これから新しいお店を出店するけれども、あまり工事費をかけたくないためインターネット接続も「置くだけWi-Fi」の導入を考えている。そんな中小企業の経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。置くだけWi-Fiであれば、光ファイバー回線でかかる工事費をかけずに済むほか、申し込み後数日でインターネットを利用開始することもできます。ここでは、置くだけWi-Fiとはどのようなものかや、他の回線との違い、利用シーン、メリット、デメリットなどをご案内いたします。速やかに初期費用の負担を少なく導入できるなどのメリットはありますが、一方通信速度は光ファイバーよりは遅くなるなどのデメリットもあります。この記事を読んで置くだけWi-Fiが自社の利用ケースにフィットする場合はぜひ置くだけWi-Fiの導入に向けて通信会社や端末の選定に進んでみてください。
1.置くだけWi-Fiとは
ここでは、置くだけWi-Fiとはどのようなものか、まず最初に知っていただきたいことをご案内いたします。
1-1.置くだけWi-Fiとは何か
「置くだけWi-Fi」とは、携帯電話の通信回線を利用するWi-Fiルーターのことです。その名の通り、置くだけWi-Fiの機器を室内に置いてコンセントを指しておけば、置くだけWi-Fiの機器は自動で携帯電話の通信回線をひろって、Wi-Fi接続を行ってきた接続端末でインターネットが利用できるようになります。
置くだけWi-Fiの特徴としてはインターネットを利用するのに光回線を引くような通信工事が不要となることです。5G回線やLTE回線を使うため通信回線のスピード自体は、スマートフォンの通信速度をイメージすれば問題ないかと思います。その回線をWi-Fiルーターに接続してきた機器で共有して利用していきます。
このように置くだけWi-Fiの機器を室内に置いてコンセントをさせばインターネット接続できる、それが置くだけWi-Fiとなります。
1-2.置くだけWi-Fiを提供している通信会社
置くだけWi-Fiは、ルーターとインターネット通信機能が一体となっているため
ドコモ、au、ソフトバンク、UQ、ワイモバイルなど通信会社で契約・販売を行っています。このほかにもMVNOと言われる割安な料金を武器にする通信会社でも置くだけWi-Fiを提供している会社もあります。これらの会社では、WEB上で機種や料金プランを確認したり、利用の申し込み自体も行うことができます。WEB上で申し込みをした場合、審査などの手続きが終わると置くだけWi-Fiの機器が宅配便で届いて利用することができます。
2.置くだけWi-Fiと他の通信回線との違い
ここでは置くだけWi-Fiと他の通信回線との違いをご案内いたします。
2-1.光ファイバー回線と置くだけWi-Fiの違い
光ファイバー回線でインターネットを利用する場合と置くだけWi-Fiでインターネットを利用する場合では、通信速度と設置工事の有無などが違ってきます。通信スピードの面では、置くだけWi-Fiでは携帯電話の通信回線(5GやLTE回線)を利用するため光ファイバー回線よりも比較すると遅くなるのが一般的です。また設置工事の有無では、置くだけWi-Fiでは工事は必要ありませんが、光ファイバーであれば工事が必須となります。工事自体は専門業者が行うため申し込みから実施まで1~2ヵ月程度かかる場合もあります。
2-2.携帯電話(スマートフォン)の通信回線と置くだけWi-Fiの違い
スマートフォンで普段利用しているインターネット回線と置くだけWi-Fiで利用する通信回線は、ほぼ同じものになります。そのため、通信速度も基本的に置くだけWi-Fiはスマートフォンと同じと考えて問題ありません。ごくごくわかりやすく説明するためのイメージとしては、置くだけWi-Fiは、音声通話機能がなくデータ通信機能のスマートフォンでテザリングするようなイメージです。置くだけWi-Fiは主に室内でのインターネット利用に特化しているため、スマートフォンのテザリングに比べて、同時接続できる接続機器数が多かったり、通信範囲が広かったり、月額費用が(通話がないので)スマートフォンに比べると安かったりという特徴があります。
3.法人利用における置くだけWi-Fiの利用シーン・事例
