介護施設でシフト作成業務の際に、夜勤や早番、遅番の割当てに毎月苦労をしている、そんなシフト作成担当の方は多いのではないでしょうか。ここではそんなシフト作成担当の方や管理者の方に向けて、シフトの作成を公平かつ人員配置基準の範囲で自動割り当てできるシステムについてご紹介いたします。シフト自動作成の具体的なメリットやシステムの主要機能、システムを選ぶ際のポイントなどが記載されていますので、ぜひこの記事を読んでシフト管理システムの選定に進んでみてください。
1. 介護現場のシフト作成課題をシステムで解決
ここでは介護現場のシフト作成課題を掘り下げつつシステムで解決していけることをまず最初にご案内いたします。
1-1.介護施設特有のシフト作成における課題
介護現場を運営するため毎月のシフト作成業務は運営責任者やシフト作成担当者にとって、時間と精神力を消耗する業務ではないでしょうか。エクエルを使った手作業を行っていく中で、次のような課題に直面しているのではないでしょうか。
- 手作業による膨大な時間と精神的な負担
交代勤務のため1施設で十人台から数十人規模の職員を介護施設では抱えますが、シフト作成に際して希望休や条件を一つひとつ確認し、過不足なく当てはめていく作業は非常に膨大です。これに費やす残業時間は多いものではないでしょうか。 - 夜勤・早番・遅番など、公平なシフト割り当ての難しさ
特に夜勤、早番、遅番といった勤務形態の回数が、職員間で不公平が生じると不満や軋轢に発展しかねません。これは業務負荷もさることながら職員のモチベーション低下や離職につながる深刻な問題にも発展する場合があります。 - 介護保険の基準(人員配置基準)遵守の複雑さ
介護施設では、サービス提供時間や利用者数に応じた人員配置基準が介護保険法で厳格に定められています。基準を下回ると報酬減額や行政指導の対象となるため、常に「基準を満たしているか?」を気にしながらのシフトを作成することになり、もしも間違っていないか何度も確認するなど、大きなプレッシャーがかかります。
1-2.課題解決の鍵:システムのシフト自動作成機能の活用
システムによるシフト自動作成機能を利用することで、このエクセルや手書きでシフト作成を行っていることで生じる課題を解決することができます。
介護施設向け勤怠管理システムに搭載されているシフト自動作成機能を利用することになりますが、夜勤や早番、遅番といったシフトを公平かつ人員配置基準に収まるよう配慮したロジックで自動割り当てするものです。
従来は人が職員の休み希望や人員配置基準などに気を配りながら苦心して作り上げていた勤務シフトですが、システムを導入することで業務効率化や法令遵守、公平性の確保も実現していくことができます。
- シフト作成業務の電子化・効率化
シフト作成から管理、変更までの一連の業務をシステム内で完結できます。作成時間は劇的に短縮され、担当者は本来の管理業務に集中できるようになります。 - 公平性の確保
職員ごとの希望や条件(夜勤回数、連休制限など)を設定することで、システムが夜勤、早番、遅番といった負担の大きいシフトを自動で公平に割り当てします。 - 法令遵守
複雑な介護保険の人員配置基準をクリアした配置をシステムが自動でシミュレーションし、基準を下回る配置になった際はすぐにアラートを出すため、安心してシフトを作成・確定できます。
2.シフト自動作成の具体的なメリット
ここではシフト自動作成の具体的なメリットについてご案内いたします。
2-1. 夜勤や早遅自動割り当てによる公平性の確保
大人数の職員のシフトであっても、システムを利用することで公平さや人員配置基準への合致ロジックによって夜勤、早番、遅番を公平に割り振りしていくことが可能です。シフト作成のシステム化による一番のメリットはこの手作業では調整が難しかったこれらのことをシステムによってスマートに解決できることにあると言えます。具体的には以下のようなメリットがあります。
- 夜勤・早番・遅番の自動割り当てによる公平性の確保
システムは、職員ごとに設定された夜勤回数の上限や、早番・遅番のバランスといった条件を一律に適用し、特定の職員に負担が集中することを防ぎます。これにより、「あの人ばかり夜勤が多い」といった不満や不公平感を根本から解消できます。なお、職員によって時間帯限定で勤務しているケースもあるかと思いますが、そういったこともシステム上に登録することで勤務時間帯の制限がある職員はその範囲でシフトを自動作成することが可能です。 - 希望休の考慮や負荷の平準化による職員のモチベーション向上
