近年、働き方改革やリモートワークの普及により、社内コミュニケーションのデジタル化が急速に進んでいます。非対面での業務機会が増えた中、社内コミュニケーションツールの導入は、もはや企業の成長に欠かせない要素となっています。この記事を読めば、代表的なサービスの特徴をつかめ、自社の目的にあったものを絞り込めるようになります。上司や社内への提案や業者への情報収集にぜひ使ってみてください。
1. なぜ今、社内コミュニケーションツールが必要なのか?
コロナや働き方改革を経て、様々な職種でモバイルPCやスマホ、WEB会議などITを活用し場所を選ばない働き方が広がっています。顔を合わせることが減りちょっとした意思疎通も希薄になりがちな昨今、オンラインの手段を積極に使って意思疎通を補おうとする企業が増えています。
1.1 意思疎通の不足が招く問題点
職場でのコミュニケーション不足は、様々な組織の問題を引き起こす原因となっています。仕事自体の意思疎通も大切ですが、職場生活の意思疎通ももちろん大切です。職場でのコミュニケーション不足が招く代表的な問題を3つ紹介します。
1つ目は、情報共有の遅れによる業務効率の低下です。必要な情報が必要な人に届かず、作業の手戻りや重複が発生してしまいます。
2つ目は、チームワークの低下です。対面でのやり取りする機会が減少することで、チームの連携が悪化し、プロジェクトの進行に支障をきたす可能性があります。
3つ目は、社員のモチベーション低下です。孤立感や疎外感を感じる社員が増え、結果として離職率の上昇につながることもあります。
1.2 社内コミュニケーションツール導入のメリット
まず、即時での情報共有が可能になります。チャットやビデオ会議を利用して、物理的な距離を超えた即時の意思疎通が実現できます。社内にかかってきたお客様からの電話内容を、外出中の営業社員へチャットで伝えることも簡単です。
次に、情報の一元管理ができるようになります。例えば、社員のスケジュール管理から、お客様へ送付する見積書まで様々な情報を一元管理することができます。社員は一か所を見れば情報へ行き着くことができるので、情報へのアクセスの利便性が高まります。
さらに、意思疎通のしやすさは、チームの一体感が醸成させる効果もあります。今までは口頭で話していたことも、別々の場所にいてもチャットで気軽に相談や雑談ができるようになります。
また、業務や連絡の効率化も期待でき、WEBでの会議や報告なら従来より速く高頻度にすることもできます。社内コミュニケーションツールを起点にペーパーレス化、意思決定の迅速化など、様々な面で効率化が図れます。
2. ツールの種類・特徴・代表的なサービス
ここでは代表的なサービスをビジネスチャット、グループウェア、社内SNS、Web会議システムごとにをご紹介します。
2.1 ビジネスチャット:迅速な情報共有と活発なやり取り(Chatwork/Microsoft Teams/Slack)
ビジネスチャットは、リアルタイムな情報共有に最適です。チャット形式で気軽に意思疎通を図り、迅速な意思決定もサポートします。
Chatworkは、シンプルな操作性でITに不慣れな方も含め使いやすいのが特徴です。タスク管理も搭載しています。情報共有とタスク管理を効率化します。
Microsoft Teamsは、Office製品との連携が強みです。例えばチャットにWord、Excel、PowerPointを埋め込んでチャットメンバーで共同編集することもできます。もちろんWeb会議も搭載しており会議中でもチャットはもちろん共同編集も可能です。
Slackは、多機能なチャットが人気のツールです。多くのツールと連携できることがウリで例えばGoogleカレンダーと連携させるとSlackへ予定を通知させることもできます。カスタマイズ性も高く、自社に合わせた設定が可能です。
2.2 グループウェア:組織全体の情報共有と業務効率化(Google Workspace/Microsoft 365/サイボウズ Garoon)
グループウェアは、スケジュール管理や文書管理など、業務に必要な機能を統合したものです。
GoogleWorkspaceは、Gmail、Googleドキュメント、スプレッドシート、Googleカレンダーなどが利用できます。複数人での共同作業もスムーズに行えます。
