社内で契約書に関する課題や改善の意見が出てくることもあるのではないでしょうか。例えば法務担当の方は、社内の各部門と行う契約書の審査のやり取りの往復が煩雑であったり、申請を上げる社員の方も慣れずに必要な情報を添付し忘れてしまったりという課題もあるのではないでしょうか。ここでは契約管理をワードやメールで行っている企業の法務担当の方や情報システムや総務担当の方に向けて、契約管理システムを導入することで解決できる課題やメリット、デメリットをご案内します。ぜひこの記事を読んで契約業務を効率化できる契約管理システムの導入に向けて、システムの選定に進んでみてください。
1.契約管理システムとは
ここではそもそも契約管理システムはどういったものかや、契約管理システムの種類についてご案内します。
1-1.そもそも契約管理システムとは
そもそも契約管理システムとは、自社が取り交わす契約書に対して発生する業務を効率的に行うためのものです。契約書には、他社との間で締結する販売や仕入にまつわる契約書であったり、これから入社する社員との間で締結する雇用契約書など、会社で締結する契約書全般を含むことができます。これらは契約書を交わしたい社内の各部門と法務部門との間で確認を進めながら締結していくことが一般的です。そのやり取りは契約書案の修正を繰り返したりと結構煩雑なため、契約管理システムを導入して効率化することができます。契約管理システムではこのほかにも作成した契約書を電子契約書として相手先に送信して締結する機能であったり、契約書をシステム上で保存する機能があります。このように契約管理システムでは、社内の契約書に関する業務を一元化して便利に遂行していくことができます。
1-2.契約管理システムの種類
契約管理システムには、クラウド型とオンプレミス型の2つがあります。クラウド型は、サーバーの導入などが不要で、ITの専門がなくてもインターネット上からすぐにシステムを利用することができます。クラウド型では決まった機能をカスタマイズせずに利用することになりますが、今のクラウド型契約管理システムには電子契約書の送信機能など様々な機能が含まれているため、通常はクラウド型の契約管理システムを導入すれば多くのことは解決できるのではないでしょうか。オンプレミス型はシステムのカスタマイズが可能ですがサーバーの用意も必要になってきます。
・主なクラウド型の契約管理システム
マネーフォワードクラウド契約、ContractS CLM、Hubble
・主なオンプレミス型の契約管理システム
契約書管理 powered by NAZCA5 EDM
2.契約管理システムの導入で解決できる課題
ここでは契約管理システムを導入して解決できる課題をご案内します。
2-1.契約書作成のための部署間のやり取りを効率化できる
従来の契約書締結までに必要な社内のやり取りは、電子化していたとしてもワードで契約書の原案を作成して、メールで社内の審査担当へ送信し、法務担当が修正を行い、再びメールで戻して起案者へ確認、というような処理が多かったのではないでしょうか。
契約管理システムを導入し社内で契約関連の業務を一元管理すると、テンプレートを使った契約書の作成であったり、審査依頼の送信など、あらかじめ定めたワークフローに沿って各自が業務を行うことができ、契約に関する業務を効率化することができます。
2-2.作成中契約書の自動バージョン管理ができ世代間違いの無い契約書作成が行える
契約書の修正を法務と起案者の間でメールでやり取りしていると、時々添付するファイルを取り違えて作成中の契約書の世代違いを起こしてしまうこともあります。契約管理システムを利用すると、いつ誰が修正を行ったか契約書のバージョンを自動で管理することができます。この機能は、契約管理システム上でワードの機能を起動して契約書を修正して上書き保存することで世代管理を行います。
2-3.契約についてのガバナンスやリスク管理を強化できる
自社が締結した契約書を電子・紙ともに契約管理システム上で一括管理できるため、契約に関するガバナンス強化やリスク管理を行っていくことができます。紙で行った契約書についても、契約期間やステータスを設定することができるため、電子同様に契約書の抽出や内容確認をシステム上で行うことができます。
また契約期間が終了した契約書も保管しておくこともできるため、契約期間が終わっても守秘義務が残っている契約などを引き続き管理しておくことも可能です。
2-4.取り交わした契約の検索が可能になる
従来の紙の契約書の場合は、契約書をバインダーにとじてキャビネットに保管して、もし締結済みの契約書の内容を確認したいことが起こった際は、バインダーの中から契約書を見つけて、という具合に契約書のと検索に手間と時間がかかっていました。
契約管理システムを導入することで、電子契約書については条文まで検索することができきます。また、スキャンしてPDF化した契約書についてもPDFをシステムへ登録する際に契約書名や期間などを同時に登録できるため紙の契約書についても本文を除き簡易的に検索することができます。
3.契約管理システムの機能
ここでは契約管理システムの主な機能をご案内します。
3-1.テンプレートを使った契約書の作成機能
新たな契約書の作成を手軽に行えるようテンプレート機能が用意されています。運用開始前に初期設定をする必要があり、ワードファイルの契約書を契約管理システムへ事前登録したり入力欄の設定を行います。初期設定が済むと、テンプレートを使って契約書を作成することができるようになります。もちろんテンプレートは複数登録できるので、秘密保持契約書から採用・雇用関係の契約書をはじめ仕入や販売の契約まで幅広く契約書の作成を行うことができます。
3-2.法務への審査依頼機能
契約管理システムで作成した契約書は、そのまま社内の法務部門へレビューを依頼することができます。法務部門の審査担当はレビュー依頼の通知が来るので、システム上で契約書の内容を確認してコメントを残すことができます。