職員がシステムを通して直接申請した希望休を考慮に入れつつ、勤務間のインターバルや連休の頻度なども自動で調整することができます。これは働く環境が公平でより納得感のあるものにしていくことができるため、職員のモチベーションを向上させ、最終的には定着率の改善にも寄与することも可能です。
2-2.法令遵守と質の向上
シフトを組むうえで重要なことの1つと言えるのが、複雑な介護保険のルールをきちんとシフトに反映させ、誤ったシフトを作成することによる介護保険報酬の減額や行政処分に繋げないことがあります。これらについてもシステムが自動で管理・チェックするため介護施設の運営で生じるリスクを低減していくことができます。
- 介護保険の人員配置基準に基づいた自動チェックとアラート機能
介護施設にとって最も重要な人員配置基準(例:利用者3人に対し職員1人など)に対して、シフト作成時に基準を下回る時間帯が発生するとその場でアラートを出すことが可能です。これは一度作成したシフトに変更を加えた場合も基準を下回る場合は同様にアラートが表示することができ、これにより法令違反のリスクを回避し、行政指導の心配なくシフトを作成することができます。 - 適切な人員配置によるサービス品質の維持
介護保険で規定される人員配置基準の遵守はもちろんのこと、必要なスキルや資格を持つ職員の配置も自動で考慮できるため、介護サービス面でもより良いサービスを提供できるシフトを組むことができます。資格の保持以外にも経験年数が多いスタッフと経験が浅いスタッフの比率なども配慮してシフトを作成することができます。
2-3.業務効率の大幅改善
これまでのシフト作成に必要であった細かな手作業はシステムが代行するためシフト作成担当者の時間と手間は大きく削減することができます。もちろん何も設定せずに自動せシフトが出てくるわけではなく、初期設定であったり毎月の設定は必要になりますがそれでも手作業でシフト作成していた時代と比べると大幅に業務効率を改善することができます。
- 作成時間の大幅な短縮
毎月のこととして手作業で数日かかっていたシフト作成がシステム上では数分〜数時間で完了させることができます。事前にシステムを利用開始する際には、初期設定として人員配置基準であったり夜勤・早番・遅番など勤務パターン、資格などを登録する必要があります。他には毎月、職員の希望休など月ごとの変動要素を登録する必要はありますが、こういったシステムがシフト作成に必要な情報さえ登録すれば、細かいシフト組みの作業はすべてシステムで行うことができます。 - 急な休みで欠員が発生した際の再調整も可能
一度シフトが確定したものの、職員の病気や家庭の都合などで勤務シフトに変更が加わることももちろんあります。そういったシフトを変更する際も、システムはこの時間帯は最低何人職員が必要などシフト作成時の条件を継承しているため、候補者となりうる職員のリストを提示することも可能です。急な再調整でもシステムが管理者の味方になって、候補者を提示し管理者は速やかにオンコール出勤を打診することが可能です。
3.シフト自動作成システムの主要機能
ここではシフト自動作成システムの主要機能についてご案内いたします。
3-1.自動割り当て機能の中核
シフトを自動作成する上で職員の公平性と人員配置基準の法令順守を確保するシフト自動作成システムの中心的な機能です。
機能・ロジック | 内容 |
職員ごとの勤務条件(夜勤回数上限、スキルなど)設定機能 | 職員一人ひとりの希望や、施設で定める夜勤・早番・遅番の回数上限、連休の回数制限などの詳細な条件をあらかじめシステムに登録します。システムは、この条件を最優先で守りながらシフトを組み立てます。 |
人員配置基準を満たす自動配置ロジック | 施設のサービス種別(特養、老健など)に応じて、介護保険の人員配置基準(例:利用者3人に対し介護職員1人)をシステムに組み込みます。自動作成の際、システムは常にこの基準を満たすよう最適解を導き出します。 |
休日希望・連休制限などを考慮した高精度な自動作成機能 | 職員からの希望休を反映させるだけでなく、連続勤務日数や勤務間インターバルといった労働基準法や職員の健康に配慮したルールも組み込めます。これにより、単に枠を埋めるだけでなく、働きやすさに配慮した公平なシフトが実現します。 |
3-2.運用のサポート機能
シフト管理自体を電子化するため、シフト作成担当以外の職員や経営層も様々なシフトに関する周辺機能もシステム上で利用することができます。ここではシフトの運用をサポートする機能をご案内いたします。
機能 | 内容 |
