不動産業で賃貸契約を行う際にエクセルを使って物件管理や顧客対応を行っている中小不動産業の方もまだまだ多いのではないでしょうか。物件情報や契約書、重要事項説明書をそれぞれ用意するために都度打ち変えが発生して業務が煩雑になってしまったり、入力ミスをしたまま書類を気づかずに作成してやり直したということも多いのではないでしょうか。ここではそんな賃貸契約をエクセルなど手作業で行っている中小不動産業の経営者の方に向けて、賃貸管理システムとはどのようなものかや、システムの機能、メリット、選び方などをご案内いたします。ぜひこの記事を読んで賃貸契約に関する業務の効率化実現に向けて賃貸管理システムの選定に進んでみてください。
1.賃貸管理システムとは
ここではそもそも賃貸管理システムとはどのようなことか、などまず最初に知っていただきたいことをご案内いたします。
1-1.そもそも賃貸管理システムとは何か
賃貸管理システムとは、不動産会社が行う賃貸管理業務を効率的に行うためのシステムです。不動産業務は紙のやり取りが比較的まだ残っており、オーナー宛の報告書であったりFAXでの業務書類のやり取りなど、紙の取り回しに手間がかかってしまっています。このような中、賃貸管理に関する業務は賃貸管理システムを利用することで業務の電子化やペーパレス化を行い業務の手間やミスを削減していくことができます。近年はサーバーなどの設備が不要で、場所を選ばず利用できるクラウド型の賃貸管理システムの利用も増えています。
1-2.賃貸管理システムの種類
賃貸管理システムには、自社でサーバーを購入するなど用意して利用する「オンプレミス型」と、エッジやクロームなどのインターネットブラウザでシステムにアクセスして利用する「クラウド型」の2種類があります。
この2種類の一番の大きな違いは、お金のかかり方と言えます。
オンプレミス型は、サーバーや賃貸管理システムのソフトウェアの購入が必要なため、(クラウド型に比べると)初期費用の比重が大きくなりす。一方のクラウド型では、サーバーや賃貸管理システムはシステム会社が、多くの会社が利用できるよう共通の環境を整えています。そのため基本的に初期費用がかからず、月額費用を利用人数分支払う料金体系が多くなっています。(※クラウド型でも何らかの初期費用がかかる場合があります)
また、他に大きな違いとしては、カスタマイズのやりやすさの面で違いがあります。クラウド型は、多くの会社で共通のサーバーやシステムを利用する(ようなイメージの)ため、システムのカスタマイズは基本的にできません。しかしオンプレミス型は、システムを自社のサーバーに設置するためシステム自体を自社が業務をやりやすいように別途費用をかけてカスタマイズすることも比較的一般的です。
もう1点、事務所外の出先やテレワークで賃貸管理システムを利用する場合は、(通信のセキュリティを強化して利用することをおすすめしますが)インターネットで接続すれば使えるクラウド型であればは容易に使うことができます。
検討に際してはカスタマイズが不要で自社の業務がクラウド型で問題なく処理できそうであったり初期費用をあまりかけたくない場合はクラウド型を、業務遂行にシステムのカスタマイズが必要な場合はオンプレミス型を選ぶなどの選び方もあります。自社の業務遂行にシステムの柔軟性をどこまで求めるかに照らして「オンプレミス型」と「クラウド型」の検討をすることをおすすめします。
2.賃貸管理システムの主な機能
ここでは賃貸管理システムの主な機能をご案内いたします。
2-1.物件管理機能
自社で取り扱う賃貸物件の管理機能で、この物件情報をもとに新規契約や更新、広告をはじめ賃貸に関する様々な業務を行います。システム上で物件管理を行うことで、最新の空室状況を簡単に一覧表にできたり、契約更新のアラートを出したりと紙での業務に比べて業務支援の幅が広がります。
掲載物件については、アパートやマンションのほかに、事業用途の事務所・テナントなども管理することが可能です。
2-2.契約管理機能
