労務管理、人事の業務の中には、マイナンバーを利用して遂行する業務があります。例えば、源泉徴収票の発行や、健康保険、雇用保険の手続きにもマイナンバーの情報は必要です。マイナンバーは法律で個人情報とされており、漏洩が起こった際には罰則も規定されています。そのためエクセルによるマイナンバーの管理を行っている場合は、業務が煩雑になる以外にも漏洩のリスクも上がりやすくなってしまいます。ここでは、そんなエクセルでマイナンバーの管理を行っている担当者の方に向けて、クラウド型のマイナンバー管理システムを導入するとどんな業務課題が解決できるかや、システムの機能、メリット、デメリットをご案内します。この記事を読んで、自社のマイナンバー管理を効率化して安全性も高めることのできるマイナンバー管理システムの導入に向け、ぜひシステム選定に進んでみてください。
1.クラウド型のマイナンバー管理システムとは
ここではクラウド型のマイナンバー管理システムとはそもそもどのようなものかや、マイナンバーが企業で必要とされる業務、法律で規定されているマイナンバーの安全管理措置、マイナンバーに関する罰則をご案内します。
1-1.そもそもクラウド型のマイナンバー管理システムとは
社内でマイナンバーが必要になる業務が総務や労務、人事などの業務でいくつか存在します。従業員のマイナンバーはそのものが個人情報です。企業はマイナンバーを使った業務をしていかなければなりませんが、同時に利用する従業員のマイナンバーを厳格に管理してゆく必要があります。そこでマイナンバーを安全に簡単に管理していくためのクラウドサービスが昨今増えています。ここではそんなマイナンバーのクラウド管理システムをご紹介したいと思います。
1-2.マイナンバーが必要な業務
企業の総務や労務、人事などの業務でマイナンバーを利用した業務があることはお伝えしました。ここでは具体的なマイナンバーを使う業務例をご紹介します。
- 税金
支払調書(報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書)
源泉徴収票
年末調整(給与所得者の扶養控除等申告書) - 社会保険
健康保険
厚生年金保険被保険者資格取得届
厚生年金保険被保険者資格喪失届 - 雇用保険
被保険者資格取得届
被保険者資格喪失届
介護休業給付⾦⽀給申請書
育児休業給付⾦⽀給申請書
マイナンバーが必要となる書面をご覧いただくとわかる通り、従業員の入社から退職まで一貫して必要になってきます。そのため企業では従業員のマイナンバーを安全かつ厳格に管理して業務を行っていく必要があります。
1-3.マイナンバーの取り扱いに求められる安全管理措置
マイナンバーを取り扱う者に対してはその安全管理措置が「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(番号法)と「個人情報保護法」で定められています。安全管理措置は全部で4つあり、企業はそのすべてに対応する必要があります。
- 組織的安全管理措置
アクセス記録を保存するなど、安全にマイナンバーを管理する体制を整えることを意味します。 - 人的安全管理措置
管理職がマイナンバーを取り扱う担当者を監督管理するなど、故意や過失でマイナンバーを漏洩することを防ぐ措置を取ることを意味します。 - 物理的安全管理措置
従業員から取得したマイナンバーは漏洩に対して物理的に安全措置を構築することを意味します。例えば紙であれば鍵がかかり入退室を管理している場所に保管したり、サーバーやPCであるとロックができる場所で保管・管理したり盗難防止のためのワイヤーロックをかけるなど対応が必要となります。 - 技術的安全管理措置
技術的の意味はPCやシステムのことを表し、マイナンバーを扱うPCやシステムを起動したら、ID・パスワードやICカードなどを使って担当者以外のアクセスをシステム的にブロックするような防護が必要とされています。
1-4.マイナンバーに関する罰則
マイナンバーはそのものが個人情報であることはご説明いたしましたが、マイナンバーの漏洩に対しては法律で罰則が規定されています。※マイナンバーカードを作らないことに対する罰則ではありません。
マイナンバー漏洩についての罰則:4年以下の懲役、200万円以下の罰金
懲役と罰金は両方とも課される場合があります。違法な行為をした個人のほか、その個人を雇用している法人も罰せられる場合があります。
情報流出が起こった場合は、実際に法で処罰される場合があります。これに加えてニュース等で企業に対する悪いイメージが広く社会に伝わり、社会的な損失も被ることになります。
2.クラウド型のマイナンバー管理システム導入で解決できる課題
ここではクラウド型のマイナンバー管理システム導入で解決できる課題をご案内します。
2-1.マイナンバーに求められるセキュリティ対策が取られたシステムを利用できる
クラウド型のシステムであれば、サーバーやシステム自体をまとめてシステム会社が管理し安全対策を施します。そのため企業側が使うシステムに対して物理的安全管理措置や技術的安全管理措置を取る必要がありません。もともとクラウド側のシステムは、(主に)WEBブラウザでインターネット上にあるシステムを利用します。ハードウェアやシステムは、利用する企業には見えないところにあり、セキュリティ対策などシステムのハードウェアやソフトウェアの安全管理はシステム会社側ですべて行います。企業が法律でマイナンバーを扱うシステムには物理的安全管理措置や技術的安全管理措置を講じることを求められていますが、この企業に求められている安全管理措置はマイナンバーのクラウド管理システムを利用することで対応することができます。
2-2.クラウド型の人事労務系システムへマイナンバーを自動連携できる