シフトの申請・承認・共有機能 | 職員はスマートフォンやPCから自分のシフトを申請することができ、自宅で予定を確認しながら希望を送信することができます。シフトの締め切り日が休日であっても、職員は自分のスマートフォンからシフトを提出することができます。また一度提出したシフトが承認されたかや確定した勤務シフトもスマートフォン上から確認できるため、紙や口頭での確認が不要になり職員は場所を選ばずににシフトに関する対応を行うことが可能です。 |
人件費シミュレーション機能 | 作成中のシフトに基づき、時間帯別・職種別の人件費をリアルタイムで試算できます。これにより、人員配置基準を満たしつつも、予算内でシフトを最適化するための経営的なシミュレーションも行うことができます。 |
アラート・警告機能 | システムは、(1)人員配置基準のクリア、(2)職員の勤務制限の考慮、(3)公平性の条件を順にシフトを作成するため、提出された希望シフトによっては(1)(2)は守れるものの、(3)は守れず、ある時間帯では特定の職員の夜間勤務が設定した上限回数を超えて設定されシフトができあがる場合あがります。そのような場合でも、該当箇所にはルールに反していることを示す赤色などを付けてアラート表示がなされるため、そこからは担当者や責任者の手で代替出勤者を探すなど対応を行うことができます。 |
4.シフト自動作成システムを選ぶポイント
シフト自動作成機能を持つ勤怠管理システムは数多く存在しますが、特に複雑な条件を持つ介護現場において、期待通りの成果を出すためには、システムを比較検討する際の明確な基準が必要です。ここでは、「公平性の実現」と「介護現場の特殊性」に焦点を当てた、システム選びの重要なポイントを解説します。この比較表を、システム選定にご活用ください。
比較ポイント | 注目すべき機能・特徴 |
公平性への配慮 | 夜勤・早番などの回数・負荷を平準化できる設定の柔軟性(例:夜勤回数、連続勤務日数、休日出勤回数など) |
介護特有の対応力 | 人員配置基準(3:1など)の自動チェック、資格・スキルに基づいた配置機能、サービス種別への対応実績 |
操作性と導入のしやすさ | 直感的な画面操作性、PC・スマートフォンからの申請・閲覧の容易さ、導入時のサポート体制 |
5.代表的な介護施設向けシフト自動作成システム
ここでは介護施設向けのシフトが自動作成できるシステムをご案内いたします。シフト自動作成機能は主に勤怠管理システムに含まれており、以下でご紹介するシステムは勤怠管理システムが主となっています。
システム名 | シフト自動割り当て機能の特徴 |
人員配置基準など法令遵守面の特徴
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ガルフCSM | 勤務負担の総合的な平等化ロジックに強み。経験や希望を加味し、詳細な条件で公平性を追求。 |
サービス種別や時間帯別など、介護保険の緻密な配置基準への対応力と厳格な基準違反チェック。
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ShiftMAX | 職員の意向(希望休・制限)を最優先し、その中で夜勤回数などの負荷を平準化。職員の納得感を向上させる。 |
人員配置基準を満たしつつ、連続勤務制限などの労務基準の順守も同時にチェックし両立。
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ジョブマイスター | 夜勤・早番の回数などの公平性をグラフで客観的に可視化。担当者の主観を排除した調整をサポート。 |
医療系ロジックを応用し、資格・スキルを考慮した配置基準の順守と、最適な役割配置を実現。
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シンクロシフト | 施設独自の複雑なローカルルール(例:夜勤明けの制限)を高い精度で自動組み込み、ルール内での公平性を追求。 |
介護基準に加え、36協定の上限や休憩時間など、労働基準法の順守に注力したアラートが充実。
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miramos | AIが過去実績と公平性ルールを学習し、夜勤回数や負荷が最も公平になる最適解を提示。手動修正の手間を最小化。 |
配置基準チェックと同時に、人件費をリアルタイムでシミュレーションし、経営的な視点での基準順守を支援。
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