建設業での勤怠管理について、正確な労働時間を確実に把握したいけれど手作業の勤怠管理のためタイムリーに把握ができない課題をお持ちの労務管理担当者の方もいらっしゃるのは無いでしょうか。昨今法令が改正され建設業でも残業時間や休日出勤日数の上限が新たに定められました。これらの範囲で勤怠管理を行っていくためには勤怠管理システムの導入が有効です。ここでは勤怠を課題に持つ建設会社の労務管理担当の方に向けて、建設業に勤怠管理システムを導入すると解決できる課題や、システムの機能、導入で得られるメリット・デメリットをご案内します。この記事を読んでぜひ勤怠管理システムの導入に向けて、システムの選定に進んでみてください。
1.建設業に必要な勤怠管理とは
ここでは、建設業に必要な勤怠管理とはや、勤怠管理システムを利用した建設業での勤怠管理の運用方法をご案内します。
1-1.そもそも建設業に必要となる勤怠管理とは
建設業では、多くの現場業務が発生することから客観的な勤怠の管理や把握がしずらいことと、それに伴う長時間労働が見過ごされがちな課題があります。そのような中でも現在の建設業では、他の産業と同様に時間外労働の上限が月に45時間でかつ年360時間以内という労働基準法の規制が適用されています。それ以上の労働が必要となる場合についても、年720時間、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)、月100時間未満(休日労働を含む)という、36協定で労使で特別な合意がある場合に許される上限を建設業も守らなくてはなりません。以前まで建設業では、36協定による残業の上限を自由に決めることができていましたが現在は廃止され他の産業と同様な勤怠管理が求められています。
1-2.建設業での勤怠管理の運用方法
建設業で正確な勤怠管理を行っていく方法としては、エクセルや紙など手作業が発生する勤怠管理をやめて、勤怠管理システムを導入して運用する方法があります。
勤怠管理システムは、出勤時間や退勤時間、残業申請といった勤怠の記録をシステムを利用して行うものです。勤怠管理システムを導入すると、例えば建設業の現場へ出勤した従業員が自分のスマートフォンを使って出勤時間や退勤時間の打刻を行うこともできます。現場に出ていても自分自身が自分のスマートフォンで記録をするため正確な記録を残すことができます。勤務時間はその場でオンライン記録されるため、労務管理担当者もリアルタイムで出勤者の打刻状況を確認することもできます。
また打刻の方法には、SuicaやPASMOといった従業員のICカードを使い打刻をする方法や、スマホのGPSを使った位置情報を活用した打刻などもあります。
エクセルや紙など手作業で勤怠の記録を行っていると法令の範囲で行っているかの確認や、現在までの労働時間などを把握することに集計の手間がかかったり時間を要してしまいます。そのため、36協定の残業時間や休日労働の上限の制限下で勤怠管理を行っていくには、勤怠管理システムを利用することで、従業員ごとの最新の勤怠状況を知ることができ、36協定の範囲での勤怠管理につなげていくことができます。
2.建設業に勤怠管理システムを導入して解決できる課題
ここでは、建設業に勤怠管理システムを導入して解決できる課題をご案内します。
2-1.勤務時間の正確な管理が可能になる
勤怠管理を電子化することで従業員一人ひとりの労働時間を簡単に把握することができるようになります。エクセルで手作業を行って集計というのは毎日行うのもあまり現実的ではないかもしれませんが、勤怠管理システムではリアルタイムにその月の累計労働時間であったり累計残業時間を自動計算することができます。このため残業を行うかの判断についても最新の残業時間を確認しながら行うことができます。
2-2.人事労務担当者の集計工数を削減できる
紙の出勤簿やタイムカードを使って勤怠管理をしている場合は、従業員一人ひとりの労働時間、出勤日数を手作業やエクセルで計算する必要がありました。勤怠管理システムを導入すると、人事労務担当者による集計は不要で、従業員ごとの労働時間や出勤日数は勤怠管理システムが自動で従業員が打刻した日時を基に計算します。また勤怠管理システムでは休暇等の申請も可能です。有給休暇であったり、無給休暇、早退、遅刻、欠勤などの処理も行うことができます。そのため勤怠の月締め処理も、従業員自身が打刻や申請の漏れを解消して従業員自身で締めを行うことができます。