ここでは法人利用における置くだけWi-Fiの利用シーン・事例をご案内いたします。
3-1.小規模店舗での業務用回線としての利用
飲食店であったり小売店などでは、POSレジやキャッシュレス決済端末、メール、Webサイトの利用などインターネット接続が必要な業務もあります。テナントに入居した場合でも、工事不要で不動産屋や大家に確認する手間もなく手軽利用することができます。コストの面でも光ファイバーを敷設する初期費用(およそ数万円)を削減することができます。
3-2.サテライトオフィスでの利用
サテライトオフィスでインターネット回線が必要な場合は、置くだけWi-Fiを活用することで光ファイバーの敷設に比べて安く手軽にネット接続環境を用意することができます。利用頻度の観点からもサテライトオフィスを常時利用しなかったり大人数で利用しない企業の場合は、置くだけWi-Fiで十分とも言えます。
3-3.速やかに事務所を構えて通信を開始する際の利用
事情があって一時的に通常の業務を行っているビルではなく、別の建物で速やかに業務を行わなくてはならない場合などにも。置くだけWi-Fiの速やかに利用開始できる特性を活かして活用することができます。過去の例では、コロナ禍の頃には民間の検査センターが急ピッチで立ち上がったり、自治体による業務遂行のための事務所が急いで立ち上げられたりと、速やかな事務所構築が必要な際の通信環境としても利用されてきました。置くだけWi-Fiの速やかに導入でき、取り回しも良い利点が社会の課題解決にも利用されています。
4.置くだけWi-Fiのメリット
ここでは置くだけWi-Fiのメリットをご案内いたします。
4-1.数日で開通可能であること
置くだけWi-Fiであれば、申し込みから数日でインターネット利用を開始することができます。手続き面でも申し込みを行い利用料金の支払い方を決めて、置くだけWi-Fiの機器(Wi-Fiルーター)を入手すれば、PCなどの接続操作自体は無線LANにつなぐいつもの操作と同じです。開通処理自体も決まった日に、利用者側は何もしなくても通信会社側で行うため、指定の開通日時にはインターネットが利用できるようになっています。
4-2.回線工事が不要で費用と時間を削減可能であること
置くだけWi-Fiの大きなメリットには、回線工事が不要であることもあげられます。置くだけWi-Fiなら工事の初期費用の負担が抑えられることと、長いと1・2ヵ月待たなくてはならない光ファイバー回線の工事にかかる時間も省くことができます。また光ファイバー回線を導入する際は、終端装置やルーターなどの機器のレンタルや購入も必要となります。これらの費用も置くだけWi-Fiであればかけることなく導入することができます。
4-3.店舗内のLAN配線を減らせるので見た目も良くなりコストも削減できる
置くだけWi-Fiは、もちろんインターネットを無線LANで行います。そのためPCなどの接続機器とLANケーブルなしで通信できるようになるため、店舗内のLANの配線も減らせたり無くすことができます。LAN配線は店舗の床下に這わせているため、工事業者による施行が必要となります。無線LANを利用することでLANケーブルの敷設コストも削減していくことが可能です。どうしてもLANケーブルでの接続が必要な機器がある場合は、基本的に置くだけWi-Fiのルーター部分にはLANの口もあるため、そこと接続機器とをLANケーブルで接続して通信を利用することもできます。
4-4.地震や事故・障害による通信のBCP対策としてバックアップ回線として用意しておくこともできる
通信回線に光ファイバー回線を利用している企業でも、万が一災害や事故等で通信が光ファイバーが断線したり障害で不通となってしまった場合に備え、バックアップ回線として置くだけWi-Fiを導入しておく利用方法もあります。例えば災害が起こった際に一番最初に被害を受ける通信インフラは地上の固定回線です。携帯電話の通信回線を利用する置くだけWi-Fiであればこれまでの地震災害をもとにすると数日間は通信可能という例もあります。加えてこの場合、電気は必要となりますので、ポータブル電源を用意しておいたり電源コンセントが利用できる自動車があると災害時にもスムーズに置くだけWi-Fiを利用することができます。
