特養などでの2交代長時間夜勤 煩雑な勤怠集計や割増計算もシステムで自動化

情シス

2交代の夜勤シフトもあって毎月の勤怠集計がとにかく大変で、という課題を持つ特別養護老人ホーム(特養)をはじめとした老人ホームの勤怠管理者や責任者の方も多いのではないでしょうか。この記事では、そんな勤怠管理者や責任者の方に向けて勤怠管理システムを導入することで夜勤の複雑な勤怠集計や割増賃金計算も自動で行えることをご案内しています。このほかにも、2交代制夜勤についての基礎知識や、手作業で勤怠管理をすることの課題、勤怠管理システムの導入で解決していける具体的な課題やメリットをご案内いたします。ぜひこの記事を読んで煩雑な勤怠管理の自動化に向けて勤怠管理システムの選定に進んでみてください。

1. 介護施設の勤務形態の基礎知識と2交代制夜勤の構造

特別養護老人ホーム(特養)を始めとする入所型の介護施設では、24時間365日のサービス提供が求められます。そのため、職員の働き方は必ずシフト制となりますが、その中でも特に多く採用されているのが2交代制です。まずは、介護施設におけるシフト制の基本的な違いと、2交代制夜勤の具体的な構造を確認していきましょう。

1-1.介護施設における2つの主要な勤務形態

介護施設のシフト形態は、大きく分けて「2交代制」と「3交代制」の2種類があります。

勤務形態 シフトの種類 1回あたりの勤務時間 特徴
2交代制 日勤、夜勤 日勤:約8時間、夜勤:約16時間 1回の夜勤が長時間だが、夜勤明けに休みが続くため、休日数が多いと感じやすい。
3交代制 日勤、準夜勤、夜勤 各約8時間 1回あたりの勤務時間は短いが、夜勤明けの翌日が出勤になるなど、生活リズムを整えにくい場合がある。

大規模な施設では職員数も比較的多いことがあるため3交代制を取っていることもあるかと思いますが、小規模な施設の場合は少数で運営となっていることも多くそのため2交代制を採用していることも多いかと思います。

1-2.2交代制夜勤の具体的な勤務時間とシフト例

2交代制の夜勤は、一般的に夕方から翌朝までの長時間にわたるシフトです。勤務時間が長くなる分、休憩や仮眠時間も長く設定されます。夜勤は、業務開始が夕食準備前の16時や17時頃で、翌日の午前中に日勤職員へ申し送りを終えて退勤するパターンが多いです。この長時間勤務が、勤怠管理上の複雑さを生み出す主要な原因となります。また、日勤帯のシフトについても、施設によっては以下のように細分化していることがあります。

  • 早番:7:00~16:00(朝食・起床介助をカバー)
  • 遅番:11:00~20:00(夕食・就寝準備をカバー)

1-3.介護職員の夜勤回数に関する取り決めと深夜労働の割増賃金

長時間夜勤の勤怠を管理する上で、特に注意が必要なのが「夜勤回数」と「割増賃金」のルールです。

夜勤回数に関する規制
現行の法律において、介護職員の夜勤回数に一律の法定上限は定められていません。ただし、医療機関の看護師の夜勤時間には基準(月72時間以内)があり、これに準じて介護施設でも職員の健康管理の観点から、月間の夜勤回数や時間について労使協定(夜勤協定)を結び、自主的に制限を設けている施設が多くあります。労働時間が適正に管理されているかどうかの基準は、夜勤回数ではなく、次項で触れる法定労働時間の遵守となります。

深夜労働の割増賃金の基本ルール
2交代制夜勤の勤怠管理を複雑にする最大の要因が、この割増賃金です。
労働基準法により、午後10時(22時)から翌朝午前5時(5時)までの時間帯に勤務した場合、通常の賃金に25%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられています。夜勤シフトは必ずこの深夜時間帯をまたぐため、16時間のうち最低7時間が割増賃金の対象となります。Excelや紙の台帳で、毎月の勤務時間からこの深夜労働時間だけを正確に抽出・計算するのは、大きな手間であり、ミスが発生しやすいポイントとなります。

