介護施設でシフト管理や有休管理の仕事を担当しているものの、紙やエクセルを使っているため、業務が煩雑で時間ばかりがかかってしまう、そんシフト管理や有給管理の担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、介護業界の担当者や管理者の方に向けて、手作業の限界をシステムで乗り越えられること、システム導入の具体的なメリット、急な休みが発生しても代替職員を提案してくれること、介護施設向け勤怠・シフト管理システムの選び方などをご案内しています。ぜひこの記事を参考にしてシステム選定に進んでみてください。
1. 介護施設のシフト・勤怠管理における「時間の壁」をどう乗り越えるか
介護現場で働く皆さんは、日々のケア業務に加え煩雑な事務作業、特にシフト作成や勤怠管理、そして有給休暇の管理などにに多くの時間を割かれているのではないでしょうか。これらは施設運営の根幹に関わる重要な業務でもあり、多くの担当者にとって大きな負担となっています。
この負担は、単なる「忙しさ」の問題に留まらず、職員の疲弊、公平性の欠如、さらには法令違反のリスクにまでつながりかねません。私たちはこれを、介護施設における「時間の壁」と呼んでいます。この「時間の壁」を打破し、本来注力すべき利用者へのケアに時間を振り向けるには、古い手作業の管理から脱却し、システム導入が不可欠です。
1-1.介護現場が抱える「手作業」の限界
介護施設のシフト・勤怠管理はこれほどまでに時間を要し、複雑化するのは、介護業界特有の制度と、複雑であるがために紙やExcelによる管理の限界が組み合わさって起こっているためです。まずはその要因を以下でご案内いたします。
- 煩雑な有給管理
労働基準法が改正され、企業には年5日の有給休暇取得義務が課せられました。しかし、介護施設では職員の雇用形態(常勤、非常勤、パートなど)、入社日、継続勤務期間が多岐にわたるため、エクセルなどの手作業で一人ひとりの有給付与日数を正確に計算し、付与・消化を管理するのは至難の業です。
また手作業では年5日間の取得義務が迫っている職員がいても見落としがちで法令違反による行政指導のリスクにもつながります。 - 複雑なシフト作成(人員基準と公平性の両立)
介護施設のシフト作成は、パズルのように複雑です。単に穴埋めをすれば良いわけではありません。介護保険法に基づき人員配置基準の範囲でシフトを組む必要があること、特定事業所加算と届け出ている場合は実務経験年数や勤続年数が加算要件を満たしていることなど、様々な事柄を考慮する必要があります。また、職員間の公平性や希望休に配慮する必要もあります。例えば特定の職員に土日勤務が集中することがないよう、また職員それぞれの希望休を最大限考慮していく必要があります。こういった点がおろそかになっていくと不満が溜まり離職につながりかねません。 - 急な欠員発生時の緊急対応と負担増
作成したシフトが確定した後も、当日急な体調不良などで休みが発生することは避けられません。この対応も負担が大きい業務の1つです。欠員が出で人員配置基準が保てなくなる場合は、業務内容を対応できる非番の職員をリストアップして、電話などで連絡しなくてはなりません。この際きちんと資格を満たしている人であるかや、次のシフトと近すぎないかなども確認する必要があります。出勤が確定できてようやくシフトの修正が可能になります。
このように有給管理、シフト作成、欠員発生時の対応など多くの時間を要します。背景に労働基準法や介護保険法などがあるため管理業務であっても非常に手数がかかり管理者側の疲弊も招くことがあります。
1-2.勤怠管理とシフト管理をシステムで連動させ手間を削減
有給などの勤怠管理やシフトの作成や管理を連携して処理してくれるのが介護施設向けに特化された勤怠管理システムです。システム上のシフト管理機能で設定した有給やオンコール出勤の情報も勤怠管理機能へ自動で連携することができ、有給なども手間なく勤怠実績にも反映することができます。有給の自動付与機能もシステムに付いているので、有給は付与も残数管理もシステムで完結することができます。
- 勤怠管理システムとシフト管理システムの関係性
