人事労務の業務は、社員の入退社や日々の勤怠、月ごとの給与支払いや年末調整まで、日ごと月ごと年ごとに様々なことを行う必要があります。各業務を行うための根幹となるい社員の情報も入退社があると様々な業務に情報を伝達して反映させなければならず人事労務業務を煩雑にさせる一因になっていました。ここでは、人事労務システムを導入して解決できる様々な人事労務の課題や、システムの主な機能、メリット・デメリットをご紹介しています。ぜひこの記事を読んで人事労務部門の担当者や責任者の方は自社に導入すると効果的な人事労務システムの機能を検討して、人事労務システムの導入に向けて比較を進めてみてください。
1.人事労務システムとは
ここでは、そもそも人事労務システムはどんなものかや、今主流のクラウド型人事労務システムについてご案内します。
1-1.そもそも人事労務システムとは
人事労務システムとは、総務部や人事部で行われている入退社、勤怠、給与、人事、評価、異動、スキル管理、採用、社会保険、年末調整など様々な業務を共通のシステムを使って効率的に行えるものです。業務ごとにシステムが別々だと、社員情報を二度打ちの手間がかかったり、勤怠システムから給与システムへデータを移す手間があったり、複数の業務を行っていても操作画面がバラバラであったり、それ自体が効率の悪い効率を悪くする原因になっていました。
労務管理システムでは、1つのシステム内に入退社、勤怠、給与、人事、評価、異動、スキル管理、採用、社会保険、年末調整など様々な機能があるため、これらの課題を解決して効率よく総務・人事の業務を行うことが可能です。
1-2.人事労務システムは今はクラウド型の利用が一般的
労務管理システムは、昨今は、その企業で使う機能だけを選んで導入できるクラウド型の労務管理システムが主流になってきています。使う機能だけを選んで導入できるとは、例えば、勤怠と給与、社会保険の機能だけを契約して労務管理システムを利用し、入退社や評価は現在の仕事のやり方で行うということです。この場合費用も利用する機能分だけがかかります。
ちなみに、労務管理システムが提供するすべての機能を利用した場合、費用は相対的に大きくはなりますが、業務効率も大きく改善できます。
ですが企業によっては全部の機能を利用しようとすると、現在の仕事のやり方から一気には移行できなかったり、想定よりコストが大きくなってしまったり、という理由で実際には適さない場合もあります。そのため最初は、いくつかの機能に絞って労務管理システムを導入して、後から機能を追加していく方法もクラウド型でしたら手軽に行うことができます。既存のシステムを入れている場合はしばらくはそちらを利用した方がメリットがある場合にも採用できる方法です。
なお、主要なクラウド型の労務管理システムでは、「Smart HR」「freee」「One人事」「Jinjer」「マネーフォワード」などがあります。
2.解決できる課題
ここではクラウド型の人事労務システムを導入するとどんな課題が解決できるか主なものをご案内します。
2-1.人事労務業務のペーパレス化
人事労務システムを使う人事労務の担当者はもちろん、手続きを行う社員も含めた全社員がペーパレスで手続きを行うことができます。
例えば、人事労務システムの勤怠機能を導入すると、社員の出勤と退勤の打刻や休暇申請を電子化することができます。さらに給与機能も導入すると、勤怠機能に登録された全社員の勤務時間を読み込んで給与計算も自動で行い、Web上で給与明細を確認できるようになります。このように人事労務システムで利用する機能を増やしていくと、どんどんペーパレス化を実現していくことができます。
⇒Web給与明細について詳しくはこちらの記事「Web給与明細システム 導入の流れと代表的なシステムの紹介」にてご案内しています。
2-2.従業員情報の二度打ちを無くせる
人事労務の業務では、扶養の変更、氏名変更、入退社などの社員個々人の出来事が、様々な業務にも波及してきます。
クラウド型の人事労務システムでは、社員が扶養や氏名などの変更を申請すると承認の後、各業務へ変更が反映させることができます。これが人事労務システムを使わずに、各業務で別々のシステムを使っていたりエクセルで業務をしていた入りすると、その都度、扶養の変更、氏名変更、を各業務の担当者に連絡して変更作業を行う必要があります。二度打ちが発生するため毎月こういった対応への時間が必要であったり連絡漏れや打ち漏れも起こることがあり、人事労務システムを導入することで従業員情報の二度打ちを無くしていくことが可能です。
