことができます。1つの案件が発生し受注・納品して支払いまで完結するまでの間には、社内のさまざまな部署が協力して業務を行いますが、1つのシステムを使うと営業部、仕入部、経理部それぞれ自分の仕事をするために、案件情報を二度打ちすることが不要になります。他にも「受注済みの在庫数が未受注の在庫数」を瞬時に集計することもできます。1つのシステムなので、仕入部が管理している在庫を営業部で受注している在庫と、受注していない在庫に瞬時に分けて集計することができます。
またERPには、経理・会計、人事、労務管理など管理部門の機能も組み込まれています。どの部署でも他の部署と関わる仕事が多くあると思います。ERPのいいところは、1つのシステムで他部署にまたがる業務をやってのけられるので、業務の手間削減とスピードアップを実現できることにあります。
“ERP”というといったい何を指しているのかよくわからない人も多いと思います。ERPは企業内にある様々な業務(販売、経理、人事労務など)がまるっと入った1つのシステムです。
ちなみに、ERPはEnterprise Resource Planningの頭文字をとったものです。ERPには「企業の経営資源(販売、経理、人事労務など)を統合・最適化する」という意味があります。

1-2.ERPの導入を考えるには、まず自社の課題を抽出する

ERPの導入を少しでも視野にいれているのであれば、まずは自社の課題の把握から始めることをおすすめいたします。システムを選ぶ際には、解決したい課題や新しいシステムで実現したい業務を把握しておくことが重要なためです。というのも、ERPなどシステムは様々な会社が販売していますが各社によって搭載している機能には違いがあります。ERPの比較が始まると、この機能はあっちのシステムはできそうだけど、こっちのシステムはできなそう、などがどんどん出てきます。最終的にどのERPにするかを決めるにも解決できる課題の多いERPや優先課題の解決できるERPを選ぶのでは思います。そのためまずは最初に自社の課題を抽出してから比較を行っていくことをおすすめします。

1-3.自社の課題を抽出する方法

ここでは自社の課題を抽出する方法をご案内いたします。ERPの導入を考える際にぜひ参考にして実際に行ってみてください。
なお、社内に現在システムが整備されておらず、エクセルで独自に各部門が業務をしているような状況だと、システムを使った業務をしていないため、あまり「こうしたい」という意見が出てこないこともあります。そのような場合は、システム部門などで簡単に1案件の最初から最後までの業務フローの図面を作っておくと、前後の仕事に目が行って現場も答えやすくなります。

1.社内の各部門へヒアリングする(具体的な業務の聞き取り)
・他の部門から業務依頼が来る際は、どんな情報(例:受注した商品名)をどんな手段(例:エクセルをメール)で入手しているか。
・自部門で入力している情報は、どんな情報(発注品目や納期)で何に(例:エクセル)入力しているか
・他の部門へ渡す情報は、どの情報(発注品目と納期)をどの手段(例:エクセルをメール)で送信しているか

2.社内の各部門へヒアリングする(改善事項を探る聞き取り)
・毎日行う業務や、毎月行う業務に分けて、時間がかかる業務は何であるか。
・手作業で行っている業務のうち手を動かす量が多い業務は何か。エクセルへの入力も含む。
・他の部門から情報が来ないために、自部門で進められない業務は何か。
・今の業務を行っていて、どんなミスを起こしてしまうことがあるか。

3.業務フローの図面を作成する
上記1.の情報を整理して業務フローの図面を作成します。俯瞰して見られるよう大きな業務単位(例:在庫管理)でA4で1枚程度におさめて複雑にしないことがポイントです。また、2.の情報から手作業が多い箇所をわかるようにしておいてもいいかもしれません。

4.課題一覧表を作成する
上記2.の情報を整理して、課題一覧表を作成します。社内の課題を俯瞰することで「手入力が多い」「部門間でファイルをやり取りする都度ファイルサーバーに保存し直している」「計算式がいつのまにか壊れている」など、ある程度各部署で共通の課題のほか部署固有の課題も見えてきます。

1-4.中小企業向けのERPならクラウド型がおすすめ

ERPにはハードウェアの購入が不要な月額料金を軸にした「クラウド型」と、高めの初期費用がかかりIT要員が必要な「オンプレミス型」があります。中小企業でのERP導入であれば初期費用の負担がいらない「クラウド型」がおすすめです。
以下、クラウド型のメリットをご紹介します。

1.初期費用を抑えられる
クラウド型ならオンプレミス型にくらべ、サーバーを購入する必要がないため、その分を大幅に初期費用を抑えることができます。

2.メンテナンスの必要がない
クラウド型は自社でメンテナンス作業が不要です。クラウド型であれば、データセンターにシステムが入ったサーバーがあり、ERPの提供会社がそのサーバーのメンテナンスを行います。オンプレミス型だと自社で購入したサーバーにシステムを入れて、自社でサーバーのメンテナンスを行います。