現在、介護業界の業務効率化のために提供されているシステムの多くは、ただ打刻を記録するだけの勤怠管理機能だけでなく、複雑な条件を考慮したシフト作成・管理機能もセットで提供されています。介護施設にとってみると「いつ、誰が、何時間働くか(シフト)」と「実際に働いた時間(勤怠実績)」が介護保険の人員配置基準や給与計算に直結するため、切り離して管理すると二度手間が増えて非効率になります。
なお勤怠管理システムやシステムによるシフト管理が初めての方に向けて、それぞれシステムでどのようなことができるか簡単にご案内いたします。
- 勤怠管理システム
打刻データの記録、残業・深夜手当の計算、有給休暇の自動付与・残日数管理など、労務管理に関わる部分を担います。 - シフト管理機能
人員配置基準や職員の資格・希望を考慮したシフト作成、急な欠員時の代替候補提案など、業務の計画に関わる部分を担います。
この勤怠管理とシフト管理が1つのシステムで動くことで、以下のようなワークフローが実現できます。
項目 | 機能 | 内容 |
有給管理の自動連動 | シフトからの有休登録 | シフト作成時に職員の休みを「有休」としてシステムに登録するだけで、勤怠管理側で自動的に有給消化として処理され、残日数が更新されます。 |
正確な自動付与 | システムが職員の入社日・継続勤務期間を自動で参照し、労働基準法に基づいた有給を自動で付与します。 | |
システムによる労務管理 | 常勤換算の自動計算 | 作成したシフトが、職員の雇用形態や資格に基づき、自動で常勤換算されます。 |
法令遵守の自動チェック | シフト作成段階で、人員配置基準や職員の連勤上限などの労務規定に違反していないかをリアルタイムでチェックし、アラートを出します。 |
2.シフト管理や勤怠管理システム導入で実現するメリット
ここではシフト管理や勤怠管理システム導入で実現するメリットについてご案内いたします。
2-1.シフト作成の手作業を廃止して担当者の業務時間を削減できる
シフト管理をシステムで行う事の最大の恩恵は、シフト作成にかかる膨大な時間を圧縮できる点です。
課題となっていた作業 | システム導入後の変化 | 削減効果 |
シフト作成・調整 | 職員の希望休、資格、人員基準を考慮したシフトをAIが自動で作成・提案。手修正も容易。 | 毎月数日かかっていた作業が数時間に短縮。 |
勤怠データの集計 | 打刻データとシフト(予定)を自動で照合。残業時間や夜勤回数を自動計算し、CSVなどで出力。 | 月末の集計作業が数時間で完了。給与計算への連携もスムーズに。 |
法令チェック | 常勤換算、人員配置基準の充足状況をリアルタイムで確認し、不足があればアラートを発報。 | ヒューマンエラーによる減算リスクを大幅に低減。 |
シフト作成の面では、システムが施設の利用者数に応じて、職種、資格、本人の希望をもとに面倒な計算や照合作業を一手に引き受けるため、管理者はシフト表を埋める作業から解放され、職員とのコミュニケーションや利用者ケアの計画など、より付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。
2-2.有給自動付与で法令違反のリスクを下げる
有給休暇の管理は職員への有給手続きをただ実施する以外にも法令遵守の観点からも非常に重要な業務です。システム化により有給に関する法令違反のリスクを下げることができます。
- 労働基準法に則った有休付与を自動計算
有給休暇は、職員の雇用形態や入社日によって付与日数が異なります。システムには、あらかじめ就業規則に沿って有給付与条件を設定する必要がありますが、設定さえしてしまえば職員の継続勤務期間に基づき、次の付与日や付与日数を自動で計算し、漏れなく付与することができます。
担当者は、毎月付与日数を手計算する必要がなくなり、手計算のミスも無くしていくこともできます。 - 5日間の消化義務(時季指定)のアラート・管理を徹底
2019年の法改正により、企業には職員に年5日間の有給休暇を確実に取得させる義務が課せられました。介護業界では特にパートや非常勤職員も多く所属しており、勤務日も不定期になりがちな現場では有給管理が非常に難しいこととされてきました。ですが、システムの導入によって基準期間内に5日間の取得が不足している職員に対しては、未消化日数のアラートを管理者と職員双方に発報して取得を促すこともできます。その有給取得を促した記録もシステム内に残せるため法令遵守の証跡としても利用可能です。