主なクラウド型のマイナンバー管理システムには、マイナンバー管理機能以外にも給与システムであったり社会保険、年末調整、支払調書などの管理システムも利用することがあります。マイナンバーをクラウドで保管することで、同じクラウドシステム内の給与システムや社会保険、年末調整、支払調書へ自動でマイナンバーを連携することができます。
2-3.システム上でマイナンバーの廃棄予約や削除証明書も発行可能
マイナンバーは退職するなどの理由で企業が利用しなくなると、保持しているマイナンバー情報を削除する必要があります。例えば退職が決まった社員がいた場合に、●月×日にマイナンバー情報を削除するようシステム上に設定することも可能です。退職に関する業務が終了後に退職する社員のマイナンバーを安全に削除することができます。
また削除証明書の発行したシステムであれば、マイナンバー削除後に削除証明書を発行することもでき、自社の削除が終了したころを退職者に公表することもできます。
3.クラウド管理のマイナンバーシステムの機能
ここではクラウド管理のマイナンバーシステムの機能をご案内します。
3-1.従業員によるマイナンバー登録機能
マイナンバーのクラウド型管理システムへの登録を従業員自らが行える機能です。社員個人ごとにマイナンバー登録サイトのログイン情報を配布し、従業員がスマートフォンでサイトへログインするとカメラを使いマイナンバーを撮影して登録することができます。
一般的にこのマイナンバーの従業員登録機能には、誤ったマイナンバーが登録されないよう、二段階認証などのセキュリティ対策も講じられています。なお、社用スマホだけでなく従業員個人のスマホでも問題なく登録することはできます。
新しく入社した社員に対しても、従業員向けマイナンバー登録サイトのログイン情報を渡すだけで新入社員自身にマイナンバー情報を登録してもらうことができます。
3-2.マイナンバー登録状況の管理機能
従業員に依頼したマイナンバーの登録が完了しているか、未完了か一覧でマイナンバーの管理担当者はシステム上で確認することができます。
また、マイナンバーの登録が未完了の社員に対してはメールで登録の催促を送信することもできます。
3-3.提出不備に対する差し戻し機能
主にマイナンバーのクラウド型管理システムへの登録は、本人がマイナンバーカードの写真を撮影して行うため、写真がぼやけていたりしてきちんと登録できないことがあります。そのような場合はクラウド型システムの管理者が本人に対してメールで差し戻しを送ることができます。
3-4.家族分のマイナンバーを登録する機能
従業員本人のマイナンバー以外に、扶養家族がいる場合は扶養家族分のマイナンバー情報も企業では必要となります。そのため、クラウド型のマイナンバー管理システムには家族用のマイナンバーカード登録画面もあります。従業員が家に帰ったあとに自宅で扶養家族のマイナンバーカードをスマホで撮影してマイナンバーカード管理システムへ登録することができます。※自分の扶養に入っていない家族分のマイナンバーは登録する必要はありません。
3-5.マイナンバーの暗号化機能
システムに登録されたマイナンバー情報は暗号化されて保存されるため安心して業務にあたることができます。
4.メリット
ここではクラウド管理のマイナンバーシステムを導入した場合のメリットをご案内します。
4-1.マイナンバーの登録を従業員本人が行うことで情報流出リスクを下げられる
従業員のマイナンバーを漏洩することなく管理するためには、できるだけ従業員のマイナンバー情報を目に触れる人を数を減らして管理していく必要があります。そのため、クラウド型のマイナンバー管理システムであればマイナンバーを目にするのは、マイナンバーを登録する従業員本人と、正しくマイナンバーが登録されたか確認を行う社内のマイナンバー担当者の2人に絞ってしまうことができます。
ちなみにマイナンバーの登録は、従業員がマイナンバーカードや通知カードの写真を撮影して登録するとお伝えしました。これはマイナンバーカードの写真をマイナンバー管理システムが読み取ってマイナンバーの番号をデータ化し、最後にマイナンバー担当者がシステム上で撮影された写真とデータ化された番号を見比べて最終的にマイナンバーカードの登録を承認して登録完了します。
5.デメリット
ここではクラウド管理のマイナンバーシステムを導入した場合のデメリットをご案内します。
5-1.コストがかかること
マイナンバーのクラウド型管理システムの利用には、一般的に月額費用がかかります。よくある課金方法は利用する社員数×単価100円(金額は例です)で月額料金が決まるものです。マイナンバーを使った業務は比較的最近のことで、まだシステムを導入せずにエクセル等で管理している会社の方もいらっしゃるかと思います。
マイナンバーは法律で流出した場合に罰則が定められていることや、システムを使うことで漏出リスクを下げられ、さらにはマイナンバーの登録にかかる手間を削減することもできます。そのためコストはかかるものの、漏出リスクを下げられる一定の効果はあるため、情報漏洩が起こって評判を落とすこともシステムで可能性を下げることができます。マイナンバー管理システムの導入がなかなか社内の理解を得られない場合はこのようなことを説得の材料にしてはいかがでしょうか。
6.代表的なクラウド型のマイナンバー管理システムのご案内
ここでは代表的なクラウド型のマイナンバー管理システムのご案内します。
サービス名 | 提供元 |
マネーフォワード マイナンバークラウド | 株式会社マネーフォワード |
奉行Edgeマイナンバークラウド | 株式会社オービックビジネスコンサルタント |
オフィスステーション マイナンバー | 株式会社エフアンドエム |
freee人事労務 | フリー株式会社 |
jinjier人事労務 | jinjier株式会社 |
ジョブカン労務HR | 株式会社DONUTS |
MJSマイナンバー Cloud | 株式会社ミロク情報サービス |
かんたんHRマイナンバー | セイコーソリューションズ株式会社 |
コメント