2. 手作業での勤怠管理が抱える4つの管理上の課題

特別養護老人ホームの2交代制夜勤シフトをExcelや紙のタイムカードで管理する場合、避けて通れない具体的な「手間」や「管理上のリスク」があります。これらは、一般的な日勤中心の職場にはない、介護事業所特有の課題です。

2-1. 深夜労働割増賃金計算の煩雑さと正確性の確保

2交代制の夜勤は、必ず22時~翌5時の深夜時間帯を含みます。この7時間分の労働時間には、法定通りに25%以上の割増賃金を適用しなければなりません。手作業で勤怠管理を行う場合、管理者は以下の作業を毎月、職員全員分行う必要があります。

  1. 夜勤の出勤時刻と退勤時刻から、深夜時間帯(22:00~翌5:00)に該当する実働時間を抽出する。
  2. この深夜時間帯から、途中で取得した休憩・仮眠時間を正確に差し引く。
  3. 残った深夜労働時間に対し、個別に割増率を乗じて賃金を計算する。

この計算過程が非常に複雑であるため、計算ミスや、休憩時間との切り分けミスが発生しやすくなります。正確性を保つためには二重チェックが必須となり、結果として事務工数が大幅に膨らみます。

2-2.変形労働時間制と法定労働時間の管理工数

労働基準法では、労働時間は原則として「1日8時間、週40時間以内」と定められています。しかし、2交代制の夜勤は1回で実働約16時間となるため、この原則を大きく超えます。そこで多くの特養では、一定期間(1ヶ月や1年など)の平均で労働時間を法定内に収める変形労働時間制を適用しています。

Excelで勤怠管理を行う場合、以下の手間が生じます。

  • 夜勤を2日分の労働として適切に処理するルールの設定と管理。
  • 月単位や年単位で職員ごとの合計労働時間を集計し、設定した変形労働時間制の枠内に収まっているかを確認する作業。
  • 超過が確認された場合、その時間を時間外労働として計算し直す手間。

この変形労働時間制の管理は専門的な知識も必要とするため、手作業での集計は管理者にとって大きな負担となります。

2-3.長時間夜勤における休憩・仮眠時間の記録問題

16時間勤務の夜勤では、途中で1~2時間の休憩・仮眠時間が設定されます。この時間は原則として労働時間から除外されますが、介護施設という特性上、緊急の対応やご利用者様のコール対応などにより、休憩が中断されることが頻繁に発生します。

  • 休憩が中断され、労働に従事した場合、その時間は労働時間としてカウントし直さなければなりません。
  • 紙や口頭での記録では、職員が実際にどれだけ休めたか、休憩を中断した時間が何分だったかを正確に記録することが難しくなります。

実態と異なる休憩時間を計上していると、未払賃金が発生するリスクにつながるため、正確な休憩・仮眠時間の記録と集計は、長時間夜勤ならではの重要な管理課題となります。

2-4.夜勤明けや公休を含めた複雑なシフトパターンの処理

2交代制では、「夜勤入り」から「夜勤明け」、そして「公休」へと続く一連のサイクルでシフトが組まれます。

  • 「夜勤明け」の日をどのように勤務日として扱うか。
  • 月をまたぐ夜勤(例:31日の夜勤から翌月1日の朝まで)の労働時間を、どの月にカウントするか。

このような複雑なシフトパターンが絡む場合、手作業での集計では、月の変わり目や特定のシフトパターンの処理で誤りが生じやすく、結果として集計結果と給与計算の正確性を担保するのが困難になります。

3.勤怠管理システムが解消する2交代制夜勤の集計課題

第2章で確認した通り、2交代制の夜勤シフトは、その長時間性ゆえに手作業での勤怠管理に大きな負担とリスクを伴います。これらの課題は、勤怠管理システムを導入することで、驚くほどスマートに解決することが可能です。