2-3.勤怠の不正を防止できる
勤怠管理システムには、打刻の不正を防止する機能が付いているものがあります。具体的な不正を防止する打刻方法としてはスマートフォンの位置情報を利用して従業員が打刻を行う方法があります。あらかじめ労務管理者が勤怠管理システム上で従業員ごとに打刻場所を指定します。
従業員は、現場に行ってスマートフォンで打刻をする際に、勤怠管理システムが従業員のスマートフォンの現在位置の情報と、あらかじめ勤怠管理システムに登録された勤務場所が一致した際に打刻ができる、というものです。
もう1つの位置情報を利用した打刻方法は、打刻を行う際に位置情報の確認を行うのではなく、現在の位置情報を時刻と共に記録するものです。勤務場所が変わりやすい場合などにもおすすめの打刻方法です。
ちなみにスマートフォンで位置情報のチェックや記録を行わずに打刻だけすることも可能です。
2-4.シフト管理も行うことができる
勤怠管理システム上では従業員の勤務シフトを管理することもできます。シフトは申請や承認機能があり、実勤務と予定スケジュールを比較して実出勤での差異もシステム上で確認することができます。エクセルで行うと煩雑になりがちなシフト管理を勤怠管理システム上で効率的に行っていくことができます。
2-5.日報の報告も同時に行うことができる
建設業に特化した勤怠管理システムの中には、勤怠管理機能のほかに日報の入力機能を備えているものもあります。日報報告を行う従業員は、事務所に戻ることなく勤怠管理システム上で日報を入力することができます。事務的な業務も勤怠と同時にできるため事務所に戻るのにくらべ労働時間を短縮することができます。この日報が未提出の場合はメールで催促を行うこともできます。
2-6.労務費の集計も行うことができる
こちらも建設業に特化した勤怠管理システムにはなりますが、労務費の管理も勤怠管理システム上で行うことができます。労務費の管理もペーパレス化できるため事務所へ戻って業務を行う頻度も下げていくことが可能です。
3.勤怠管理システムの機能
ここでは勤怠管理システムの機能をご案内します。
3-1.出勤・退勤などの打刻機能
打刻機能は勤怠管理システムで最もよく使う機能です。打刻の種類は、タイムカードでの打刻などと同様に出勤・退勤・休憩などがあります。
また、打刻の方法は勤怠管理システムの特徴として様々なものが開発されています。スマートフォンやPCで行ったり、SuicaやPASMOなどのICカードをかざして行うもの、従業員の指紋を使って行うもの、従業員の顔認証を行うものなど、最新の技術も使いながら正確に便利な打刻方法が用意されています。
3-2.休暇の申請機能
勤怠管理システムでは、日々の打刻はもちろんのこと、休暇の申請も行うことができます。基本的には就業規則にある有給や無給の休暇はシステム上で申請・承認を行うことができます。従業員が勤怠管理システム上で申請をして、管理職が勤怠管理システム上で承認を行います。
3-3.勤務時間・勤務日数・休暇日数の自動集計機能
毎月の勤務時間や勤務日数、休暇日数を勤怠管理システムで自動集計でき、手作業やエクセルなどで計算を行う手間を省くことができます。自動集計された従業員ごとの勤怠データはそのまま給与計算にも利用できます。勤怠管理システムと給与計算システムをつなげて、従業員ごとの労働時間や有給・無給休暇日数を自動で流し込むこともできます。この場合は、勤務時間や休暇日数を手打ちすることが無いため打ち間違えを無くすことができます。
このほかにもシステムをつなげず、勤怠管理システムで従業員ごとの労働時間や有給・無給休暇日数を表示させ、給与計算システムへ従業員ごとの勤務日数や休暇日数を打ち込んで行う方法もあります。
3-4.日報や労務費の入力機能
日毎に行う作業内容の報告も勤怠管理システム上で行うことができます。日報にはその日の作業内容であったり労務費も入力することが可能です。
