自社で持っているインターネットのドメインがいくつかあり、そのうち使っていないドメインもあるので経費削減にもなるので、できれば廃止したい・・・でも、その世界の専門家でもないのでどんな実害があるかわからず、イマイチ廃止に踏み切れない。そしてドメインを毎年更新し続けてしまう。そんなドメイン管理担当の方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、ドメインの廃止とはどのようなことか、廃止後にどうなる、廃止時の注意点、廃止時のトラブル事例などをご紹介します。それまでドメインを使っていたサイトの趣旨に応じて、廃止時期を決める目安やドメイン廃止時のリスクがわかりますので、ぜひ廃止時期を決定する際の参考にしてみてください。
1.ドメインの廃止とは
ここではそもそもドメインとはどのようなものか等を振り返った上で、ドメインの廃止とはどのようなものかをご案内いたします。
1-1.~おさらい~ドメインとはWEBサイトやメール用の「住所」のこと
ドメインとは、ホームページやメールで使われているWEB上の住所のようなものです。例えばこのサイト(情シスオンライン)のURLは https://jyosys.online/ ですが、ドメインは、jyosys.online になります。情シスオンラインの記事を読むには、jyosys.online という「住所」にブラウザでアクセスしてページを表示させ読む必要があります。
郵便物が住所あてに届くのと同じで、インターネットでもドメインあてにメールが届いたり、ドメインに向けてホームページを見に行く仕組みになっています。
ドメインとはWEBサイトやメールでいう自社の「住所」のようなものです。
1-2.そもそも、ドメインはどうやって利用開始するのか(購入するのか)
ここでは新しいサイトを立ち上げることになった場合を例にして、ドメインをどうやって取り、利用開始するのかを解説します。
- ドメインのレジストラのサイトを開く
レジストラとはお名前ドットコムなど、ドメインの発行手続きをできる会社のことです。レジストラだけに文字通りドメインの登記を有料で行ってくれる業者です。 - ドメインの空きを検索する
レジストラのサイト上では、空いているドメインを検索することができます。取得したいドメイン名を打ち込んで誰も取得しておらず空いていれば、そのままレジストラのサイト上で取得手続きが行えます。 - 取得手続きと支払いを行う
1つのドメインで安いもので一般的に数百円から数千円ほどかかります。取得後もドメインの費用は毎年かかることが一般的です。ドメインの取得費用や年度更新費用はレジストラごとに異なります。WEB上でクレジットカード情報を登録しておくと、年度ごとの支払いを自動で行うこともできます。会社のコーポレートカードを登録しておくと支払い忘れによるドメイン流出も防ぐことができます。この場合カードの有効期限が満了するタイミングで新しいカード情報を忘れずに入力し直す必要もあります。
1-3.ドメインの廃止とはどのようなことか
ドメインの廃止とは、それまで自社で使っていたドメインの利用をやめることです。ドメインは利用するために年額で数千円(安いものでは数百円)程度の利用料がかかります。使わなくなったインターネット上のドメインがある場合は解約することで、その年額で数千円のドメイン利用料を無くして行くことができます。ドメインの廃止を費用負担を無くすことができますが、もちろん廃止するのでそのドメインは利用できなくなります。
2.ドメインは意図的な廃止と、うっかりミスで廃止してしまう場合がある
ドメインを廃止する形態(理由)は主に2つあります。意図的に廃止するケースと、更新し忘れにより意図せず廃止されるケースがあります。
2-1.意図的にわかっていてドメインを廃止するケース
ドメインを利用する場合は、年間数千円程度の維持費用が掛かります。そのため、一度取得したドメインが不要になった場合は、そのまま持っていても経費がかかり続けるため解約を検討することも多くあります。ドメインが不要と判断すれば解約することで、自社ではドメインが利用できなくなりますが次回の更新費用から支払いは不要となります。