2-3.シフトの公平性と人員基準を両立し職員の定着率向上に導くことができる
シフト管理をシステムで行うことで、社員間の公平性と業務に必要となる専門性の両方の確保が容易になり結果的に職員の定着率向上に貢献することができます。
- 資格・経験値を考慮した公平な自動シフト作成
介護施設ではサービス提供に必要な資格(介護福祉士、ヘルパー2級など)を持つ職員を必ず配置する必要があります。また実際の運用では新人職員とベテラン職員とのバランスも重要ですが、システムにこれらのデータを登録することで実際に運用で求められるバランスに配慮したシフトを自動作成することができます。例えば、保有資格、スキルレベル(新人/経験者)、希望休・夜勤回数の上限などを設定すると、あとはシステムが「特定の職員だけ夜勤が多くならないか」「連勤が続きすぎていないか」といった公平性のルールも考慮して最適なシフト案を瞬時に作成することができます。 - 人員配置基準の充足をチェック
デイサービスなどでは、時間帯によって利用者数が異なることがあるため、シフト作成時に時間帯ごとに人員配置基準を満たしているかを自動チェックする機能もあります。シフト作成時には想定した利用者の数に足してシフト上に配置された職員の資格・数を常に照合するので、基準を満たせない状態になると即座にアラートを出すことができます。
3.急な欠員が発生した際のシステムによる提案機能
ここでは急な欠員が発生した際のシステムによる提案機能についてご案内いたします。
3-1.当日急な休みが発生した際のシステムが代替職員候補を選ぶ際の仕組み
当日体調不良などで休みが発生した場合、システムが代替職員の候補リストを用意できることも、管理業務の手間を減らすことにつながります。リスト自体は、単純にシフトに入っていない職員を羅列するものではなく、介護現場にとって必要な資格や公平性を踏まえて以下のような仕組みを利用して最適な職員を提案されます。
- 勤務可能条件(非番、資格など)を自動で照合
システムは、全職員のリアルタイムの勤務状況と登録情報を参照し、以下のような項目をクリアした職員を候補として表示します。
- 勤務可能時間・非番であるか
すでにシフトが埋まっている職員、労働時間の上限を超過する職員は自動で除外されます。 - 必要な資格・スキル
欠員が出たポジションに必要な資格を持っているかを確認します。 - 労働基準の順守
候補者が出勤することで、連続勤務(連勤)やインターバル時間(休息時間)の規定に該当しないかをチェックします。 - 公平性の配慮
直近で緊急出勤や応援勤務をした職員、または多忙だった職員を優先順位で下げるなど、公平性も考慮した提案が可能です。
- 「人員配置基準を崩さない」職員を優先的にリストアップ
代替職員の選定で根本的に重要なことは法令遵守と言えます。欠員が出た時間帯で人員配置基準を崩さないことはもちろんですが、代替職員が別の時間帯から抜けざるを得ない場合はその穴に更に別の非番の職員を配置することにもなります。そいった場合でも、常にシステムは人員配置基準が崩れないかチェックを行うため、欠員が出てシフト調整を行う場合でも人員配置基準までシステムがケアをすることができます。
3-2.シフトと勤怠の「リアルタイム連動」が実現する迅速な調整
代替職員が確定し緊急出勤が決まった後は、シフトと勤怠のデータが自動連携することができます。管理者がシステム上で確定ボタンを押すと、シフト表に即座に反映され、勤怠上で緊急出勤という扱いにすることができます。これはオンコール手当を支給するために必要な処理でもあり、緊急出勤した職員は勤怠管理システムに打刻するだけでシフトと勤怠の自動連係により緊急出勤扱いとなり、オンコール手当の支給も自動化することが可能です。
4.介護施設向け勤怠・シフト管理システムの選び方
ここでは介護施設向け勤怠・シフト管理システムの選び方についてご案内いたします。
4-1.介護特有の複雑なルールへの対応力
介護業界はその他の業界と違い複雑な制度があり勤務体制によって報酬の単価が変わります。そのため介護業界特有の複雑なルールへの対応力がシステムを選ぶ際には重要となってきます。
- 常勤換算、加算要件への対応有無
