請求書の電子化を行うと、請求をする側も支払いをする側も経理業務の効率を高めることができます。これまでは紙の請求書を利用していたため、電子請求書のルールや運用方法がわからず、電子請求書を使った効率的な経理業務になかなか進めていなかった会社も多かったのではないでしょうか。この記事ではそういった企業の経理担当者や責任者の方に向けて、電子請求書のルールや運用方法、メリット、電子請求書を効率的に処理するためのシステムについてご案内します。この記事を読んで自社で効率的な経理処理をシステムで実現でするために、ぜひ電子請求書システムの選定に進んでみてください。
1.請求書の電子化とは
ここでは請求書の電子化とはそもそもどういったことなのかを、発行の電子化と保存の電子化という2つのポイントを通してご案内します。
1-1.そもそも請求書の電子化とは
請求書の電子化とは、読んで字のごとく、これまで紙に印刷して送付していた請求書を、PDFなどの電子データで送信して利用していくことです。この話は、請求する側(請求書を送る側)の視点に立った請求書の電子化です。逆の立場で、支払いを行う側(請求書を受領する側)にも、請求書の電子化という言葉は存在します。支払いを行う側が紙で受け取った請求書をPDFなどに変換して経理処理に利用していくことも同じく請求書を電子化と言います。
請求書を電子化すると、郵送代や印刷のためのコストが削減できたり、請求側・支払い側共に経理処理にかかる時間も短縮することができます。また、電子帳簿保存法やインボイス制度でどのように取り扱わなければならないか、電子化した請求書で守るべきことも規定されています。
1-2.請求書発行の電子化
請求書発行の電子化とは、請求する側が電子化して請求書を作成することを意味します。電子化された請求書の表現も「電子請求書」「電子インボイス」「Web請求書」などいくつかの言い方があります。
請求書は相手方にお金を支払ってもらうために必要な書類ですので、請求書自体に何かの手違いがあって相手方に支払ってもらえないということは、経理としても営業としても絶対に避けたいことです。例えば、電子化すると押印ができないので、相手方は押印の無い請求書では支払ってくれないのではないか?と疑問を持つかもしれません。実は法律上で請求書には押印は必要とは規定されていないのです。これは電子請求書にも言えることで、法律上では電子請求書にも押印(印鑑の画像を貼ったり電子印を押印したり)は不要です。しかしながら、支払いを行う相手側が、支払いを行う要件として電子請求書にも押印が必要としている場合があります。このような場合は電子請求書に印鑑の画像を貼ったりといった対応が必要になってきます。そのため、電子請求書を使って支払いを相手方に依頼する際には、念のため押印が必要か確認することをおすすめします。また、請求書の原本をが必須にしている会社もあります。原本が不要かも含めて確認することをおすすめします。
1-3.請求書の保存の電子化
保存の電子化とは、支払いを行う側が電子化して請求書を保存することを意味します。メールで電子請求書を受け取って電子データのまま保存することや、紙で受け取った請求書をスキャンしてPDFファイルで保存することを指します。
支払いを行う側にとって気になることとしては、支払いを行った請求書は法律で7年間保存しておく必要があることです。この点について法律で電子請求書の取り扱い方法は決まっており、メール等でPDFの請求書を受領した場合は、PDFファイルを電子データのまま7年間保存することが求められています。また、紙で受領した請求書をスキャンしてPDF化した場合も、PDFファイルを7年間保存することが求められています。同じ請求書をPDFと紙の両方で保存することは不要です。なお、PDFファイルで受領した請求書は印刷して保存することが法律で認められておらず(電子で受領した場合は電子で保管することが法律の規定)、紙で受領した請求書をPDF化して保存した場合も、最初に受領した紙の請求書は廃棄してもかまいません。
2.電子請求書の運用方法
ここでは電子請求書の運用方法をご案内します。
2-1.電子請求書のルール