建物オーナーとの管理委託契約や、賃貸物件の入居者と交わす賃貸借契約・重要事項説明などを発行・管理する機能です。建物オーナーとの間の齟齬を防ぐために、契約条文以外にも変更を加えた際にオーナーとどのようなやり取りをしたかをシステム内に残しておくことも可能です。
2-3.家賃管理・口座振替機能
家賃の請求や消込を自動で行う機能です。契約時にWeb上で口座振替口座の登録を入居者自身で行うこともでき従来の紙の口座振替依頼書に比べてスムーズに口座情報を入手できます。家賃の請求も安定して口座振替で行っていくことができます。
2-4.入居者からの問合せ管理機能
入居者からのトラブルやクレームの申し出をシステムで管理することができます。どういった対処でケースクローズとなったか記録を残して対応漏れを防ぐこともできます。
2-5.退去手続きの管理機能
入居者が退去する場合の退去手続きについてももれなく行えるよう管理機能が用意されています。最終月の賃料計算であったり敷金・保証金・修繕費の精算など解約時の精算一切を行うことができます。
2-6.原状回復工事の管理機能
管理物件で退去があった際に行う原状回復工事についても、工事の進捗管理のほか工事内容や原価を登録して入居者へは見積書・請求書を発行することができます。工事業者が発行した書類についても保存管理に利用することができます。
2-7.駐車場管理機能
賃貸駐車場の管理もシステム内で行うことができます。契約書類の管理はもちろんのこと、顧客からの問合せ管理のほか駐車料金の入金管理も可能です。また最近は、駐車場の契約をWEB上で契約者自身が行う機能もあります。駐車場には看板に契約用のQRコードを付けておき、契約者がスマートフォンで駐車場の契約を行うことができるものです。駐車料金はクレジットカードで請求することができ契約や請求を省力化することができます。
2-8.会計システムとの連携
賃貸管理システムの入金・出金管理機能を利用して行った入出金については、自社の会計システムへ取り込むための会計システム向けデータを出力することもできます。会計システムへ毎日やまとめて入出力を入力していた場合はそれらの手間を省いて効率化することができます。
3.賃貸管理システムの導入メリット
ここでは賃貸管理システムの導入メリットをご案内いたします。
3-1.物件情報や契約、家賃の管理を一つのシステムでできるので手間やミスを削減できる
賃貸管理システムを利用することにより物件情報や契約書、入居者に請求する家賃を一元管理することができます。そのため、個別にエクセルで管理している場合に起こる煩雑さや記載ミスを削減することができます。
3-2.物件情報を不動産ポータルサイトへ手間なく掲載することができる
賃貸管理システムに掲載した物件情報は、不動産ポータルサイトへ入稿するための物件情報データとして出力することができます。各不動産ポータルサイトに物件情報を手入力していると掲載までに時間がかかったり、入力ミスをしたり、修正漏れが起こったりと手入力ならではの課題が発生してしまいます。この不動産ポータルサイトへ掲載するための物件情報データ作成機能を使うことで手間なく物件情報をポータルへサイトへ掲載することができます。
3-3.業務の属人化を防いでいくことができる
エクセルでの物件情報や顧客問合せでの管理だと、画面をスクロールして情報を探すなど、狭い画面内で表の中から探すため、入力の不備も起こりやすく結果的に顧客の対応情報の入力が漏れがちになります。賃貸管理システムを導入することで、顧客との対応状況もシステム上へ入力して社内で共有することが可能です。エクセルよりも使い勝手の良い賃貸管理システムを顧客とのやり取りを記録する手段としても活用することで、業務の俗人化を防いでいくことが可能です。
3-4.顧客満足度の向上にもつなげることができる
賃貸管理システムには、契約更新時期が到来する前にアラートを出す機能や、物件の家賃を契約書や請求書に自動で転記する機能のほか、クレームも管理することができます。幅広い賃貸契約の管理業務であっても顧客一人ひとりに対して、正確な情報が管理され、正確な業務を提供することで顧客満足度を向上していくことも可能です。
3-5.成約数や成約率を向上していくこともできる
