自社にもそろそろ施工管理システムを導入してアナログな施工管理業務から脱却できないものか、そんなことを考え始めている中小建設会社のシステム担当の方もいらっしゃるのではないでしょうか。まだ調べ始めなので、施工管理システムのことが実際はよくわかっていなくても、この記事を読むと基礎的な施工管理システムとはどういうものかから、施工管理システムの基本機能、導入した場合のメリット、施工管理システムを選ぶポイントを知ることができます。ぜひこの記事を読んで自社の施工管理業務を効率化できる施工管理システムの選定に進んでみてください。
1.施工管理システムとはどういうものか
ここでは施工管理システムとはどういうものか、まず最初に知っていただきたいことをご案内いたします。
1-1.そもそも「施工管理」とは?
これから施工管理システムを紹介していく上で、まず改めての確認となりますが「施工管理」とは建設業で建設工事を予定通りでかつ安全に行っていくための業務管理のことです。施工管理業務は一般的に「品質管理」「工程管理」「原価管理」「安全管理」の「4大管理」と呼ばれています。いずれも大事な業務でありどれがおろそかになっても工事の品質低下やコスト増、遅延、事故発生につながりかねません。
●品質管理
建物や構造物が設計図通りの品質で建設されているか確認していきます。材料の検査から施工の方法、完成後の安全性チェックまで各段階で品質を保つための管理を行います。
●工程管理
納期に向けて各工程のスケジュールを引き、必要に応じて工程を修正していくものです。天候や資材搬入の遅れ等の要因でスケジュールに遅れが出てた際も適宜納期に間に合わせるべく工程の修正を行います。
●原価管理
予算内で工事を完了させるための労務費や材料費、外注費などのコスト管理のことです。利益を出すためには最も重要な管理の一つです。
●安全管理
労働災害をゼロにするために行う様々な業務のことです。朝礼での体調確認をはじめ、危険予知活動(KY活動)の実施、危険箇所の周知、安全帯などの保護具の点検などを行います。清掃や整理整頓も一種の安全管理になります。
1-2.施工管理システムの必要性
これまで長く建設業界では、施工に関する管理業務の多くを紙の書類や電話、(もしくはIT機器は使っても)メールを利用して行われてきました。このアナログな業務方法が要因で多くの手間がかかっていました。
●情報共有の遅れ
最新の図面や進捗を現場や事務所、担当間で共有しようとしても時間がかかり、その分手戻りやミスが発生しやすくなっていました。
●書類の作成業務への対応
日報や報告書を毎回手書きし、事務所に戻ってからパソコンで入力するなど、記入の手間や事務所へ戻る手間が発生していました。
●情報の一元管理が困難
各担当者が個別のエクセルファイルやワードファイルで情報を保管・管理しているため、別人が情報を探す際に本人に確認するなどの手間や時間がかかっていました。
●コストの見える化にも時間を要した
工程や担当者ごとにコスト管理のファイルも分かれているため、各自がコストを計算したうえで、それらを取りまとめて集計する手間がかかっていました。実際には手間だけでなく、時間もかかるため計算した結果、既に予算超過になっていたということも発生しうる管理となっていました。
施工管理システムを導入することで、これらの手間を削減して各業務の時間を短縮することが可能です。施工管理システムはクラウド型を採用すると、現場や事務所など場所を選ばずに簡単にPC、タブレット、スマートフォンなどから利用して業務を行うことができます。
2.施工管理システムの基本機能
ここでは施工管理システムの基本機能についてご案内いたします。
2-1.情報共有・コミュニケーション機能
日々、刻々と工事が進捗していく建設現場では、多くの情報が日々飛び交っています。そのため情報共有をシステムを使ってリアルタイムで行えることは、ミスの削減や手戻りの防止につなげることができます。
●写真、図面、資料の共有機能
撮影した現場写真をその場でシステムにアップロードすると、関係者がすぐに確認することができます。ワードに写真を貼り付けて、説明文を入力し、メールに添付して送る、といった一連の手間がなくなり、写真整理の手間が省けるだけでなく、全員が同じシステムを見るため書類のペーパーレス化も進めることができます。