4-5.テナントを退去する際の原状回復の手間も減らすことができる
テナントを退去する際にも、置くだけWi-Fiのワイヤレスならではのメリットが活きてきます。置くだけWi-FiはLANケーブルを敷設しませんので、光ファイバー回線を利用している場合に比べて、LANケーブルや装置類の撤去費用を削減することができます。
4-6.Wi-Fiの通信範囲が広く同時接続数も比較的多いこと
置くだけWi-Fiと似た機能を持つサービスでは、スマートフォンを使ったテザリングや携帯用のモバイルルーターなども競合として挙げられます。
置くだけWi-Fiは室内に設置して広めの場所で多めの人数で利用することも想定して設計されているため、スマートフォンのテザリングや携帯用モバイルルーターと比べるとWi-Fiの通信範囲が広かったり、同時接続できる機器の台数も多いというメリットがあります。
5.置くだけWi-Fiのメリットの課題やデメリット
ここでは置くだけWi-Fiのメリットの課題やデメリットをご案内いたします。
5-1.通信速度は光ファイバーよりは遅くなる
置くだけWi-Fiは、携帯電話の通信回線(5GやLTE回線)を利用するため光ファイバー回線を使ったインターネットよりは一般的に遅くなってしまいます。例えば通信量がそう多くない業務(メール送信であったり、テキストベースの業務データの送信等)を複数の接続端末で利用する場合は、そこまで速度低下を懸念する必要はないとも考えられます。一部の接続端末で動画再生を行ったり動画配信をするような場合は、他の接続端末で通信速度が低下する影響が出る場合があります。ちなみに、ZoomやTeamsなどのWEB会議についてはZoomやTeamsなどのアプリケーション側で通信速度に応じて動画画質などをコントロールしていたりするので、動画再生に比べると通信速度は落ちない傾向があります。
5-2.大容量の通信を続けた場合に速度制限がかかる場合がある
携帯電話の通信回線を置くだけWi-Fiでは利用しているため、通信会社によって異なりますが例えば3日以上大容量の通信を続けていると契約内容によって通信速度に制限がかかる場合があります。置くだけWi-Fiの契約をする際に通信プランによって速度制限がどの程度でかかるか判別可能ですので契約の際に確認されることをお勧めします。
5-3.携帯電話の通信電波が届かないところでは利用できない
例えば地下や建物内の電波が悪い場所では置くだけWi-Fiは圏外になって利用できない場合あがります。また電波が悪いために通信速度が遅くなる場合もあります。置くだけWi-Fiの通信は、ドコモ、au、ソフトバンク、UQ、ワイモバなどが提供していますが、これらの通信会社をスマートフォンで使っている方がいれば、その方のスマートフォンで電波が受信できるかなどでチェックすることもできます。
また、地下やビル内であっても、携帯キャリアの基地局が設置されている地下街やビルの内部などでは、問題なく置くだけWi-Fiも利用することができます。
5-4.契約で住所地以外での利用制限があったり解約解除料が必要な場合がある
置くだけWi-Fiは、基本的に契約時に登録した住所以外では利用できないことになっています。もし、事務所の移転をする際などは契約内容を確認して必要ならば利用場所の変更申請をするなど対応が必要となります。また最近は減ってきたようですが、契約内容によっては手数料なしで解約できる時期が指定されていて、それ以外の時期に解約する場合は契約解除料がかかる場合があります。置くだけWi-Fiの機器代を分割で支払っている場合は、残額を一括精算が必要になることもあります。
6.置くだけWi-Fiを法人向けに提供している通信会社
ここでは置くだけWi-Fiを法人向けに提供している通信会社をいくつかご案内いたします。
サービス名 | 提供元 |
home 5G プラン | NTTドコモ |
モバイルルータープラン 5G | KDDI |
シンプルフリーWi-Fi | ソフトバンク |
UQ WiMAXルーター | UQコミュニケーションズ |
Rakuten Turbo 5G | 楽天モバイル |
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