3.セキュリティが強固
クラウド型のシステムが置かれるデータセンターは、アマゾンやグーグル、マイクロソフトなど世界有数のIT企業が運営していることが多いのが現状。そのための高いレベルのセキュリティで守られた環境でERPを利用することができます。

2.ERPの機能

ERPに搭載されている代表的な機能をご案内しています。企業の業務は多岐にわたるため、これらの機能を使って様々な業務を効率的に行います。そのため以下の「例えば・・・」でご説明しているERPを使った効率的な業務はほんの一例です。

2-1.会計・経理管理

会計機能、請求書発行機能、債権(入金)管理・債務管理機能、固定資産管理機能、未収金管理督促機能

例えば、ERPでは各機能が自動で連携するので請求書を作成すると、自動で会計機能に売掛金が登録されます。お客様が請求書を支払うと債権管理機能に入金され、会計機能の売掛金が自動で消込されます。もちろん、請求書発行の前段階である販売管理で納品が完了すると、請求書の発行依頼が飛んでくる流れにすることができます。

2-2.労務管理

給与計算機能、勤怠管理機能、年末調整、人事管理機能、マイナンバー管理機能、ワークフロー機能

例えば、従業員の勤怠管理をERPの勤怠管理機能で行うと、出勤退勤の打刻や休暇申請を電子化して月の勤怠実績を自動作成することができます。自動作成された勤怠実績は、給与計算機能に取り込まれ給与計算も自動化することができます。もちろん給与計算の確定後は、会計・経理管理の会計機能に給与を反映させることができます。

2-3.販売管理

案件管理機能、見積管理機能、取引先管理機能、商品管理機能、受注管理機能、在庫管理機能、入出荷管理機能、仕入管理機能、原価管理機能、売上管理機能

例えば、営業中の案件が受注した場合は受注管理機能に受注の登録を行うと、自動で発注依頼が仕入機能に流れます。仕入部門は在庫が無い場合は取引先への発注を行います。その後在庫確認後に自動で出荷指示を流すと、請求書の発行依頼が会計・経理管理の請求書発行機能に自動で流れ、請求以降のフローを動かすことができます。

2-4.データ管理・分析

ダッシュボード機能、商品・顧客別利益分析機能、案件別・プロジェクト別収支機能、セグメント別分析機能

例えば、経営陣に向けて最新の売上や現金残高、未収金残高、在庫金額などをダッシュボードで見せることもできます。案件やプロジェクトごとの収支も、契約金額や予算、原価や利益を集権することができます。

3.メリット・デメリット

ここではERPの導入メリットやデメリットについてご案内いたします。

3-1.【メリット】業務の効率化・ミスの削減

ERPの強みは、1つのシステムで企業全体の業務をカバーできるため、複数の部署をまたぐ二度打ちや手作業の集計を無くして業務の効率化とミスの削減をしていくことが可能です。また、紙の帳票を部署間でやり取りして行っていた業務は、ペーパレス化することもできます。
これらは、1つの事業部門にとどまらず、経理系、労務人事系、販売系という社内全体で実現することができます。エクセルで業務を行っている場合は、かなりの業務効率化を行うことができます。

3-2.【メリット】経営陣に必要な情報を瞬時に提供できる

経営陣が必要とする情報は、販売面、財務面、人事労務面など多岐にわたります。現実には経営者それぞれの考えで見たいデータは異なってくると思いますが、ERPのいいところは、経営者が必要とするデータも従業員が入れたデータから自動で即時に拾ってくることができる点です。例えば、様々な案件から入金が発生し、サプライヤーへの仕入原価の支払いや従業員への給与支払いで日々現金資金の量は変動します。営業部門も仕入部門も経理部門もそれぞれの業務をERP上で行うと、経営者はERP上で現金残高の量も正確に把握することができます。

3-3.【デメリット】導入時には人的負荷がかかる

今まで社内の各部門がエクセルで業務を行っていたり、独自のシステムを使って業務が成り立っていた場合は、すべての業務をERPで行う特性上、検証業務であったりシステムにあわせた業務フローへの変更など、当初は大きな負荷がかかる場合があります。
ERPや複雑なシステムの導入に言える事ですが、業務を行う側もいきなりデータの入力方法や画面が変わり、理解が追い付かないがゆえに負荷を訴えやすくなることもあります。こういったことの対策としては、業務をERPで通して行った場合どうなるかを、早めに検証・提示して、各部門の長に理解を求めていくという方法があります。システムにあわせて業務を変えていく場合も、ある程度、現場が説明や操作を理解できる時間を作って進めていくと、早めに正常な運用を行うことができます。

3-4.【デメリット】便利さの反面売上に関わらず毎月コストが発生する

クラウド型のERPでは利用する社員数により月額費用が決まるため、月額の目安として数万円から数十万円の固定費が発生します。これらは、売上が下がっても費用は変わらないため固定で年間数十万円から数百万円の経費が発生します。一度、ERPを入れると仕事のやり方が固定されるため、簡単にやめることや乗り換えることが難しくなります。そのためERPの導入にはきちんとしたコスト面の導入シミュレーションが必要となります。

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