賃貸管理システムには、ポータルサイトへの出稿機能のほかにもチラシ作成や店頭資料の作成、自社サイトへの物件掲載機能など、これまでよりも成約数や成約率を上げていくことにつながる機能が搭載されています。
3-6.クラウド型なら最新の法令に対応していくことができる
不動産業では入居者への書類の交付など法令で規定されているものがあり、法の改正が起こると書式を変えなくてはならないことも発生します。そのような場合でも、クラウド型の賃貸管理システムであれば、システム自体はシステム会社が最新の状態にアップデートしてクラウド型を利用するすべての会社に提供するため基本的には費用負担なく法改正に対応したシステムを利用することができます。
4.賃貸管理システムの選び方
ここでは賃貸管理システムの選び方をご案内いたします。
4-1.まず自社で使いたい機能が網羅されているか確認する
入居者に向けて提供したいもの(物件情報、契約書、解約、更新手続きができるか等)、オーナー向けに提供したいもの(収支報告、資料共有、契約変更の履歴管理ができるもの等)、事務所内でスタッフが利用したいもの(家賃請求、顧客対応履歴、クレーム管理等)など、「人」軸で必要となる機能を整理すると比較的漏れが少ないのでおすすめです。
4-2.賃貸管理システムの操作性を確認する
賃貸管理システムには多くの情報を入力して運用するので、入力画面の操作性はデモを見るなどして確認しておく必要があります。その際に、直感的に次の操作へ移れるかや打ち込んだデータを検索する際の検索項目は十分であるか、複数の画面を同時に開けるかなども便利に運用していくためには確認していくことをおすすめいたします。
4-3.他のシステムやソフトとの連携機能を確認する
この点は従業員の手間を減らすポイントにもなってくる箇所です。家賃の入金やオーナーへの支払いといった入金や出金管理機能は賃貸管理システムにはまず備わっていますが、これらの入出金の情報を会計システムへ流し込むためのデータ出力機能が備わっているかは手間を減らしていくうえで大切な確認事項です。これによって経理担当者の手間は大きく減少するはずです。また他にも不動産ポータルサイト向けの物件データの出力機能があるかや、銀行口座に振り込まれた家賃を賃貸管理システムへ取り込んで消込をする機能も従業員の手間を大きく減らすことができるため、大切な確認事項となります。
4-4.サポート体制を確認する
賃貸管理システムの操作面で不明点が発生した場合の問合せ窓口についても事前に確認しておくことをおすすめします。各社で電話対応時間が異なっていたり、サポートサイトの充実度が異なっていたりなど差異があります。契約前の段階でサポートサイトが覗けるようでしたら、その充実度もチェックしておくことをおすすめします。
4-5.お試し利用ができるか確認する
賃貸管理システムによっては無料でトライアルを行える場合があります。その場合はぜひ手続きを行ってトライアルをやってみてください。業務の実務に詳しく業務改善も思いつくような方を集めてトライアル版のシステムを操作してみると、現場の知恵をうまく入れながら賃貸管理システムを比較していくことができます。
5.代表的な賃貸管理システムのご案内
ここでは代表的な賃貸管理システムをいくつかご案内いたします。
サービス名 | 提供元 |
賃貸革命10 | 日本情報クリエイト株式会社 |
賃貸名人 | 株式会社ダンゴネット |
いえらぶCLOUD | 株式会社いえらぶGROUP |
ITANDI管理クラウド | イタンジ株式会社 |
Livartクラウド | 株式会社Livart |
楽楽賃貸EBS | 株式会社Fシステム |
いい生活のクラウドSaaS 賃貸/賃貸管理 | 株式会社いい生活 |
Simple Up | ユニコム株式会社 |
RentUP | 有限会社サイプラス |
SP-II | 株式会社ビジュアルリサーチ |
賃貸管理システム | アットホーム株式会社 |
リドックス | Bambooboy株式会社 |
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