2-3.マイナンバーの管理も一元化して安全性を高められる
人事労務の業務には、社員のマイナンバーが必要となる業務が複数あります。人事労務システムでマイナンバーを管理すると、安全かつ効率的に各業務でマイナンバーを利用することができます。
例えば、税務署へ提出する支払調書には社員のマイナンバーの記入が必要とされています。また健康保険の給付金の申請であったり、入社時の社会保険や雇用保険の手続きにも必要とされています。
人事労務システムで、マイナンバーを使う業務の機能(給与機能や社会保険機能)を導入する必要はありますが、自動で安全にマイナンバーを各業務で利用することもできます。
2-4.人事データから組織課題の可視化ができる
あまり聞き馴染みは無いかもしれませんが、人事労務システムの中にはタレントマネジメントと総称される機能もあります。社員への従業員アンケートや人事評価の見える化等を行い組織課題の可視化であったり、人事施策の立案に利用できる機能です。
例えば、社員アンケートを実施して離職リスクやモチベーション、組織課題の調査を行ったり、職種や役職ごとの総労働時間を抽出して注意喚起をはじめとした人事施策の立案にも利用できます。
2-5.人事労務システムは、他の給与システム・勤怠システム等と連携させて利用することもできる
例えば給与の業務は「弥生」というシステムを利用している場合に、人事労務システム上では給与機能を使わずに、人事労務システムと弥生を連携させて、従業員情報を人事労務システムから弥生へ送ることもできます。この連携機能を使うと、人事労務システムと給与システムが別々の会社のシステムでも、従業員情報を二度打ちすることを避けることができます。
人事労務システムには、入退社、勤怠、給与、人事、評価、異動、スキル管理、採用、社会保険、年末調整といった様々な機能があり、利用したい機能だけを選んで導入できることはご紹介しました。全部の機能を人事労務システムへ移行して利用することに工数がかかって避けたい場合は、連携機能を使って従業員情報などを連携することもぜひご検討ください。
2-6.法改正への自動対応
人事労務の業務の中には法令の改正があると、業務を対応させないといけない課題があります。こういった制度改正についても、クラウド型の人事労務システムであれば、システムが改正に自動でアップデートされます。
例えば、令和7年度には基礎控除の見直しがあり、前年まで一律48万円の基礎控除額が、所得金額に応じて段階的に58万円から95万円までの幅に変更されています。こういった年末調整の制度変更にもクラウド型の人事労務システムであれば自動で計算式の修正が行われます。
その他にも所得税や社会保険料の料率が変わった場合や残業時間へ新しい規制ができた場合などでも、同様にクラウド型の人事労務システムであればシステムが自動でアップデートしていくと考えることができます。
3.主な機能
ここでは人事労務システムの主な機能をご案内します。
3-1.入社手続き・雇用契約
新入社員の情報をシステムへ登録することで、社会保険の手続きであったり雇用契約書の作成を行うことができます。登録は人事労務の担当者が行うこともできますが、新入社員に個人情報の入力画面のURLを送付して新入社員に必要事項を入力してもらうこともできます。また、雇用契約書も新入社員に電子データで送信することもでき、雇用契約をWeb上で締結することもできます。
3-2.社員情報や組織情報の管理
人事労務システムの根幹のデータとなる社員情報の登録や組織情報の登録を行うことで、人事労務システムの各機能を利用することができるようになります。
社員情報の画面からは、社員の基本情報以外にも、連携して使っている機能のデータも簡単に見ることができます。例えば、労働契約や給与、人事、評価などの機能も契約していれば、社員情報の画面からそれらのデータにも簡単にアクセスすることができます。
3-3.勤怠管理