請求をする側と支払いをする側のそれぞれに電子請求書を運用する際のルールがあります。ここでは簡単に電子請求書のルールをご紹介します。
- 請求をする側が電子請求書を発行する際のルール
自社が販売した物やサービスの代金を支払ってもらうために、電子請求書を発行する際は、発行した電子請求書の控えを残すことと、インボイス制度で求められている適格請求書への記載内容が必要です。また、作成した請求書は改ざんできないPDFなどの形式で送る必要があります。ワードやエクセルのファイルで請求書を送ると変更できてしまうため電子請求書として扱うことはできません。 - 支払いをする側が電子請求書を利用する際のルール
自社が購入した物やサービスの題記を支払うために、電子請求書を利用して行う場合は次のような対応が必要となります。紙で請求書を受領してスキャン後にPDFファイル化して電子化した場合は、PDFにタイムスタンプを付与する必要があります。タイムスタンプは、このPDFファイルがいつの時点で存在したかや改ざんされていないことを表す刻印のようなものです。このタイムスタンプの付与はひと手間かかるため、請求書を管理するシステムを導入すると付与する作業を割愛することもできます。 - 請求する側と支払いをする側の両方に適応されるルール
請求する側も支払いをする側も請求書をPDFで保管する場合は、ファイルに・取引年月日・取引先名・取引金額の情報を付与する必要があります。簡単な対応方法としては、PDFのファイル名を取引年月日_取引先名_取引金額.pdfというようにすることで対応可能です。これは税務監査などで請求書をさかのぼって原本を調査することになっても簡単に探せるようにするための決まりです。
2-2.電子請求書の送付方法
請求をする側が支払いをする側へ電子請求書を送る方法としては以下のようなものがあります。
- 電子請求書のPDFファイルをメールで送信する方法
PDFになった電子請求書をメールに添付して送る方法です。簡単な方法ですが紙に比べると手間やコストを削減して送信することができます。ただし宛先の送り間違えによる情報漏洩リスクであったり、パスワード付ZIPファイル化しての送信は近年セキュリティ対策で受領できない場合も出てきており、将来的には縮小していく送信方法になる可能性もあります。 - 取引先にダウンロードしてもらう
この方法は、請求書のPDFファイルを支払いをする側がダウンロードして利用する方法です。あらかじめ請求をする側は、電子請求書のPDFファイルをWEB上の共有ストレージにアップロードします。支払いをする側は、ID・パスワードを入力したうえでダウンロードするためセキュリティはメールで送るよりも向上させることもできます。 - 請求書管理システムを使って送信する
電子請求書の処理を効率的に行うための請求書を管理するシステムもあり、そのシステムを介して取引先に請求書を送ることができます。こちらも支払いを行う側は電子請求書をダウンロードして取得しますが、請求をする側は支払いをする側が電子請求書をダウンロードしたかも確認することもできます。
3.メリット
ここでは請求書を電子化することのメリットをご案内します。
3-1.ペーパレス化により業務効率を向上できる
これまで、会社で購入した物やサービスの支払いは、紙の請求書を利用して請求⇒支払いという流れが長年続いてきました。一部の業界では請求書を電子データでやり取りをして請求の自動化を行っていましたが、専用のシステム開発が必要なため普及はしていませんでした。
今回、電子請求書を利用していくと、普段の請求書と内容は同じですが、紙ではなくPDFファイルで請求書の受領から社内の支払い手続きまで行うことができるため、紙の請求書をファイリングしたり確認したりといった手間や時間を削減することができます。また、請求書が電子データ化することで、経理担当者にもテレワークがしやすい業務環境が実現します。場所を選ばずに、電子化された請求書を使って経理処理ができることも、請求書のペーパレス化が実現したことと言うことができます。
3-2.請求書の郵送コストの削減