●チャットや報告機能
現場からの進捗報告や現場内での連絡事項も、システム内のチャット機能を使って行うことができます。メールのようにやりとりが埋もれる心配がなく、過去のチャットも比較的簡単に検索することができます。また電話と違い記録にも残るため、チャットでのやり取りを関係者全員での情報共有にも利用することができます。
2-2.工程管理・進捗管理機能
施工管理システムの中心的機能の1つともいえるのが、この工程管理と進捗管理機能です。スケジュール通りに工事を進めて進めていくためには、常に工程の進捗状況を把握しておく必要があり、システムへ登録することで組織内での状況共有も速やかに行うことができます。
●ガントチャート、タスク管理
工事の全体スケジュールをガントチャート形式で可視化すると作業ごとの所用期間と実際の期間をわかり易く管理することができます。これらはリアルタイムに更新できるため、遅延が発生しそうな箇所を早期に発見し、管理者が速やかに対策を講じるといった利用方法も可能です。
●リアルタイムでの進捗把握
このリアルタイムで進捗把握ができることは、現場の担当者が直接現場で作業状況をシステムへ入力することで、作業の完了や未完了を事務所にいながらでも把握することができます。いちいち事務所から現場の責任者に電話をして、現場責任者が今度は現場担当者へ進捗確認して、その逆の流れで現在の進捗を共有するといった手間と時間を削減することができます。
2-3.原価管理・予算管理機能
原価管理や予算管理も施工管理システムの中心的機能の1つです。自社の利益を確保するためには、工事原価を正確に把握・管理していくことが不可欠となります。
●予算と実績の比較
工事開始前にあらかじめ設定した予算と、実際にかかった費用(労務費、資材費など)をシステム上で比較できます。これにより、予算超過の兆候も早期にキャッチすることができ、対応を検討することも可能です。
●発注・請求管理
資材の発注業務や顧客への請求業務もシステム上で行うことができます。発注書や請求書を作成する機能もあり、経理業務も施工管理システムを活用しながら行うこともできます。
2-4.書類作成・管理機能
煩雑な報告書や各種台帳の作成や管理を施工管理システムを利用することで、手間を減らし効率的に行っていくことが可能です。
●日報、報告書の作成
現場での作業内容や進捗状況を、スマートフォンやタブレットから簡単に日報として入力できます。事務所に戻ってパソコンへ向かい入力するといったスタイルから現場のモバイルPCやスマートフォンから入力し会社へ帰社するこなく日報報告を行うことができます。また作業工数や労務費も入力するだけでシステムが自動で集計を行うことができるので集計を行う手間も削減することができます。
3.施工管理システムを利用するメリット
ここでは施工管理システムを利用するメリットをご案内いたします。
3-1.業務効率化と生産性向上
最大のメリットはやはり日々の仕事を効率化できる点にあります。現場で撮影した写真をシステムにアップロードするだけで、簡単に日報の作成ができることはもちろんのこと、作業工程の進捗を入力するとガントチャートが作成・更新されたり、原価入力を行うことでリアルタイムでの予算管理も行うことができます。しかもこれらのシステム入力業務は、事務所に戻ってからするのではなく現場でモバイルPCやスマートフォンを使って行うことができ、現場での本来の業務により時間を割くことができます。
また1つのシステムで情報共有から工程管理、予算管理まで様々な業務が行えるため、データの二度打ちといった手間も削減することができます。これも生産性を向上させる手段の1つになっています。
3-2.コスト削減や利益率の改善
コスト管理も施工管理システム上でリアルタイムに行えるため利益率を把握したうえで改善を検討することも可能です。システム上では予算と実績を比較することが可能ですのでコスト超過による赤字リスクを早期に発見することも可能です。資材発注や作業を見直しするといったことも施工管理システムから出てきたデータをもとにして即座に判断することができます。これにより利益率の改善を図っていくことが可能です。
3-3.情報共有の円滑化
