次回の年末調整はシステムで!年末調整の手間を会社全体で減らして効率化

情シス

毎年12月が近づくと年末調整の申請書が配布されて、生命保険住宅ローンの情報も調べて手書きで記入してという、このアナログな年末調整がこれまでは一般的でした。昨今、給与などのシステムのクラウド化が進み年末調整もシステム化されて、比較的簡単に導入できるようになってきました。労務管理担当にとっては毎年短い期間に集中する年末調整の業務は、記入された申請書を処理する業務自体も大変ですが、同じくらい紙をさばく業務も大変であったと思います。そこで年末調整システムを導入して、労務管理担当はもちろん年末調整を記入する社員の側も効率や利便性を上げる提案をしてみませんか。この記事では、年末調整システムを入れると解決できる課題や、新たにかかるコストに対して得られるメリットの説明方法などをご紹介します。

1.年末調整システムとは

ここでは、年末調整システムとはどんなものか概要をご案内いたします。

1-1.その前に、そもそも年末調整とは

自分の給与にかかる所得税をその年の年度末(12月)に計算し直し、差額があればその分の所得税の還付や追徴を行うものです。

あまり知られていないかもしれませんが、給与明細の毎月の所得税自体が概算で算出されており、12月の年末調整で1月から12月の確定した年収に対して、各種の控除(基礎控除、配偶者控除、保険や住宅ローン控除等)を引いてその年の正確な所得税を算出します。

1-2.年末調整システムとは何なのか

年末にほぼ全ての社員が行う年末調整をシステムで便利で効率的に行えるようにしたものです。これまで紙で記入していた「令和●年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「令和●年分の給与所得者の保険料控除申告書」などの書類をシステム上に入力して年末調整を行います。年末調整は社員一人ひとりによって扶養や、生命保険住宅ローン控除等の状況が異なり、証明書の添付なども必要で、取りまとめを行う労務管理の担当者にかかる負荷は大きな課題になっていました。

年末調整をシステム化して社員が申告書をシステムに打ち込むことで、各種の控除金額が自動計算され(入力さえ間違えなければ)計算ミスを無くすこともできます。申告書を打ち込む社員も労務管理の担当者も双方手間を減らすことが可能です。

1-3.年末調整システムの種類

年末調整システムは、大きく3種類に分類できます。

  • 年末調整機能のみを提供する年末調整システム
    単純に年末調整の機能だけを提供しているシステムのことです。
    代表的なサービスは「S-PAYCIAL with 電子年調申告」「eNEN」などです。
  • 給与計算システムに含まれている年末調整システム
    給与計算システムに年末調整の機能も含まれているシステムのことです。年末調整が確定後に、次回の給与で所得税の還付や追加徴収を行う場合にとても便利なシステムです。
    代表的なサービスは「フリーウェイ給与計算」「ジンジャー給与」などです。
  • 労務管理システムに一体化された年末調整システム
    勤怠や給与、入退社、タレントマネジメント等に年末調整の機能も含まれた統合型の労務管理システムのことです。
    代表的なサービスは「SmartHR」「freee」「ジョブカン」などです。

1-4.電子化できる申告書

全ての年末調整の申告書がシステムで提出することが可能です。従来紙の申告書に添付していた生命保険などの証明書類は対応している保険会社であればから証明書データを入手して登録することが可能です。

  • 扶養控除申告書
  • 配偶者控除等申告書
  • 基礎控除申告書
  • 所得金額調整控除申告書
  • 保険料控除申告書
  • 住宅ローン控除申告書

2.解決できる課題

これまで手作業で行っていた年末調整を電子化することで様々な課題を解決することができます。以下で代表的な例をご案内いたします。

2-1.入力の手間や時間を削減できる

前年の年末調整で入力した扶養や住所などの個人情報から保険や住宅ローン等の控除のデータまでを翌年以降も呼び出して使うことができます。

2-2.計算ミスを無くせる

扶養控除や保険料の控除額を年末調整システムが自動計算するため、計算ミスを無くすことができます。入力内容が合っていれば自動で正しい計算がされるので入力内容の確認だけしっかりと行えば計算の問題は起きなくなります。

2-3.ガイド機能やアンケートを利用して記入することも可能

これも電子化ならではの便利な機能です。年末調整の入力画面に入力方法を説明するガイド機能があったり、入力方法に「はい」「いいえ」のアンケート方式が用意されていたりします。年末調整システムによって両方ある場合や片方だけ提供している場合もありますので、検討する際に入力補助の機能についてもご確認いただくことをお勧めいたします。年末調整の入力には馴染みのない用語も多く判りずらい課題もありますが、ガイド機能やアンケートを利用した入力方法など入力補助機能も用意されています。

2-4.ペーパレス化で発送や保管コストを無くせる

特にいくつもの拠点を抱えている会社では、年末調整の書類を発送する手間やコストが結構かかってきます。かつ紙なので受領した場合は目視で全員分あるかなども確認しなければなりません。年末調整をシステム化することで、申告書はデータで受領でき、入力状況も一覧で確認することができます。もちろん電子データで受領した年末調整は紙にして保管する必要もないので、保管コストも削減することができます。翌年になっても前年の申請書は社員がシステム上で見られるため送り返す必要も発生しません。