勤怠管理機能は、社員がパソコンやスマホ、タブレット、ICカードでのタッチ、顔認証などを使って出勤や退勤を電子的に行う機能です。休暇申請もシステム上で行うため、勤怠の申請や承認業務はすべてシステム上で行います。これにより、残業時間も管理しやすくなり、月次の勤務日数や勤務時間・休暇日数の締め処理も短時間で正確に行うことができます。もちろん申請や承認のフローもきちんとシステム化されており、申請者と承認者それぞれの立場にあわせて利用できる勤怠機能が分かれています。勤怠管理機能を使うと、給与機能へ勤務日数や残業時間を手入力することなく自動で連携することができます。
3-4.給与・年末調整
給与計算ソフトは既に導入している企業も多いかもしれませんが、社員の勤務日数や残業時間を入力すると、給与支給額やそれに基づく所得税・社会保険料の計算を自動で行ってくれるものです。税や社会保険は国の制度で算出方法が決まっており給与計算ソフトが自動で税や社会保険料の計算を行うものが1つの目玉になっています。人事労務システムにある給与機能や更には勤怠管理機能も利用すると、社員情報、給与計算、勤怠情報のあわせて効率的に給与計算を行うこともできます。給与支給日にはWeb給与明細を使って社員へ給与の通知を行うこともできます。
また、年末調整機能を使った場合は年末調整もペーパレスで行うことができます。紙の年末調整をやめて、人事労務システムで年末調整を行うと、例えば給与機能と連携している場合は、簡単に所得税の戻しを翌月の給与に反映させることもできます。
3-5.タレントマネジメント(人事・評価・分析)
タレントマネジメントは、人事労務システムにたまった様々なデータを使い、社員の育成や、人材の配置や育成を最適化したり、従業員の満足度を高めるための施策づくりに利用されています。
例えば、社員の目標管理をシステム上で行い上司のフィードバックも反映させ評価の見える化を進めたり、活躍している人材の傾向を分析して採用や異動の精度を高める施策を作ったり、社員アンケートを行い離職の兆しや組織の課題を収集したりすることもできます。
4.メリット・デメリット
ここでは人事労務システムを導入することのメリットやデメリットをご案内します。
4-1.メリット
・人事労務の様々な業務で業務時間の短縮を図れる
人事労務システムは、ペーパレス化や社員情報の自動連係、計算の自動化などにより、人事労務部門の業務時間の短縮を図ることができます。人事労務システムの機能には入退社、勤怠、給与、人事、評価、異動、スキル管理、採用、社会保険、年末調整などがあり、導入負荷もあることから、一部の業務はシステム化せずに手作業で継続したり、既存のシステムを使い続けるケースもあります。ですが人事労務システムで多くの機能を使ったり、あるいは人事労務システムと既存のシステムつなげて社員情報を連携するなどしていけば、ペーパレス化が進み業務時間や人員を減らしていくことが可能です。
・人事労務業務の属人化に一定の歯止めをかけられる
人事労務系の業務をシステム化する際、全般的に言える事ですが、システム導入によって業務が俗人化しづらくなる効果もあります。入退社や社会保険、税、残業時間規制などを法令や規制にあわせて正しく行うためには一定の知識が必要です。しかし、人事労務システムを導入すると、雇用契約書の作成から社会保険や税の計算、残業時間規制へのアラートなど実務で必要になる一定の知識はシステムに組み込まれています。そのため実務においては詳細な知識が無くても行えるようにもなっており、システム化が属人化に一定の歯止めをかけることも可能です。
4-2.デメリット
・コストがかかる
基本的にクラウド型の人事労務システムの課金体系は主に月額でかかる事が多く、使う機能や社員数が多いほど課金金額が増える傾向があります。様々な人事労務業務を1つのシステムで便利に使える反面、利用期間が長くなるとコストもかかり続けることとなりあらかじめ予算を用意するなど対策も必要です。
5.代表的な人事労務システム
システム名 | 提供元 |
SmartHR | 株式会社SmartHR |
One人事 | One人事株式会社 |
freee | フリー株式会社 |
オフィスステーション | 株式会社エフアンドエム |
jinjer | jinjer株式会社 |
COMPANY | 株式会社Works Human Intelligence |
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