Microsoft365は、Microsoft Officeのクラウド版です。Word、Excel、PowerPoint、Outlookなどが利用できます。慣れ親しんだオフィスソフトで共同編集ができたり、ファイル共有も可能です。Teamsと連携するWEB会議でもオフィスソフトが使えてさらに便利です。
サイボウズGaroonは、日本企業に合わせたグループウェアです。スケジュール管理、ワークフロー、掲示板などの機能があります。組織全体の情報共有が得意です。
2.3 社内SNS:社員間の交流促進と組織文化の醸成(Talknote/Microsoft Viva Engage)
社内SNSは、フォーマルなコミュニケーションだけでなく、気軽に情報発信できるカジュアルな場を提供します。
Talknoteは、ノートやメッセージ、タスク、タイムラインといった機能を使い、日々のやり取りを共有・蓄積していきます。コミュニケーションをデータ化することで社員の働きすぎを検知する機能もあります。
Microsoft Viva Engageは、マイクロソフトの社内SNSで、従業員が会話形式の投稿、動画、写真などを掲載できるようになっています。機能的にはTeamsと似ていますが、VivaEngageは多数の相手へ気軽に発言できるのが特徴です。
2.4 Web会議システム:場所を選ばないオンラインでのミーティング(Zoom/Google Meet/Microsoft Teams)
Web会議システムは、コロナ禍に急速な利用が進み、もはやなくてはならないサービスになっています。
Zoomは、言わずと知れたWeb会議システムで多くの企業で利用されています。ウェビナー開催にも対応しています。
Google Meetは、Google Workspaceに含まれるWeb会議システムです。GmailやGoogleカレンダーとの連携がスムーズでGoogleカレンダーで予定を作ると自動でGoogleMeetの会議URLも作成され手軽にWeb会議も可能です。
Microsoft Teamsは、WEB会議中にチャットはもちろんのことMicrosoft365と同時に使うとオフィスソフトの共同編集もできる事が強みです。普段の業務でオフィスソフトを多用する組織でしたら導入効果は高いと言えます。
2.5 各ツールの比較表(目的・使い方・機能・サポートなど)
ツール名 | 目的 | 主な使い方 | 主な機能 | サポート |
Chatwork | シンプルな情報共有、タスク管理 | チャット、タスク管理、ファイル共有 | チャット、タスク管理、ファイル共有、ビデオ通話 | メール、ヘルプセンター、導入支援サービス |
Microsoft Teams | 情報共有、共同作業、Web会議 | チームでのチャット、ファイル共有、Web会議、Officeアプリ連携 | チャット、Web会議、ファイル共有、Officeアプリ連携、タスク管理 | メール、電話、オンラインドキュメント、導入支援サービス |
Slack | 迅速な情報共有、業務効率化 | チームでのチャット、ファイル共有、タスク管理 | チャンネル、ダイレクトメッセージ、アプリ連携、ワークフロー自動化 | メール、ヘルプセンター、導入支援サービス |
Google Workspace | 情報共有、共同作業、業務効率化 | メール、ドキュメント作成、スケジュール管理、Web会議 | Gmail、Googleドキュメント、Googleスプレッドシート、Googleカレンダー、Google Meet | メール、オンラインドキュメント、導入支援サービス |
Microsoft 365 | 情報共有、共同作業、業務効率化 | ドキュメント作成、表計算、プレゼンテーション、メール、スケジュール管理 | Word、Excel、PowerPoint、Outlook、OneDrive、Teams | メール、電話、オンラインドキュメント、導入支援サービス |
サイボウズ Garoon | 組織全体の情報共有、業務効率化 | スケジュール管理、ワークフロー、掲示板、ファイル共有 | スケジュール管理、ワークフロー、掲示板、ファイル共有、ポータル | メール、電話、オンラインドキュメント、導入支援サービス |
Talknote | 社内SNS、組織改善 | 情報共有、コミュニケーション、従業員エンゲージメント向上 | タイムライン、グループ、メッセージ、フィードバック、従業員行動分析 | メール、ヘルプセンター、導入支援サービス |