建設現場で使う図面や指示書が更新された場合も、施工管理システムへアップロードすれば全員が常に最新版を共有することができます。メールの添付ファイルで送っている場合は、受信トレイに届くため日々メールを受信していると受信数が膨大になり、埋もれてしまったり、過去の図面と取り違えてしまったりといったことが起こってしまいます。単に図面だけでなく、このほかにも変更箇所であったり、現場での問題点、安全管理上の注意喚起情報などもリアルタイムに共有することが可能です。
3-4.働き方改革と人材不足への対応
建設業界は日本で一番人材不足に直面している業界と言っても過言ではありません。施工管理システムを使うことで建設業の業務を省力化していくことができるので人材不足への対応に活用することもできます。
施工管理の様々な業務をシステム上で行うため従来あったような二度打ちを削減でき、さらに打ち込んだ数値もシステム上の機能で自動集計することができます。また、これらの業務は事務所ではなく現場でモバイルPCやスマートフォンから行うことができるため、事務所に戻って行う作業時間も省くことができます。直行直帰やリモートでの業務が可能になるので、業務時間の短縮効果以外にも柔軟な働き方を実現することもできるため、労働環境の改善し採用面の効果も上げることができるのではないでしょうか。
4.施工管理システムを選ぶポイント
ここでは施工管理システムを選ぶポイントについてご案内いたします。
4-1.自社の業務フローと近いシステムであるか
クラウド型の施工管理システムであれば基本的には機能がパッケージに詰め込まれているため自社の業務フローに近いものを選んでいく必要もあります。やはりクラウド型は一部は自社の業務をシステムに合わせる必要が出てきますので導入前には必ず複数のサービスを比較検討することをおすすめいたします。
システムのカスタマイズを視野に入れる場合は、比較的初期費用がかかりますがオンプレミス型の施工管理システムを検討することも可能です。自由度もある程度はあるため費用もかさむ場合もありますが、複雑な業務フローがある場合などはオンプレミス型の施工管理システムが解決策になるかもしれません。
4-2.操作性・サポート体制
操作性の面ではパソコン以外にもスマートフォンやタブレットでの操作についても使いやすさを確認しておくことをおすすめいたします。施工管理システムは日常の現場でスタッフが使うため、タブレットであればどれくらい使えるものか、スマートフォンであれば実用に耐えうるものなのかなど調べておく必要があります。その際、画面が見やすく、直感的に操作できるシステムであることも重要です。この点は、ITツールに慣れていても、不慣れであっても、入力のスムーズ感が違ってくるポイントですので、体験版などがあればぜひ使って比較することをお勧めいたします。
また、導入前後のサポート体制についても、電話サポートがあるかなど運用中の問い合わせに対応についてもどのような方法で可能か確認することをおすすめいたします。電話のほかにもメール、チャットなど、複数の方法でサポートが受けられるかや、出張サポートがあるかも調べておくことをおすすめいたします。
4-3.費用対効果
施工管理システムは業務をスムーズに行うためのシステムであるため、それ自体が利益を増やすといった効果はありません。なお利益管理をシステムを活用してうまく行って行くことで利益を増やしていくことは可能です。こういった特性があるため、システムの比較をする際には、料金体系の比較もしっかりと行うことをおすすめいたします。特にクラウド型の施工管理システムでは、月額制でユーザー数や機能に応じて料金が変わる場合が多いため、自社の利用規模に合わせた費用を事前に年単位でシミュレーションすることが大切です。クラウド型は大人数で何年も利用していくと比較的コストがかさむ場合があります。
4-4.セキュリティ対策
施工管理システムには機密性の高い図面など、重要なデータをシステム上で管理することになります。そのため、アクセス権限の設定などデータの安全を守るためのセキュリティ対策が講じられているかも確認する必要があります。
5.代表的な施工管理システムのご案内
ここでは代表的な施工管理システムのご案内いたします。
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