●主なドメインの廃止理由
・キャンペーン用に取得したドメインでキャンペーン期間が終わった
・ブランド名や社名を変更して以前のドメインが使えなくなった
・昔からの経緯で複数のドメインを持っていたがもう利用しないと判断した
・事業内容の変更やサービスの終了でドメインが不要になった
2-2.うっかり更新し忘れてドメインを廃止するケース
ドメインを廃止するケースとしては、うっかり更新手続きをし忘れてドメインを手放してしまうというものもあります。
更新手続きは、自社のドメインを管理してもらっている業者(レジストラ)へ更新希望の旨を伝えて手続きを行い、費用の支払いを行うことで完了します。更新希望の手続きをうっかり忘れて行わなかった場合や、手続きは行ったが費用の支払いを忘れてしまった、という場合は、自社が持つドメインの利用権を手放してしまう(ドメインを廃止してしまう)ことになります。
ドメインの廃止後に、一定期間は前の利用者が再取得可能になるよう猶予期間が設けられている場合もあります。猶予期間のあるなしや、猶予期間の日数はレジストラによって異なります。再取得できない場合もあるため、うっかりのドメインの更新し忘れには十分注意をしましょう。
●主なドメインの更新し忘れ理由
・クレジットカード期限切れ
・引継ぎ漏れ
・手続きや重要度の理解不足
・担当者メールアドレスの変更忘れ
3.ドメインを廃止する(捨ててしまう)とどうなるか
ここではドメインを廃止すると、その後どうなるか流れを追ってご案内いたします。
3-1.ドメインを廃止するとドメインの維持コストが不要になる
ドメインを廃止すると、それまで年間でかかっていたドメインの維持コストが不要になります。ドメインの廃止にはコスト削減の効果があります。
なお、ドメインの維持コストはレジストラによっては1年更新プランだけでなく、5年更新プランなどまとまった年数を一括更新するプランもあります。複数年分の更新プランはコストを下げられ、更新手続きの漏れも防げるので、必ず維持する社名ドメインなどでは利用することもおすすめします。
3-2.廃止したドメインにアクセスしてもホームページは表示されず、メールも届かなくなる
ドメインを廃止後に再びサイトをブラウザで開いても「404 Not Found」と表示され、以前のページは見ることはできなくなります。廃止したドメインで使っていたメールアドレス宛にメールを送信しても、宛先不明でメールは戻ってきてしまいます。
3-3.ドメイン廃止から一定期間経過後にドメインの再販が開始する
廃止したドメインは、一定期間の経過後すると、誰でも自由に購入することができるようになります。
例えば●●●.jpという汎用ドメインの場合は、廃止後およそ1ヵ月を経過すると、再度同じドメイン名を先着順で購入することができます。
廃止後に再販されるまでの間の期間は、ドメインによって異なります。
3-4.廃止したドメインは第三者が購入・利用することがある
ドメインの再販が開始されると廃止したドメインを第三者が購入することがあります。この購入自体はもちろん合法で、ここで第三者が購入してしまうと、以前のドメイン所有者であってもドメインを買い戻すことは不可能となってしまいます。
注意しなければならないのは、新しいドメインの所有者がフィッシング詐欺のサイトやアダルトサイトを立ち上げる場合があることです。以前のページを知っている自社の顧客が、ブラウザのお気に入りなどから、あのサイトどうだったっけと久しぶりにアクセスしたら、デザインが以前とそっくりのフィッシング詐欺サイトにつながり、ショッピングしたためカード番号を抜き取られた、ということも不可能ではありません。
もちろん再販後もドメインが誰にも購入されない場合や、新しい所有者が現れて自社にとって無害なサイトを立ち上げることもあります。
3-5.第三者によって有害なサイトが立ち上がらないための方法
ドメインを廃止する場合は、廃止したドメインを第三者が購入して自社にとって有害なサイトを立ち上げる場合もあります。