2-5.テレワークなど場所を選ばない働き方にも対応しやすい

年末調整システムの導入はテレワークを採用している場合にも手間の削減に有効です。紙の申請書で年末調整を行う場合は郵送の時間ロスや手間、費用がかかってきます。システムを利用すると、人事労務の担当からはテレワークをしている社員もしていない社員もどちらも同じなので、特段テレワークの社員だけ自宅に年末調整の申請書を発送するといったこともありません。

2-6.ペーパレス化で人事労務担当者の申請書の取り回しが格段に向上

人事労務担当の方にとってはこれが一番歓迎されることかもしれません。紙の申請書がなくなり、年末調整の業務をPC上の操作で行えることは大きな手間の削減になります。申請書の受領も電子データであれば、入力内容に間違いがあった際の差し戻しもシステム上で行うことができます。

また、紙に縛られてできにくかった人事労務担当者のテレワークもシステム化によって実現しやすくなります。

3.メリット

ここでは年末調整システムを導入するとどんなメリットがあるかご案内いたします。

3-1.記入ミスや誤計算の軽減が可能

年末調整は申請書も細かくて専門的な用語も多いため、記入ミスや誤計算といったことも結構発生します。システムを使うことで入力方法のガイドを表示して記入ミスを減らしたり、前年に入力した扶養や保険のデータを呼び出して誤入力を防ぐこともできます。

またもし間違った入力をしてしまっても、システムであればすぐに修正できリカバリー面のメリットにもなります。

3-2.コストの削減も可能

年末調整をシステム化することで、様々なコストを削減することが可能です。もちろんシステムの費用はかかりますが、紙の年末調整をやめることで以下のような費用を削減することができます。

  • 申請書等の紙代
  • 発送費用(複数拠点ある企業の場合)
  • 申請書の保管費用
  • 労務管理担当が紙の取り回しにかけていた労務費

やはり一番大きいコストは労務管理担当の紙の取り回し業務にかけていた時間であることは間違い無いと思います。その分は残業代が消えたり別の業務に振り向けることができると考えることができます。

3-3.年末調整に関わる制度の改正にシステムが自動で対応できる

クラウド型年末調整システムの特徴にもなりますが、年末調整に関する制度改正があった場合に、システムが改正に自動で対応してくれます。

例えば、令和7年度の例では基礎控除の見直しが行われ、前年までは一律48万円であった基礎控除額が、所得金額に応じて段階的に58万円から95万円まで変更されています。このような年末調整の制度が変わった場合もクラウド型の年末調整システムなら自動で計算式の修正が行われます。

昨今ニュースで配偶者控除の金額を上げる政策について耳にすることもありますが、もしも実現することがあれば、クラウド型の年末調整システムなら将来に対応してくれるはずです。

3-4.年末調整業務の俗人化にも歯止めがかかる

給与に並んで専門的な知識が必要な業務のため年末調整の業務も俗人化しやすいといえるのではないでしょうか。実際の運用は年末調整の業務も給与担当が兼ねていることが多いのではと思います。ここで年末調整もシステム化を行うことで、それまで手書きゆえに間違いも起こりやすく割とみっちり行っていた確認の実務も軽減することができます。計算自体はシステムが行うため正しいとの前提に立てば、入力内容と計算結果の確認を重点的にすればよく、確認業務自体も軽減するはずです。

なかなか給与担当や年末調整を複数名体制にできないために結果的に俗人化することも実情の一つであると思います。システムの導入で年末調整の担当に病気やケガで業務から外れてしまうことが起こってもある程度依存度を下げることができるので、完全に業務が止まるということも防げるのではないでしょうか。

4.デメリット

ここでは年末調整システムを導入するとどんなデメリットがあるかご案内いたします。

4-1.コストがかかる

導入の障壁になる一番のデメリットは「コストがかかる」ということかもしれません。今までは申請書を記入する社員も、取りまとめる人事労務担当者も、それぞれの業務時間の中で記入や処理といった年末調整の業務を行っていたため、単純にこれまでかかっていなかった新しい費用がかかると認識されがちです。そういった際に導入が進まない場合には、毎年12月に業務がかさんでいた分の残業が削減できたり、入力する社員も短い時間で入力できたり、入力間違いが減って効率が上がったりと年末調整システムの導入メリットを訴えることも有効的です。

4-2.システムの操作説明が必要になることも

紙に書いていたことをシステムへ正しく入力するためには入力方法にある程度習熟が必要です。入力内容をチェックしたり控除額を自動計算したり恩恵はあるのですが、入力画面に慣れない分、システムの操作説明が必要になることもあるかもしれません。そのためにマニュアルを整備したりあるいは、システム会社のサポートページに操作説明動画などがあるばあいは社員に紹介するなどの問合せを減らす対策が考えられます。

また、こういったことに備える意味でシステムの検討段階でメーカーのサポートサイトをよく見て説明のわかりやすいシステムを調べることも有効です。ぜひシステム選定基準の1つにすることをおすすめします。

5.年末調整システムのご紹介

ここでは年末調整システムのサービスラインナップをご案内します。サービス名をクリックすると公式サイトへリンクします。

タイプ サービス名 提供会社
年末調整機能のみを提供する
年末調整システム
S-PAYCIAL with 電子年調申告 鈴与シンワート株式会社
eNEN 株式会社エムケイシステム
給与計算システムに含まれている
年末調整システム
フリーウェイ給与計算 株式会社フリーウェイジャパン
ジンジャー給与 jinjer株式会社
労務管理システムに一体化された
年末調整システム
SmartHR 株式会社SmartHR
freee フリー株式会社
ジョブカン 株式会社DONUTS

 

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