ここが意外に大きなメリットとなるかもしれませんが、請求をする側はこれまで毎月紙の郵送しており、年間で請求書の郵送代を考えると数万円から数十万円かかっていたケースもあるかと思います。これからも郵送料は値上がりしていくであろうことを考えると、請求書の電子化によって郵送コストを削減できることは将来にわたっても経費削減を続けていくことにもつなげることができます。
3-3.請求書の受領タイミングを早めることができる
従来の紙の請求書では、請求をする側が月末に締めて例えば翌月10日頃までに紙の請求書が支払いを行う側に届き、そこから社内で請求書のチェックや経理処理を行い月末までに支払いを行うという流れが主でした。この流れは、請求書が届く10日頃から支払いを行う月末までの限られた時間内で、一気に業務を行うため支払いを行う側にも負荷がかかっていました。請求書の電子化を行うとメール等で即時に請求書を送ることができるため、例えば毎月1日に前月分の電子請求書をメール送信するといったことも可能になります。このため、毎月10日頃に業務を始めていた支払い処理を前倒して開始することができるようになります。請求書の電子化は支払処理の時間を長くとることにもつなげることができます。
3-4.請求書の検索が簡単になる
電子化した請求書であれば、過去の請求書や支払予定の請求書を簡単に検索することができます。もちろんファイル名やフォルダ名に支払先の会社名や年月などを入れておく必要はありますが、簡単にPC上で検索してPDFの請求書を表示するといったことが可能になります。
これまでの紙の請求書だと、支払予定の請求書は支払予定日別にファイリングしていたり、過去の請求書はバインダーに収めてしまっていたり、だいぶ前の請求書に至っては倉庫で保存していたりと、紙ならではの探す際の手間がかかっていました。請求書の電子化は、請求書を検索する際の手間を大幅に軽減することができます。
4.デメリット
ここでは請求書を電子化した場合のデメリットをご案内します。
4-1.紙の請求書と電子請求書が混在する業務フローが発生してしまう
請求を行う側に対して電子請求書の発行は義務ではないため、電子請求書が届く場合と紙の請求書が届く場合があり完全に業務フローを1本化することはできないというデメリットがあります。電子請求書は請求側にもメリットがあるため利用する企業が今後も増えていくことは間違いないと思いますが、今後時間がたっても紙での請求書が少ないけれども存在し続ける可能性は十分にあります。紙で請求書が届いた場合は、支払い側が紙の請求書をスキャンすることで電子請求書として取り扱うこともできるため、紙を電子化する手間はかかりますがそれ以降の業務フローは電子請求書に統一することも可能です。
5.電子請求書の管理をシステムで効率的に
電子請求書は、発行のほか受領も効率的に行うことができるシステムがあります。請求書発行機能と請求書受領機能について簡単にご案内します。
5-1.請求書発行機能
請求書発行システムは、請求を行う側の業務を効率的に行うシステムで、電子請求書の作成から送信までの請求側の業務を効率的に行ことができるシステムです。クラウド型のシステムが主で、インターネット環境があれば会社のPCから簡単に利用できます。
具体的には、システム内のテンプレートを使った電子請求書の作成や、メールでの電子請求書の送付、入金消込なども可能です。誤請求や誤送信を減らせたり、会計ソフトと連携させることでさらに効率的に経理業務を行えるメリットもあります。
5-2.請求書受領機能
請求書受領システムは、支払いを行う側の業務を効率的に行うシステムで、PDFや紙で届く請求書を一括管理して、支払いまでの処理を自動化するシステムです。
具体的には、電子請求書やPDF化した紙の請求書をシステム内に登録すると、システムが記載内容を読み取って、銀行振込用のデータ作成や仕訳などを自動で行うことができます。
5-3.代表的な電子請求書管理システム
ここでは代表的な請求書管理システムをご案内します。
システム名 | 提供元 |
マネーフォワード | 株式会社マネーフォワード |
ジョブカン | 株式会社DONUTS |
楽楽明細 | 株式会社ラクス |
freee | フリー株式会社 |
BillOne | Sansan株式会社 |
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