Microsoft Viva Engage | 社内SNS、情報共有 | 情報共有、コミュニケーション、コミュニティ活動 | コミュニティ、会話、ファイル共有、Microsoft 365連携 | メール、オンラインドキュメント、導入支援サービス |
Zoom | Web会議 | オンライン会議、ウェビナー | Web会議、画面共有、録画、バーチャル背景 | ヘルプセンター、オンラインドキュメント、導入支援サービス |
Google Meet | Web会議 | オンライン会議 | Web会議、画面共有、録画、字幕 | ヘルプセンター、オンラインドキュメント、導入支援サービス |
3. 自社に最適なツールを選ぶための5つのステップ
ここではコミュニケーションツールを選ぶまでにすべきことを流れでご案内します。
3.1 ステップ1:現状の課題を明確にする
まず、現状の課題を明確にしましょう。 社内のコミュニケーションで何が問題かを把握します。 情報伝達が遅いのか、意思疎通が不足しているのか。 チームワークが弱いのか、従業員の孤立感があるのか。 具体的な課題を洗い出すことが重要です。
アンケートやヒアリングの実施もおすすめです。 従業員の意見からリアルなコミュニケーション課題が浮かび上がると、チャットの導入だけで済むのか、グループウェアを導入すると多くが解決しそうかが見えてくることがあります。 課題を可視化することで、ツール選びもしやすくなります。
また「情報共有が遅い」という課題があったとします。 可能ならその原因を深堀りしてみましょう。業務でも意見は人それぞれの場合もあり、 情報伝達経路が複雑なのか、今のツールが使いにくいのか、それともITスキル不足しているのかなど原因を深堀することで、より適切なツールを選べるようになります。
3.2 ステップ2:ツールの目的を定める
課題が明確になったら、導入するツールで何を実現したいのかを具体的に定めます。例えば「リアルタイムでの情報共有」「ペーパーレス化の推進」「社員間の交流促進」などです。
例えば、リアルタイムでの情報共有が目的なら、チャット機能やファイル共有機能が必要です。 社員間の交流促進が目的なら、社内SNS機能やWeb会議機能が役立ちます。 業務効率化が目的なら、タスク管理機能やワークフロー機能があると便利です。
3.3 ステップ3:必要な機能を洗い出す
目的に応じて必要な機能をリストアップします。以下の観点で検討しましょう。
・必須機能(絶対に必要な機能)
・あったら便利な機能(予算に応じて検討する機能)
・将来的に必要になる可能性がある機能
一般的な機能を例示すると、ビジネスチャットなら、チャット機能、ファイル共有機能、検索機能などが必要です。 グループウェアなら、スケジュール管理機能、ワークフロー機能、掲示板機能などが重要です。 社内SNSなら、タイムライン機能、グループ機能、メッセージ機能などが役立ちます。 Web会議システムなら、画面共有機能、録画機能、チャット機能などが特によく使われます。
またリストアップした機能に優先順位をつけることも重要です。 必須機能、推奨機能、あれば便利な機能などに分類します。 予算や導入工数に応じて、機能を絞り込むこともおすすめです。
3.4 ステップ4:導入形態を検討する
ツールの導入形態を検討しましょう。 クラウド型かオンプレミス型かを選択します。 それぞれのメリット・デメリットを理解しましょう。 自社の状況に合わせて、最適な導入形態を選びます。
クラウド型は、初期費用を抑えられます。 導入が容易で、外部からのリモートワークでも使いやすいです。ハードのメンテナンスや管理もベンダーに任せられます。 セキュリティ対策もベンダーが行ってくれます。
オンプレミス型は、自社で構築したサーバーで運用します。 セキュリティを重視する場合に適しています。 導入・運用コストが高くなる傾向があり、 専門知識を持つ人材も必要です。
クラウド型かオンプレミス型かはセキュリティポリシーや予算などを考慮して、導入形態を決定しましょう。 自社のニーズに合わせて、柔軟に選択できます。
3.5 ステップ5:無料トライアルを活用する