また日報の入力も勤怠システム上で行うため、従来のエクセルに記入してメールで送信する日報よりも日報作成の手間を削減できます。そのため日報の回収率もエクセルで運用している時よりも向上させることができます。
これら日報や労務費の入力は建設業に特化した勤怠管理システムで採用されています。
3-5.スマートフォンの位置情報を利用した打刻機能
勤怠管理システムを導入した場合は、スマートフォンでGPSの位置情報を使い、打刻を行う従業員が現場にいるか確認することができます。打刻を電子化すると、どこで打刻を行ったか見えない問題がありますが、このGPSの位置情報を使った打刻機能を利用することで、現場で打刻を行っていることを確認することができます。なお位置情報を利用した打刻は2つの打刻方法があります。位置情報を使用した打刻には対応していない勤怠管理システムもあります。
1つ目は、打刻した場所を記録だけするタイプのものです。スマートフォンで打刻時に現在の位置情報を取得して勤怠管理システムに時刻と共に場所を記録するものです。比較的勤務場所が変わりやすいケースはこの方法を採ると打刻は毎回できるため効率的です。必要に応じて後から勤怠管理システム上で勤務場所をチェックすることも可能です。
2つ目は、あらかじめ労務管理者が指定された場所でのみ打刻ができるタイプです。
勤怠管理システムに従業員ごとの勤務場所を設定すると、従業員は管理者が指定した勤務場所へ実際に行った時にだけスマートフォンで打刻することができます。勤務場所が頻繁に変わらない従業員に対しては有効な打刻方法です。頻繁に変わると変わる都度出勤場所を登録する必要があり、これが漏れると従業員は打刻ができなくなってしまいます。
4.メリット
ここでは建設業に勤怠管理システムを導入することで得られるメリットをご案内します。
4-1.正確な労働時間を把握できることで長時間労働の抑制につなげていくことができる
建設業では2024年4月よりそれまでは無かった残業時間等の上限が設定されました。制度の趣旨は労働者の健康のために長時間労働を抑制していくことですが、そのためにも正確な労働時間を把握することが長時間労働を抑制していくための第一歩です。
従来建設業では比較的手作業での勤怠管理が多かったようですが、手作業による勤怠管理だとどうしても最新の累積残業時間であったり休日出勤日数も集計に時間がかかります。現在は法令の範囲での残業時間に収めないといけないため、残業の管理も最新の残業時間を確認して行っていく必要があります。勤怠管理システムを導入することで最新の勤怠が確認でき、法令を守り、長時間労働を抑制していく管理をしやすくすることができます。
5.デメリット
ここでは建設業に勤怠管理システムを導入することのデメリットをご案内します。
5-1.コストがかかる
基本的に勤怠管理システムは、システムを利用する従業員1人につき月額●●●円といった料金体系を取っているケースが一般的です。別に初期費用や月額基本料がかかる場合もあります。
これまで手作業での勤怠管理を行っていた場合は、この勤怠管理システムの導入は全く新しい経費がかかってくるため会社の理解を得にくい場合もあります。そのような場合は、法令順守していくためにはスピーディーに残業時間などの勤怠情報を把握する必要があること、日報の入力もスピーディーに行えること、給与計算のために必要になる従業員一人ひとりの労働時間・日数計算も自動で行い省力化できることなど、社内全体の労務管理に活用できることを説得材料にしてみてはいかがでしょうか。
6.主な勤怠管理システムのご案内
ここでは主な勤怠管理システムをご案内します。
区分 | サービス名 | 提供元 |
建設業特化型の勤怠管理システム | 使えるくらうど建設勤怠 | アサクラソフト株式会社 |
UC+キンタイ for PROCES.S | 株式会社内田洋行ITソリューションズ | |
勤怠管理パック(建設業編) | 株式会社リコー | |
汎用型の勤怠管理システム | マネーフォワード クラウド勤怠 | |
KING OF TIME | 株式会社ヒューマンテクノロジーズ | |
クラウザ | アマノ株式会社 | |
ガルフCSM勤怠管理 | 株式会社ガルフネット |
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