介護事業所は、サービスの質を評価する加算を取得することで、報酬単価を上げることができますが、加算要件(例:特定事業所加算、サービス提供体制強化加算)には、常勤職員の割合や勤続年数の長い職員の割合など、複雑な報酬要件が定められています。そのため常勤加算や加算要件への対応有無は確認することをおすすめいたします。 - 柔軟な勤務形態への対応力
介護の現場では、日をまたぐ夜勤、休憩時間の変則的な取得、複数の拠点やサービス(訪問、デイ、入所など)を兼務する職員、緊急時のオンコール待機など、多様な働き方があります。こういった自社の勤務形態を利用しやすい観点でもシステム選定を行うこともおすすめいたします。
4-2.必要な機能の優先順位付けと費用対効果
シフト作成や勤怠管理ができるシステムには様々な機能が付いています。システムの比較には時間もかかるため、まず自社にとって解決したいしたい課題に優先順位をつけることをおすすめいたします。簡単に優先順位の策定に利用できるシステム選定に利用できる課題や機能をご案内いたします。
解決したい課題 | 優先すべき機能 | 機能の選び方 |
手間の削減 | シフト自動作成機能 | AIによる自動作成の精度、手動修正の柔軟性。 |
法令遵守 | 有給自動付与、人員基準アラート | 法定基準をクリアできる確実性と、担当者への通知機能。 |
急な欠員対応 | 代替候補提案機能、チャット連携 | 候補者の抽出スピードと正確性、現場への通知・連絡手段。 |
特に、「シフト自動作成」機能はシステムによって精度や設定の複雑さが異なります。可能ならデモを行ってもらい自施設の複雑な勤務ルールをどこまで細かく設定できるかを確認することをおすすめいたします。
また、高機能であればあるほどコストは高くなりますのであまりオーバースペックになる状態は避け、削減できる業務時間とシステム費用のバランスを考慮した費用対効果の検証が必要です。
5.主な介護業界向けシフト管理・勤怠管理システム
ここでは主な介護業界向けシフト管理・勤怠管理システムをご案内いたします。
製品名 | 有給管理機能 | シフト管理機能 | 欠員対応 |
ガルフCSM | 多拠点・大規模法人の複雑な有給付与ルールに柔軟対応。管理者負担を大幅に削減。 | 最適化エンジンが応援勤務や多拠点の人員配置を自動調整。大規模運用に最適。 |
シフト調整機能で非番職員の条件を即座に確認。緊急時の要員調整をスピーディーに実行。
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ShiftMAX | プライベートクラウド型ならではの柔軟なカスタマイズ性が強み。施設ごとの独自のルール設定に特化。 | Excel形式のUIを採用し、紙・Excelからの移行が極めてスムーズ。現場の操作習熟が早い。 |
急な変更のリアルタイム修正・共有に特化。導入から運用まで専属スタッフがサポート。
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ジョブマイスター | 独自の有給ルールも設定可能。労務管理の透明性を高め、職員の信頼感向上に貢献。 | 職員間の公平性を最重視した強力な自動作成ルール。不公平感による離職リスクを低減。 |
欠員時に公平性を保ちつつ、必要な資格を持つ職員を迅速にリストアップ。
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シンクロシフト | 有給消化義務アラートが充実。健康配慮と法令遵守を労務管理面から科学的にバックアップ。 | 疲労軽減ロジックを搭載し、連続勤務制限を守った質の高いシフトを自動生成。 |
シフト変更時の法令違反リスクを自動でチェック。公平性を維持した再調整案を即座に提示。
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miramos | 介護記録・請求ソフトとデータ連携。有休・勤怠データを経営分析まで活用可能にするデータ統合力に優れる。 | AIが利用者ニーズから人員配置基準を満たす最適シフトを自動提案。複雑なパズルをAIに完全委任。 |
欠員時、AIが人員基準への影響がない代替候補者を優先提示。経営リスクの最小化に直結。
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