そのため、まだ多くの人がアクセスする可能性があるドメインであったり、ネットショッピングサイトなどの個人情報を多く入力するサイト等であれば、アクセスが減るまでの相当期間はドメインは廃止せずに保持し続けることをおすすめします。迷惑なサイトが立ち上がって顧客を混乱させることを、年間数千円のドメイン更新費用で防止することができます。また現在、ドメインの更新費用が高額な場合は、レジストラ(ドメインの管理業者)を更新費用が割安な業者へ移行することも可能です。
4.ドメインの廃止を検討する際に気を付けること
ここではドメインの廃止を検討する際に気を付けることをご案内いたします。
4-1.メンバーズカードなど物理媒体でQRコードやURLを利用していたドメイン
メンバーズカードや紙媒体に刷り込んだQRコードやURLは、もちろん後から変更することはできません。
そのため、ドメインの廃止を検討する際は、そのドメインがQRコードやURLで物理媒体に刷り込まれていないか、よく確認する必要があります。
確認せずにドメインを廃止した結果、第三者にドメインを取得され有害なサイトを立ち上げられ、QRコードを読み取った顧客から、おかしいサイトが出ると苦情を受ける場合もあります。
4-2.ブランド名や社名を含んでいるドメイン
キャンペーンや採用などで新しいドメインを取って専用サイトを立ち上げWEBページを展開することもあります。こういった場合は特に、新しく取ったドメインにはブランド名や自社名を含んでいる場合があります。
ブランド名や社名を含んだドメインが廃止後に、第三者が取得して自社にとって有害な内容のサイトを立ち上げると自社のブランド価値を毀損することにもつながります。こういったドメインの場合も、アクセスが減るまでは廃止を見合わせることをおすすめいたします。
5.ドメイン廃止時のトラブルなどの事例
ここではドメイン廃止時のトラブルなどの事例をご案内いたします。
5-1.旧アトレカード上のQRコードを開くと不審サイトへ繋がった事例
JR東日本の駅ビル「アトレ」では、過去に配布していたポイントカード(アトレカード)の裏面に会員サイトへつながるQRコードを掲載していました。このQRコードのリンク先の会員サイトは2015年度をもってサービス終了していましたが、会員サイトのドメイン(atre-club.jp)が第三者に購入され2025年6月に、QRコードから会員サイトへアクセスするとおかしいサイトへつながる問題が発覚しました。
発覚以降アトレでは対処として、駅ビルの店頭で旧ポイントカードの裏面にあるQRコードは読み取らないようアナウンスする書面を掲載したり、WEBサイトでも急遽同様の周知を行っています。
アトレでは自社のポイントカードからJR東日本グループの「JREポイント」へ途中からポイント制度を移行しており、過去に配布していたポイントカード(アトレカード)自体でも、引き続きJREポイントカードとして利用できるように運用していました。そのため、2015年度に廃止した会員サイトのQRコードが掲載されている旧ポイントカードをそのまま所持して利用しているケースも多々あったものと考えられます。
5-2.ドコモ口座のドメインを誤って廃止した事例
NTTドコモが過去に提供していた電子決済サービス「ドコモ口座」のドメインをサービス終了後に誤って廃止してしまい、ドコモ口座で使っていたドメイン(docomokouza.jp)が第三者に取得された事例です。結果的にはNTTドコモが、ドメインオークションサイトに出品されてたドメインを落札して再び所有することで収束させています。オークションでのドメインの落札にかかった費用は402万3000円とされており、ドコモは多額の費用をかけて詐欺などにつながるリスクを食い止めにかかった形です。
5-3.自治体が過去に使用していたドメインが第三者に再取得された事例
鹿児島県が観光や健康の振興事業に使用していたWEBサイトのドメインも、サイトの運用終了後に第三者が取得して別のサイトとして利用している事例がありました。第三者が立ち上げたサイトが、合法であり詐欺的なものでもなければ、まったく問題ないことですが、鹿児島県ではかつて使用していたドメインを公表して現在は県と無関係であることをサイト上で注意喚起している例があります。
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