勤怠管理システムは、複雑な労働基準法のルールをあらかじめ設定できるため、特養の夜勤管理における「手間」と「煩雑さ」を一掃し、正確性、効率性、そしてコンプライアンス(法令遵守)を同時に実現します。

3-1.正確・瞬時に完了する深夜労働時間の自動計算

勤怠管理システムがもたらす最大のメリットの一つが、深夜労働時間の自動計算です。紙やExcelでは管理者による手動での抽出・計算が必須でしたが、システムでは以下のプロセスが自動で完了します。

  1. 打刻情報の自動取り込み: 職員がタブレットやスマートフォンなどで出勤・退勤時刻を打刻した瞬間、データがクラウド上に記録されます。
  2. 深夜時間の自動判別: システムにあらかじめ設定された「深夜時間帯(22:00~翌5:00)」のルールに基づき、夜勤の打刻時間の中から、割増賃金の対象となる時間を秒単位で自動抽出します。
  3. 賃金計算の自動実行: 抽出された深夜労働時間に対し、設定された割増率を乗じた賃金が自動で計算されます。

この機能により、管理者は膨大な集計作業から解放されるだけでなく、計算ミスによる未払賃金リスクを大幅に軽減し、正確な給与計算を担保できるようになります。

3-2.法定労働時間・変形労働時間制の自動適用と超過通知

変形労働時間制の複雑な管理も、勤怠管理システムの得意分野です。2交代制夜勤で適用されることが多い変形労働時間制のルール(例:1ヶ月単位の平均週40時間以内など)をシステムに登録しておけば、システムが自動で労働時間を管理・処理します。

  • 自動的な日数カウント
    夜勤のような1日8時間を超える勤務も、設定に基づき適切に労働日数や時間を割り振ってカウントします。
  • 残業・超過時間の自動計算
    法定内の所定労働時間、変形労働時間制に基づく超過時間、法定外の残業時間などを自動で区別し、それぞれに応じた割増率を適用します。
  • アラート機能による予防
    設定した残業時間や連続勤務日数などの上限に近づいた場合、管理者や職員に自動で通知(アラート)する機能があります。これにより、長時間労働や過重労働を未然に防止し、法令遵守を強力にサポートします。

3-3.休憩打刻による実労働時間の客観的な把握

休憩時間の中断リスクがある介護施設において、勤怠管理システムは休憩時間の正確な把握に貢献します。

多くの勤怠管理システムでは、出勤・退勤だけでなく、休憩の開始と終了も打刻させることが可能です。

  1. 打刻による客観的記録
    職員が休憩に入る際と戻る際に打刻することで、「みなし休憩」ではなく「実態としての休憩時間」を記録します。
  2. 中断対応時の記録
    緊急対応などで休憩が中断された場合、休憩終了を打刻し、業務再開を記録することで、その間の時間を労働時間として正確に集計できます。

休憩時間を客観的に記録することで、管理者側は職員が適切に休めているかをデータで確認でき、休憩が十分に取れていない職員に対してはシフト調整などの措置を取りやすくなります。これは、職員の健康管理と、賃金計算の正確性を高める上で非常に有効です。

4.システム導入による現場と管理部門の具体的なメリット

勤怠管理システムの導入は、単に集計作業を楽にするだけでなく、特別養護老人ホームの運営全体、そしてそこで働く職員の皆様に対して、具体的かつ多岐にわたるメリットをもたらします。ここでは、システム導入によって得られる主要なメリットを解説します。

4-1.事務工数とコストの効率的な削減

手作業やExcelによる勤怠集計は、夜勤シフトの複雑さから、毎月数日、あるいはそれ以上の工数を要することが珍しくありませんでした。システム導入により、この工数は劇的に削減されます。