3-3.契約の電子締結機能
作成した契約書は、自社と相手方との間で契約を電子締結することができます。契約管理システム上で相手方のメールアドレスを入力するとセキュリティに配慮した形で契約の電子締結手続きを行うメールを送ることができます。電子契約書には電子署名とタイムスタンプ機能が組み込まれており、いつ誰が同意したかという情報を電子契約に付与することができます。
3-4.契約書の台帳作成が可能
契約管理システムでは作成した契約書の台帳を作成することができます。これにより自社が現在どういった契約書を締結しているか速やかに確認することができます。また契約書ごとの契約期間や契約書の状況(締結済みや失効、契約手続き中等)を確認することもできます。
3-5.申請から承認までのワークフロー機能
契約管理システムでは契約書の作成から承認、保管まで、一連の業務を行うことができますが、ワークフロー機能を使って自社の組織に合わせた承認ルートを用意して運用することができます。
3-6.契約期限のリマインダー機能
契約書ごとに契約期間の期限を設定すると、例えば条文内の契約終了時期や自動更新時期にあわせてリマインダーを稼働させることができます。設定した時期にリマインダーが稼働するとメールでアラートを受信することができます。
3-7.自社以外のアクセスを制限する機能
不正な契約管理システムへのアクセスを防ぐために、自社以外の端末からはアクセスできなくする機能も用意されています。自社でインターネットアクセスに使っているグローバルIPアドレスを契約管理システムに登録することで、自社以外のIPアドレスからは管理画面にアクセスできないよう設定することもできます。
3-8.契約書に対する検索機能
契約管理システム内の契約書に対して、文字検索を行うことが可能です。そのため、締約済の契約書にあの条文はどう書かれていたのか、などを確認したい際には手軽に検索して確認することができます。なお検索は法務とやり取りを行った際のコメントなども検索可能です。
3-9.紙の契約書の一元管理機能
既に自社で取り交わし済みの紙の契約書についても、スキャンしたPDFを契約管理システムへ登録することができます。このため、契約管理システムで作成して電子契約した契約書とあわせて、契約管理システム上で自社が取り交わした契約書を一元管理することができます。
4.メリット
ここでは契約管理システムの導入で得られるメリットをご案内します。
4-1.契約関連の業務の部署間情報共有がしやすくなる
契約書の作成や締結業務は、社内の法務部門と各部門との間で行われることが多いですが、システムを利用することで審査や修正業務の情報共有をしやすくすることができます。契約書のレビューや審査はワークフローにしたがって各部門から法務部門へ依頼することができるため、あらかじめ法務部門で必要になる項目はシステムへ申請部門に入力してもらうことで、法務部門は不備を減らした申請を受け付けることができます。また、コメントの記入や契約書の世代管理もシステムを使って行うことができるため、修正のやり取りも理解しやすくまたファイルの取り違えも防止しながら行うことができます。様々な部門と相対する法務部門でも、各部門とのやり取りを契約管理システムで行うことで、メールに契約書案を添付してやり取りする煩雑さから解放されより本来の審査・修正業務に集中することができます。
4-2.契約書の電子管理による紛失の防止効果がある
契約管理システムでは作成した契約書はシステム内に保管することができるため紛失の防止効果があります。クラウド型の契約管理システムであればバックアップも取られているためシステム障害に対する対策も取られています。物理的な紙で契約書を保存していると紛失してしまう恐れもあります。契約書の目録を作成していない場合は紛失したかどうかもはっきりしない場合があります。契約管理システムには紙の契約書をスキャンしたPDFをアップロードして保管する機能もあるため、契約管理システムの導入することで紛失リスクを抑えることができます。
5.デメリット
ここでは契約管理システムを導入することで生じるデメリットをご案内します。
5-1.コストがかかる
クラウド型の契約管理システムの場合には月額が、オンプレミス型の場合には初期費用のほか保守費等がかかってきます。クラウド型の費用体系は初期費用を抑えてシステムの利用人数に応じた月額料金が課金されることが主流です。オンプレミス型は反対にシステムの導入費の初期費用が大き目の金額でかかる場合が多いです。
コストが原因で契約管理システムの導入が進まない場合もあるかと思いますが、その際は、大人数で使わなければ比較的月額が安く済む、クラウド型の契約管理システムの導入で検討していくことをおすすめします。契約管理システムを導入すれば、法務部門には業務効率向上、申請する社内の各部門にもミスを減らせてスピードアップにつなげられる、そして会社にも契約書の管理が盤石になることでガバナンス強化のメリットをもたらすことができます。契約管理システムを導入すると社内全体に良い効果をもたらすことができることも導入に向けた材料になるのではないでしょうか。
6.代表的な契約管理システム
ここでは代表的な契約管理システムをいくつかご案内します。
区分 | システム名 | 提供元 |
クラウド型 | マネーフォワードクラウド契約 | 株式会社マネーフォワード |
ContractS CLM | ContractS株式会社 | |
Hubble | 株式会社Hubble | |
OLGA | GVA TECH株式会社 | |
Ofigo契約書管理 | 株式会社CIJ | |
TOKIUM契約管理 | 株式会社TOKIUM | |
オンプレミス型 | 契約書管理 powered by NAZCA5 EDM | 新明和ソフトテクノロジ株式会社 |
コメント