多くのサービスは無料トライアル期間を設けています。無料トライアルを活用して、操作はわかりやすいか、機能は十分か、サポート体制は充実しているかなど確認することをおすすめいたします。またトライアル時は、実際の利用シーンを想定した複数人で使ったりファイルをアップロードしてみたりといったテストを行うことも重要です。
4. 導入後の活用と定着化のポイント
ここでは導入時の注意点や、定着化のための施策をご紹介します。
4.1 導入時の注意点
社内コミュニケーションツールの導入を成功させるためには、以下の点に注意が必要です。
・段階的な導入
社員の習熟度に心配がある場合は、一度に全機能を導入するのではなく、基本的な機能から使い始めて徐々に機能を拡大することも1つの方法です。
・マニュアルの整備
グループウェアなどは、基本的な操作方法や利用ルールをまとめたマニュアルを作成することもおすすめです。画面キャプチャを多用し、分かりやすい内容を心がけましょう。
・キーパーソンの選定
可能ならば各部署にツールの活用推進役となるキーパーソンの設置も検討しましょう。部署内のコミュニケーションツール運用リーダーとして操作方法の一次相談窓口として機能できれば解決の時間が省けます。
・研修の実施
必要でしたら基本的な操作方法や活用事例を共有する研修を実施しましょう。オンラインでの実施もできると思います。
4.2 定着化のための施策
ツールを定着させるために、以下のような施策も検討できます。
・活用事例の共有
社内の効果的な使用方法や成功事例を定期配信します。社内での活用が進んでいる部署の事例を紹介するのも効果的です。
・経営層の積極的な利用
経営層自らがツールを活用し、自身からの発言や情報をコミュニケーションツールで発信することで、傘下の社員にコミュニケーションツールを触れる機会を増やし利用促進します。
・定期的なフィードバック収集
利用状況や改善要望を定期的に収集し、必要に応じて利用ルールやツールの設定を見直します。
・活用度の可視化
部署ごとの利用状況を可視化し、活用が進んでいない部署へのサポートを強化します。
5. まとめ:コミュニケーションツールで組織の成長を加速
社内コミュニケーションツールは、組織の成長のためにも重要です。 その組織にあった適切なツールを選び、効果的に活用することで、組織の活性化に繋がります。 情報共有の迅速化、コミュニケーションの活性化、業務効率化、組織文化の醸成など、様々な効果が期待できます。以下に導入目的ごとのおすすめツールを一覧表にしました。自社の目的にあったツールを絞り込んで、上司や社内への提案や業者への情報収集にぜひ活用してみてください。
目的 | おすすめツール | 理由 |
迅速な情報共有と意思決定の加速 | Microsoft Teams,Slack | リアルタイムでのチャットやビデオ会議などコミュニケーションができ、豊富な連携機能で業務の情報も集められ、迅速な意思決定がしやすい。 |
組織全体の情報共有と業務効率化 | Google Workspace, Microsoft 365, サイボウズ Garoon | スケジュール管理、ファイル共有など、組織全体で必要な機能が充実。 |
社員間の交流促進と組織文化の醸成 | Talknote, Microsoft Viva Engage | 社内SNSとして活用でき、気軽にコミュニケーションを取れる環境を提供。 |
リモートワーク環境での円滑なコミュニケーション | Zoom, Google Meet, Microsoft Teams | Web会議機能が充実しており、場所を選ばずにコミュニケーションが可能。 |
シンプルな情報共有とタスク管理 | Chatwork | シンプルな操作性で誰でも簡単に使いこなせる。タスク管理機能も搭載。 |
既存のMicrosoft製品との連携を重視する | Microsoft Teams, Microsoft 365, Microsoft Viva Engage | Office製品との連携がスムーズで、既存の環境を活かせる。 |
情報共有の徹底と従業員エンゲージメント向上 | Talknote | 従業員の行動分析機能により、組織課題の発見と改善に貢献。 |
日本企業に合わせたグループウェアを求める場合 | サイボウズ Garoon | 日本企業特有の業務プロセスや文化に合わせた機能が充実。 |
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