  • 集計・チェック時間の短縮
    深夜割増や残業時間の計算、変形労働時間制の処理など、手間のかかる作業が自動化されます。管理者は集計結果の確認に時間を割くだけで済み、数日にわたっていた作業が数時間に短縮されます。
  • コア業務への注力
    事務員や管理者は、時間を集計作業から解放され、ご利用者様や職員のサポート、研修計画、より良いケア体制の構築といった本来注力すべきコア業務に集中できるようになります。
  • ペーパーレス化
    タイムカードや紙の申請書が不要になり、消耗品費や保管スペースのコスト削減にもつながります。

4-2.シフト管理の透明化と働きすぎの予防

2交代制の長時間勤務は、職員の健康管理が特に重要になります。システムは、シフト管理と勤怠実績を連動させることで、働く環境の適正化をサポートします。

  • 勤務状況の「見える化」
    職員ごとの残業時間や連続勤務日数、夜勤回数などがリアルタイムでシステム上に表示されます。
  • 過重労働の自動検知
    労働時間の上限設定を超過しそうな職員や、特定の職員に夜勤が偏っている状況をシステムが自動で検知し、管理者へ通知します。
  • 適正な人員配置への活用
    蓄積された勤怠データを分析することで、「どの時間帯に人手が不足しがちか」「どのシフトで残業が発生しやすいか」を客観的に把握でき、より効率的で負担の少ない人員配置計画に活かせます。

4-3.職員の納得感と組織への信頼向上

勤怠管理の正確性は、職員の賃金に直結するため、組織の信頼度を左右する重要な要素です。

  • 正確な給与計算
    深夜割増や残業代が自動で正確に計算されるため、「計算ミスで給与が間違っていた」というトラブルがなくなります。
  • 打刻データの透明性
    職員は自分の勤務時間や残業時間をシステム上でいつでも確認できるため、給与計算に対する納得感と安心感が増します。
  • コンプライアンスの強化
    法定労働時間や休憩のルールをシステムが厳密に管理することで、意図しない法令違反(サービス残業の発生など)を防ぎ、健全な経営体制を構築できます。これは、職員の定着率向上や、採用活動における対外的な信頼度向上にもつながります。

勤怠管理システムの導入は、特養の複雑な夜勤シフトを管理する上での「必須のインフラ」となりつつあると言えるでしょう。

5. 特養・介護事業所におすすめの勤怠管理システムのご案内

これまでの章で、特別養護老人ホームの2交代制夜勤における勤怠管理の煩雑さと、システム導入による解決策をご理解いただけたかと思います。最後に、「変形労働時間制への対応」「日をまたぐ勤務(2交代制夜勤)の自動計算」「介護特化の機能(シフト管理や人員配置)」に強みを持つ勤怠管理システムをご紹介します。システム選定の参考にしてください。

システム名 特徴と夜勤機能における強み 変形労働時間制・深夜計算 連携・打刻方法
CAERU勤怠 介護 【介護業特化】 24時間体制の入所介護など、日をまたぐ2暦日勤務に柔軟に対応。100種以上の勤務パターンを登録可能で、夜勤・宿直の手当計算にも対応。 〇(柔軟な設定が可能) モバイル、タブレット、ICカード、給与計算ソフト
カイポケ(Kaipoke) 【介護ソフト一体型】 介護事業に必要な機能全般を提供。勤怠管理機能では、日勤や夜勤など様々なシフトパターンを登録し、深夜労働時間を自動集計。 〇(深夜時間の設定変更可能) スマホ、PC、各種介護ソフト(請求・記録)
ShiftMAX 【セミオーダー型】 クラウド型でありながら、施設独自の複雑な就業規則や時間計算に合わせて柔軟にカスタマイズが可能。長時間の夜勤や変形労働制に対応しやすい。 〇(カスタマイズで対応) Excelインターフェース、ICカード、スマホ
ジョブマイスター 【多機能クラウド型】 変形労働時間制、日またぎ勤務、深夜割増など複雑な計算に対応したクラウドシステム。柔軟な設定により、2交代制のルールを細かくシステムに落とし込める。 〇(多岐にわたる設定が可能) PC、スマホ、ICカード、給与計算ソフト

 

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